プロローグ
7月28日
虚しく吹き抜ける風。それは死者たちの髪をなびかせる。砕け散った戦闘機。ところどころから炎が上がり、無造作に転がる死体を焼いている。とても、一人の人間がやったとは思えない。そんな場所に、俺はいた。
「残念ながら、余韻に浸っている場合はない。死体の処理と身元の確認を急げ!」
後ろから、声が聞こえる。そう、疫病を蔓延させるわけにはいかない。でも、アイカワさんがこの中のどこかに見つかってしまったら、そう思うと、作業が進まない。アイカワさんは、この戦場に出ていた。それでも、まだ生きているかもしれない。見つからなければ、死んだとは限らない。
「・・・コクミッ!」
また一人、いや、一つ顔見知りの死体が出てきた。コクミ。彼はアルマ王国の精鋭隊だった。あれだけ口うるさかった奴が今はもう、何も喋らない。その後もポツポツと会ったことのある人たちが死体となって出てきた。中には、もう、誰だかわからないようにぐちゃぐちゃになってしまっていた人たちもいた。
「ヒレイ、・・・終わりだ。帰ろう。気分が優れないのなら、図書館と新しくできたカフェに行こう。好きだっただろ。」
カゲミヤが優しく声をかけてくる。俺は、答える気にもなれず、無言で頷いた。