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クリストファー王  作者: ゆきんこ
19/21

チャーリー・ピンター ②

マリアはその日から私の後を付いてまわるようになった

アリス様とヴィンセント様も時間を見つけてはマリアに教え、それに応えようとマリアも頑張っているようだった

まだまだ遊びたい盛り子供である癖に文句も言わずに仕事をしているし、合間に王子のイタズラの餌食にもなっている

子供だと侮れないほど忙しくしているマリアを見ていると、王都へお忍びで出掛けていく王子に呆れてしまう

その日私は公休日だった

マリアが盗みをしたと大騒ぎになっていた

王子の部屋に飾ってあった宝剣が盗まれたというのだ

王様より王子が承った大事な宝剣をマリアはなんの為に盗んだんだ?

城の使用人宿舎で暮らすマリアは王都へ出る必要がない

12歳の子供が宝剣を換金するとなれば悪目立ちするだろう

わずかな時間しかマリアと過ごしていないが、私はマリアが盗みをするような子供に思えない

王子もマリアが盗みをしていないと信じている様子だ

自室で茶を飲み、独り言をずっと呟いていた

そこへアリス様がマリアの様子を伝えに来た


「マリアは牢の中で無実を訴えてはいるけど、宝剣が見つからない以上どうすることも出来ないわ」


宝剣が見つかっていないのにマリアが犯人扱いとは…酷いのでは?

やっぱり罪人の子であることが引っかかっているのだろう

罪人の子は同じ罪、もしくはそれ以上の犯罪を起こすだろうから一緒に処刑するという法が昔あったらしい

今ではその法はないが、同じように考えている者が多いことも事実だ

今でも親の犯した罪の元に処刑される子供はいるとは聞いていた

ダニエル様も危うくそうなるとこだったし、マリアもそうだろう

仮に処刑されなくても罪人の子と後ろ指を指されることになる

…だから嫌だったんだ

罪人の子を王子の側に置けばなにかしらありそうじゃないか

なにも無くても、変な噂を増やされるんだ

マリアには悪いが、このまま盗人として王子から離れてもらいたい

…それもかわいそうだが、王子に対するこれの以上噂を立てられたくないし、無実でも事件が起こってしまったから…


「…王子。盗まれた宝剣ってアレですか?」


飾り棚のなかに置いてあるそれは盗まれたと騒いでいたものじゃないのか?

王子は椅子を蹴り倒す勢いで私の示した飾り棚に近づいた

もし宝剣がここにあればとんでもない冤罪じゃないか

マリアがかわいそうだ

王子は宝剣を手に部屋を出ていった

あの様子ではかなり怒っている

王子が怒るなんていつ以来だ?

子供の頃は癇癪が酷くて大変だったが、いつの間にか感情をコントロールするようになっていた

王子として次期国王として感情のコントロールが出来ることを喜んでいたけど、怒った王子がなにをするのか心配になる


「チャーリーも行くよ」


私も?

アリス様に引きづられるように王子の後を追った

大体どうして宝剣が盗まれたことになったんだ?

話に聞いたときはそんなはずはないと、罪人の子だから仕方がないという想いがどっちもあった

これじゃあマリアに顔を合わせることが恥ずかしいな

私に出来ることはなにもなく、マリアが冤罪を免れるように祈るしかない

牢から出されたマリアは酷く疲れた顔をしていた

子供に対してなにをしたんだ?


「マリア、大丈夫」


王子はマリアに対して優しく声を掛けた

脅えていたマリアの顔に安堵がみえた


「レン近衛騎士団長、マリアは無実だ。連れて行くぞ」


王子の声には怒気が含まれていた


「しかし、この子は罪人の子だというではないですか」


「それがどうした?親と子は別の人格でマリアを語るには言葉が足りないぞ」


王子の青い目が冷たく近衛騎士団長を見ていた

あんなに冷たい目を初めて見た

近衛騎士団長も王子の様子に戸惑っているようだ


「しかし…」


近衛騎士団長はマリアをちゃんと見ていなかったんだな

王族を守る要となる近衛の長が人を見極められないものなのだろうか?


「チャーリー殿、この子供を見ていたのはあなただ。このまま城に置いても大丈夫だろうか?」


それを私に聞くのか?

近衛騎士団長はすっかり王子に気圧されてしまっているようだ

そういことは近衛騎士団長が判断することじゃないか

王子もアリス様も近衛騎士団長もマリアまでもが私を見ていた

マリアは罪人の子だ

庇う必要があるだろうか?

王子が連れてこなければ私はマリアを罪人の子としか見なかった

王子に押し付けられた子供の世話、本当に迷惑だ

出世に役立つなら仕方がないと思っていた

今ここでマリアを擁護して出世に響かないだろうか?

でも、マリアはそんな事気にするまでもなく良い子だと思う

ここで突き放したら…

私はどうなるのだろうか?

…そんなことは出来ない

王子にとってマリアは必要な人間だ


「マリアは真っ直ぐで真面目で王子に認められようと頑張っていると思います」


マリアが泣いていた

あんなに大粒の涙、なかなか見ることない

城に来てからマリアが泣いたところを見たことがない

簡単に泣くような子供なら王子は城に連れて来ないだろう

マリアはアリス様のように悪友であり守られる存在ではなく、ヴィンセント様と違って親友で切磋琢磨する相手ではなく、守るべき対象なのだろう

私の意見など無くともマリアは王子の側にいることになると思う

誰かの言うことを聞くような王子様ではないのだから


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