表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お母さんは女子高生  作者: たらふく
11/26

自宅謹慎

         第十一章



「ただいまぁ」

「おかえりー」


千菜美は相変わらず元気のいい声で、返事をした。


「はぁ~~・・疲れた・・」

「どうしたの?お母さん」

「それがさ・・」


私は千菜美に今日、学校であったことを全部話した。


「ごめんよ、千菜美・・」

「そっか・・」

「お母さん、ちょっとやり過ぎちゃったかな・・」

「なに言ってるの?」

「だって・・千菜美に迷惑かけちゃって・・」

「お母さん、間違ってないよ!」

「え・・」

「お母さん、なに一つ間違ってない。間違ってるのは先生の方だよ」

「ありがとう。そう言ってもらえると救われるよ」

「私だったら、自分が虐められてることさえ、何一つ解決できなかったよ」

「うーん・・そうは言ってもなぁ・・」

「いいじゃん。自宅謹慎、上等!!」


そう言って千菜美は笑っていた。

千菜美の気持ちは嬉しいけど、これって進学の時なんかに影響するんじゃないかな・・

暴力事件を起こして自宅謹慎なんてさ・・就職とかも・・


千菜美に申し訳ない気持ちと、なにより学校の体質に、とことん失望させられたことに、私は疲れきっていた。

というか、これって社会問題だよな。

他の学校はどうしてるんだろう。

こんな状態じゃ、虐めなんて絶対になくならない。


「お母さん、元気出して!」

「うん・・」

「なによ~~いつものお母さんらしくないよ!私がいいって言ってるんだから、いいんだってば」

「そっか。うん、わかった」

「さっ、ご飯食べようね」

「うん」

「今日は~~カレーだよ!」

「おお、そっか」


私は次の日の朝から、家事に専念した。

日頃は千菜美がやってくれているから、あまりすることはないけど、少しでも千菜美に負担をかけないように、念入りに掃除をした。


「じゃ、行ってきまーす」

「いってらっしゃい」


千菜美はパートに出掛けた。

はぁ・・・それにしてもなぁ。

これからどうすればいいんだ。

あの学校を変えるには、相当しんどいぞ。

唯一の頼りは、浦佐加先生だけか・・


私はもう少し、やり方を変えた方がいいのかな。

意気込みや、脅しが効くのは子供たちだけだ。

先公たちには無理だ。


そうだ。久しぶりにパート先へ行ってみよう。

千菜美がどんな風に働いてるのかも、見てみたいし。

私は買い物ついでに、勤め先のスーパーへ行くことにした。


この時間は、やっぱり混んでるな。

おおっ、千菜美、いたぞ。

ああ~桜井さんも元気そうだ。悦ちゃんもいる。

三原のババアは相変わらず厚化粧満開だな。ははっ。


私は適当に食材をかごに入れ、千菜美のレジに並んだ。


「いらっしゃいませー」


「千菜美・・」


私が小さな声でそう言うと、千菜美は驚いていた。


「お・・おかあ・・いや・・千菜美!」

「はは~来ちゃった」

「そうなのね・・」


「あら?秋川さん、お嬢さんですか?」


桜井さんが声をかけて来た。


「はい、娘の千菜美です」

「そうですかー!初めまして、いつもお母さんにはお世話になってるんですよー」

「ど・・どうも・・初めましてぇ・・」


なんか変な気分だな。


「お母さん・・もうすぐ終わるんでしょ?」

「ああ・・えっと・・うん、そうね」

「じゃ、外で待ってるから一緒に帰ろうよ」

「うん、わかった」


「今後も母をよろしくお願いします」


私は桜井さんにそう言って外へ出た。

すると15分くらい経った時・・


「あなた、秋川さんの娘さん?」


三原のババアが声をかけて来た。


「はい、そうですけど」

「あなた、高校生なのに、なんでこんな時間に買い物してるの?」

「え・・」


うるせぇんだよっ、ババア。


「ちょっと・・早引けしまして・・」

「ふーん。そうなんだ」

「はい・・」

「具合でも悪いの?」

「まあ・・そうですかね・・」

「じゃ、こんなところに居たらダメじゃない」

「あ・・はい・・」


ったくーーうるせぇな。早く仕事に戻れよ、ババア。


「まったく近頃の高校生ときたら、すぐにサボったりするんだから」

「・・・」


「千菜美、お待たせ」

「あ、お母さん」

「三原さん、うちの娘の千菜美です」

「秋川さん、娘さん具合悪いみたいよ」

「そうなんですよ。ちょっと風邪気味で」

「それなのに買い物なんて、ダメじゃない」

「はい。すぐに連れて帰りますので」

「近頃の子は、親がしっかりしないと、すぐに親の目を盗んでサボったりするんだから」

「お気遣いありがとうございます」

「早く帰って寝かせてあげなさい」

「はい、わかりました。ではお先に失礼します」


千菜美・・・おっとなぁ~~~

なんでそんなに余裕があるんだ・・・


「千菜美・・あんたすごいね」

「そうかな」

「だってあのババアに、よくあれだけ余裕こけるよな」

「私も最初は腹が立ったりして「うるせぇ」とか言っちゃったけど、三原さんの言うこと、結構、間違ってないのよね」

「そうかー」

「あの人、余計な一言があるから、勘違いされてるだけだと思うんだ」

「そんなもんかねぇ」

「そうだよ。悪い人ではないと思うよ、私は」

「あんた、ほんとに「お母さん」みたいだな」

「あはは」


いや、すげーよ、千菜美は。

私より遥かに大人だ。


「これから一週間は、お母さんが食事作るからね」

「そうなの!やったー」


私たちの会話を聞いた通りすがりの人が、変な顔をして歩いて行った。

ははっ。そうなるよな。


それから二日後・・


ピンポーン


「はいはい、どなたですかぁ~」


私はそう呟きながら、玄関を開けた。

するとそこには、菜々絵と美冴と涼介が立っていた。


「あらーー!」

「来ちゃった~~」


美冴がそう言った。


「来てくれたんだ~どうぞ、上がってー」


私は三人を部屋の中へ入れた。


「そこらへん、適当に座って」


三人はそれぞれソファに腰掛けた。


「よく来てくれたな。嬉しいよ」

「どうしてるかと思って・・」


菜々絵がそう言った。


「ありがとう。学校はどう?」

「うん、あまり変わりはないけど、なんか私たち、納得できなくてね・・」


美冴がそう言った。


「そだよな」

「ぼ・・僕・・秋川さんが謹慎になったと聞いて、泣いてしまいました・・」

「なんで泣くんだよ」

「だって・・元はといえば、僕のせいでこんなことに・・」

「涼介のせいじゃないよ。あいつらと先公が悪いんだ」

「ごめんなさい・・」

「なんで涼介が謝るんだよ。お前は何も悪くない」

「僕・・ちょっと考えたんです」

「なにを?」

「虐めを隠す学校の体質を、マスコミに言おうかと思ってるんです」

「ええっ!」

「だって、先生たちは何もしてくれないし・・」

「マスコミなぁ・・どうなんだろ」

「それって・・一旦火がついちゃうと、大変なことになるんじゃないかな・・」


菜々絵がそう言った。


「うん、私もそう思う。それより他の方法ってねぇのかな」

「他の方法かぁ・・」


「ただいまー」


千菜美が帰って来た。


「おかえりー」


部屋に入って来た千菜美は驚いていた。


「あ・・・お・・お友達・・?」

「うん、菜々絵と美冴と涼介。みんな心配して来てくれたんだ」

「そ・・そうなんだ・・いらっしゃい・・」


そりゃ戸惑うわな・・


「こんにちは、お邪魔してます」


三人はそう挨拶した。


「ゆっくりしてってね・・」


千菜美はそう言って、キッチンの方へ行った。


「さて、どうすっかな」

「うーん・・」

「とりあえず、浦佐加先生に相談してみるか」

「浦佐加って・・僕の担任の・・」

「うん、あの先生は、もしかしたら力になってくれるかも」

「そ・・そうなんですか・・」


「みなさん、よかったらこっちに来てケーキ食べてね」


千菜美がそう言った。


「ありがと、お母さん」


私たちはテーブルに移動してケーキを食べることにした。


「どうぞ、お気遣いなく・・」


美冴が千菜美にそう言った。


「い・・いえ・・」

「おばさん・・私、千菜美に色々と助けられたんです」

「そうなんですか・・」

「私・・千菜美を虐めてたのに、千菜美は私を友達だって言ってくれて・・本当にすみませんでした」

「いえ・・そんな・・」

「ぼ・・僕も・・秋川さんにすごく助けられて・・虐めからも救ってくれて・・」

「そうなんですか・・」

「千菜美ちゃんは・・すごく勇気があって、先生よりも頼りになる人です」

「そうですか・・」

「お前ら、もういいって。それより食べようぜ」


千菜美は私たちに背を向けて、肩を震わせていた。


第十一章END

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ