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クリストファー王  作者: ゆきんこ
9/21

ロイド・マグワイア ①

「さあ、次は誰が相手だ。手加減するやつはアリスに突き出すぞ」

陛下は模造刀を肩に担ぎ息を吐く

騎士団の稽古場に陛下は朝からいた

なにをやっても陛下は器用にこなすものだから剣の腕もそれなりにあった

騎士に成り立ての者は束になっても敵わないだろう

流石、あの伝説の騎士アマンダ・ルウ・トワイニング様を師に持つだけはある

自分も陛下に相手をして頂いたがなかなか手厳しく手強かった

それでも何度も陛下に挑んだ

陛下の金髪が汗に濡れ飛沫さえも金色に輝いて見え、あの青い目に翻弄された

陛下の青い目は不思議だ

剣を構え対峙するもあの青い目に体の動きを制限されたように感じることがある

そんな魔物じみたことあるわけないのに

陛下の噂の数々もそんなとこにあるのだろうか?

陛下が国王になる前、市井ではクリストファー王子に近づくなと言われていた

王子の頃よく王都に忍んで遊んでいたらしくその話はよく聞いたし、自分が子供の頃から聞いていた

たいして年もそう変わらないのに本当に沢山の噂があった

噂もどれが本当でどれがデマか定かでない

近衛騎士となって陛下の側に控えることが多くなったが、どういった人なのか未だに掴めずにいる

国王陛下の人となりなど一介の騎士がわかるはずもないのだが


「陛下、そろそろ昼餉にしませんか」


息を切らした隊長が進言した

朝からずっと模造刀を振り回していたわけだし陛下も疲れているはずだ


「もう、そんな時間か…」


手の甲で汗を拭いつつ陛下は模造刀をさげた

陛下から模造刀を受けとり、汗を拭うための布を渡した


「お食事のご用意は既に出来ております。陛下のご指示の通り騎士の皆様の分もこちらにございます」


陛下の従僕が控えていた

そういえば最近この従僕以外を見かけない

陛下に気に入られるとは自分より若いのに大した者だな

自分も精進すれば陛下に重用されるのだろうか?

クリストファー王政になって半年、特に大きな事件もなく静かに時が流れているように感じる

前国王陛下が御崩御されたときは国が荒れるのではないかと国中が心配していた

あれだけの悪評ともいえる噂があるのだから仕方がなく、この平和は陛下の側近のお二人の賜物だといわれていた

陛下は騎士達に飲み物を自らお配りになっていた

こんな自分にも親しげに話しかけて下さる

まずは自分の名を覚えて貰うことが大事なのだろう


「陛下、御子様の御誕生までもうすぐですね」


「ああ、楽しみにしている。王子でも姫でもきっとマチルダに似て可愛い子だぞ」


陛下は本当に嬉しそうに御子様の話し…王妃様との話しをされた

本当にお二人は仲が良く、政略結婚であったとは思えなかった

いずれ自分もそんな相手と巡り会いたいものだ

本当にお二人は理想の夫婦だと思う

他の騎士達にまじり用意された食事を頂いているときだった


「あの噂の真相確かめてみないか」


あの噂とはどれだろうか

陛下には噂が多すぎる

それに今更噂の真相などどうでもよいではないか


「クリストファー陛下が前国王陛下を暗殺したとの噂だよ」


初めて聞く話だ

騎士がそんな噂を信じるとは情けない

陛下は前国王陛下を尊敬し敬愛していると皆知っているはずだ

そんなことあるわけがないと思うが、数々の噂が否定させてはくれない

陛下を、この国を守る立場でありながら疑いを持つとは…

そんな噂、自分がないと証明してみせる

自分達に気さくに話しかけ、お忙しい中稽古の相手をしてくれるような方がご自身の御父上を手に掛けるとは思えない

そんなことするはずがない

噂があるのだとしたら、この騎士だけでなく他にも信じている者がいてもおかしくはないだろう

なぜそんな噂を信じられるのだろうか?

あの事件があったときだって陛下はご自身が大変であったにも関わらず御父上の身を案じておられたと聞くのに

近衛になってからこんなにも陛下ばかりに目を向けていることはなかった

そりゃ近衛として陛下の側に初めて立った時は陛下から目は離せなかったが、その時とはまた違う

陛下に疑いを持って側に立つなどなど初めてだ

自分が幾ら信じているといっても、それはなんの証拠にもならない

陛下はなにもしていないと証拠を見つけなくてはいけない

なんとも難しい仕事だ

そもそも必要があるのだろうか?

あの場の勢いで調べることになったが、暗殺などないと言いきってもよかったのではないかと思えてくる

だが、なにもしなければ暗殺の噂は大きくなってしまう気がしたのも確かだ

噂などろくでもないと言えないだけの噂の数がある陛下も陛下だ

どうしらこんなにも沢山の噂が出来るのだろうか?

よく王子の頃は公務もせずに王都で遊んでいたと聞いていたが、国王となった陛下のお側に近衛として控えるようになってからはそんな姿見たこともなかった

いつも執務室で難しい顔をしている

今だって従僕が淹れていったお茶がすっかり冷めきっているなか書類に目を通していた

どうしてあんな噂が立つのだろうか?

悪い噂もいい噂も沢山聞いた

今回の噂ほど酷いものはないとは思うが、人とはなんとも勝手なものだ


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