おまけ第5話 雪山山荘殺人事件中編
「えぇぇぇぇぇ!?えぇぇぇぇぇ!!??」
ミューイは奇声を上げた。
失礼。驚きの声を上げた。
「な、ななななんですかそれ!?いつの間にあの二人はそんな関係になっていたんですか!?ちょっと殺人事件とかそういうのいいですからそっちを詳しく聞きたいです!」
ミューイは俺とレイーヌを交互に見ながら興奮した様子でそう言った。
「まぁ、前々から二人から相談を受けてはいたがな。特にグリゼアは俺に仕えているからな。夫婦になるのであればモリガンも俺に仕える騎士の家族になる。だから俺に相談したんだよ」
俺はそう言った。
と、いうかモリガンは俺の所に『グリゼアとお付き合いさせてください』と言いに来たんだよな…。なんでグリゼアの今世の父母ではなく俺なんだと思ったが、グリゼアの主人であるならば当然か…。
すると今度はレイーヌが、
「私のところにも相談にきましたね。将来私にも仕えることにもなるから。と…」
まあ俺とレイーヌは将来結婚するからね。
「なんで一番近くにいた私にはなんの相談もないんですかぁぁぁ」
と、ミューイは悔しがっている。
頼りないから…。なんて言えないな。うん。
さて、続きを話そう。
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モリガンとトリットの試合を終えた後、自分の部屋へと戻る前に俺はお手洗いへと向かった。
いやぁ。いいものを見ることができた。と俺の心の中は暖かかった。
「おや?」
と、後ろで声が聞こえた。
「ん?」
用を足している最中だったので、後ろを向くことができない。
「もしかして、前田さんですか?前田 竜生さん?」
「え?」
俺は用を足した後振り向くとそこには佐々木刑事が居た。
「え!?あ、佐々木刑事!?お久しぶりです!4ヶ月ぶりですね。その節はどうも」
「いえいえ。こちらこそですよ」
「しかし、よく俺の名前を覚えていまいたね?」
「ははは、仕事柄ですよ。と、言いたいところですが、あれだけ強烈な事件に前田さんは濃く関わっていたんです。忘れるわけがありませんよ」
と、佐々木刑事は笑っていた。
「もしかして事件ですか?」
俺は少し不安になった。せっかくレイーヌと旅行をしているのに妙な事件で潰されては嫌だからな。
「いえいえ、ただの夫婦旅行です。と、言いますかここは別の県ですし。息子達も手がかからなくなりましたからね。こうやってたまには夫婦で旅行をしているんですよ」
と、佐々木刑事は説明をした。
佐々木刑事が結婚していることと子供がいることを今知った。
「いや~、ここはいいところですね。清堂さんの所の輝明さんに教えていただけて良かったですよ」
輝明さん。いろんな人にここを教えているなぁ。
「そうですね。俺も輝明さんに教えてもらったんですよ。…では、これで。彼女が待っているんで」
「おっと、それは失礼。では!」
こうして佐々木刑事にも出会って、もう知り合いしか合わないんじゃないかと思ってきた。
「やぁ、待たせてしまってすまない」
俺は待たせていたレイーヌに謝罪した。
「いえいえ。なにやら楽しそうなお声が聞こえてきましたが…」
おっと、声が漏れていたのか。
「あぁ。実は佐々木刑事が居たんだ。ここまで知り合いに会う率が大きいと怖いものがあるな」
俺がそう言うと、レイーヌは、
「佐々木刑事?確か、オーヴェンス様が羽射刃暗に襲撃された際や東音熊高校での襲撃事件でお世話になったという方ですよね?」
「うん。その人だ。夫婦で旅行らしい」
あ、そういえばレイーヌと佐々木刑事はお互い面識は無かったな。
「そうなんですね。一ノ瀬様といい佐々木様といい、年を取っても仲睦まじい夫婦と言うのは良いですね」
「あぁ。そうだな」
絶対レイーヌを幸せにしよう。
俺はそう心の中で誓いながらレイーヌと一緒に自分の部屋へ戻る。
すると、
ガタッ!
と、目の前の客室の扉が開く。
まぁ、宿であるから客室の扉が開く事自体は何の不思議は無い。
だが、
「「………」」
客室から出てきた人物と俺は互いの存在に気付き固まった。
「りゅ、竜生?なんでここに…?」
「兄さん…なんでここに…?」
目の前には『前田 竜也』。つまり今世の俺の兄がそこに居た。
「あ、あの。お久しぶりです。『神埼 麗華』です」
沈黙を破ったのはレイーヌであった。
ちなみに『神埼 麗華』はレイーヌの今世の名前である。
「あ、あぁ。久しぶりです。そうか…麗華さんとデートをしていたのか…」
と、竜也は納得した表情をしたが、
「ん?」
急に竜也は顔をゆがませ、
「お、おい竜生。ここ結構高いぞ?金はどうした?まさか麗華さんに…」
と、小声で迫ってきた。
「いや、清堂さんがこの前夏に家庭教師をした御礼って事でここの費用を払ってくれたんだ」
俺はそう言って弁解した。
まさかレイーヌに全金額払わせるなんてことはしていないぞ!?
いくら神崎家がお金持ちだからって。
「そうかそれならいいんだが…」
竜也は納得してくれたようだ。
「それよりも兄さんは何でここに?」
俺がそう尋ねると、
「あ、あぁ。丁度純がまた日本に帰ってきていてな。皆で集まろうと思ってここに来たんだ。その…マリーさんにここは絶景だって聞いていたし、今年の夏の件で慰謝料みたいなもん結構貰ったしな」
と、答えた。
「え?純ねぇちゃん来てんの?そっちもデートだったのか…」
「いや、晶や安奈もいる」
「そうなんだ…あ、そうだ。マリーさんも今日ここに泊まっているよ」
「え"!?マジで?」
「うん。マジ」
「おーい!なんかあったのかぁ?」
と、竜也が出てきた客室の中から声が聞こえた。
純ねぇちゃんの声である。
「あ、あぁ。竜生と竜生の彼女と会ってな」
竜也がそう言って扉を全開にする。
「おぉ~!竜生じゃん!」
「あ、竜生君!」
純ねぇちゃんと安奈ねぇちゃんから声が上がる。
晶さんも手を上げて挨拶をしてくれた。
「どうも!お久しぶりです!」
俺もそう言って挨拶をする。
「こんにちは。竜生君の彼女の麗華です」
「キャー!可愛い!竜生君の彼女可愛い!」
「ほー。お人形さんみたいだな。よし、こっちに来い!」
レイーヌが挨拶をすると、安奈ねぇちゃんと純ねぇちゃんに即座に気に入られてしまい部屋の中に引きずり込まれてしまった。
「へぇ~。お肌がモチモチね!」
「うん。良い匂いだ」
うわぁ。安奈ねぇちゃんと純ねぇちゃんが変態になっている…。
「オ…竜生さ…竜生くーん!」
レイーヌが必死に助けを求める声を出したが、どうすれば良いのか分からなかった。
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「で、いつ人が死ぬんです?」
ミューイが突然そう聞いてきた。
「おいこら。滅多な事を言うもんじゃない」
俺がそう叱ると、
「だって、さっきから他人の惚気話しか出てこないじゃないですかぁ。登場人物で知らない人っていうのは、受付にいたおじいさんしかいないじゃないですか!このままだと、おじいさんが被害者か加害者で、私の知り合いが被害者か加害者ですよ!」
そうミューイは言ってつまらなそうな顔をした。
「はぁ…。そうは言ってもまだ知り合いは出てくるぞ?」
俺が溜息を吐きながらそう言うと、
「ま、まだ出てくるんですか!?」
と、ミューイは驚いていた。
さて、続きを話そう。
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安奈ねぇちゃんと純ねぇちゃんの魔の手から開放されたのは1時間後であった。
「うん。お疲れ様。レイーヌ」
「いえ、お助けいただきありがとうございました…」
「あまり役に立ってなかったけどね…」
俺達は疲れきった表情で再びロビーへと歩く。
喉が渇いたので飲み物の補給へとやってきたのだ。すると、
「外の天候がかなり荒れてきたな…」
「そうねあなた。本格的に荒れる前に着けたのは幸運だったわ」
と、聞いたことがある声が聞こえてきた。
うん。もうこのパターンは知り合いだ。
さて、次は…。
「こんにちはお義父さん、お義母さん」
俺はロビーで受付のおじいさんから部屋鍵を受け取っている人物に声をかけた。
「あれ!?なんでここに二人がいるの!?」
と、女性の方。『神埼 真知子』…。レイーヌの今世の母がそこに居た。
「お、お父さん!?お母さん!?」
レイーヌも驚愕している。
「しまった…。時間をずらして来たのに…」
邦治さん。レイーヌの今世の父『神埼 邦治』さんは冷や汗を流している。
おっと。こっちは確信犯か。
「ちょっと、あなた。どういうこと?」
「お父さん説明して」
「あ…う…」
邦治さんは妻と娘に問い詰められて顔を青くしていた。
はぁ…。
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「え?まさか娘が心配だからって彼氏との旅行を尾行してきたんですか?」
ミューイはそう聞いてきた。
「あぁ。その通りだったらしい。妻に内緒でな」
俺がそう言うと、
「うわぁ…」
と、ミューイはドン引きしていた。
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「まったく。あなたと言う人は…」
「お父さん…」
邦治さんは妻と娘から冷たい視線を浴びせられていた。
「だがな?だがな?もし、間違いが起こってからじゃおそい…」
「黙りなさい」
「ハイ…」
邦治さんは真知子さんに叱られ小さくなった。
「はぁ…。この時間や天気じゃ帰るわけにも宿を移るわけにもいかないわね…。ごめんなさいね竜生君。それと麗華」
真知子さんは俺とレイーヌにそれぞれ謝罪をする。
「い、いえ。気にしないで下さい!」
どの道邦治さんが考えているような事は起きるわけないですから。
ってか、知り合いしか泊まっていない場所で壁が薄い旅館でなんて、頭おかしすぎる。
「お父さん。帰ったら分かっているよね?」
「ハイ…。」
レイーヌもご立腹だ。
怒った顔も可愛いね。
「ありゃ、こいつは拙いなぁ…」
と、受付のおじいさんが外を見ながら言った。
「ん?おぉ…」
俺はおじいさんの言葉で同じく外を見ると、猛吹雪になっていた。
「本当に私達は運が良かったわね。さぁ、説教の時間よ」
「そ、その前に温泉に行かないかい?」
「説教をしてからね。温泉に入ってからも説教よ」
「ひぃ。ゆ、許してくれぇ…」
邦治さんは真知子さんに連れて行かれてしまった。
なんだろう。最初出会った頃はかっこいいと思っていた人のへたれた姿を見ると悲しいものがあるな…。
「あれ~?何かあったの~?」
と、声が聞こえてきた。
「あ、どうもマリーさん」
俺達に近付いてきた人物はマリーであった。
「ん?」
俺はマリーの後ろにいる人物が気になった。
ラゼルトではない。
明らかに日本人だよな?だれだ?
「あぁ。今日ここへ連れて来てくれた『清堂 藤造』さんだよ」
と、マリーが説明をしてくれた。
「清堂…藤造…さん?あ!」
俺はその聞き覚えのあった名前について思い出す。
「やぁ。前田 竜生君。久しいな。もっとも会話をするのも素顔を見せるのも初めてだが…」
と、藤蔵さんは言った。
清堂 藤造。彼は例の小岸クソ元議員がやったテロの時、長谷川君の捜索や、学校での暴動事件の際、一緒に鎮圧行動をしてくれた人だ。
うわぁ。ここに来てようやく顔を見ることができたよ。
「本来であれば私は顔を見せたりはしないのだがな。清堂家に対しての捜査結果等の報告をここでしたいとのことで、私が資料受け取りの任に就いたのだ。ラゼルト殿から先ほどまで報告を受けていたのだよ」
「そうでしたかお疲れ様です」
「もう。私も話をしていたでしょ?それだと私は何もしていないみたいじゃない!」
と、マリーはプリプリ怒っている。
「ははっ…これは失礼。マリー殿からも報告を受けていましたよ」
と、藤造さんは遠い目をしながら言った。
哀れラゼルト一人で殆ど報告をしていたんだな…。
いや、哀れではないか。彼も仕事にかこつけて遊んでいたな。
彼もマッサージチェアーで魔力回復していただろうし大丈夫だろう。
こうしてマリーと藤造さんと分かれて俺達は部屋へと戻った。
結局ここに来た知り合いは、
・園田一家。
・トリット、リズリーのペア。
・マリー、ラゼルトのペア。
・一ノ瀬夫妻。
・モリガン、グリゼア、一之君家族。うん、家族だ!
・佐々木夫妻。
・竜也、純ねぇちゃん、安奈ねぇちゃん、晶さん(ちなみに部屋は男女別らしい)
・神埼夫妻。
・清堂 藤造さん。
だ。
なんだこれ。
確か15部屋の旅館だろ?
知り合いだけで10部屋埋まっちゃってるじゃん!
その後、俺とレイーヌは夕飯を食べ終え、食後の休憩をした。
さて、その2時間後。時刻は午後9時である。
ゴゴゴゴゴ!
「ん?なんの音だ!?」
外から地響きのような音が聞こえてきた。
「なんでしょう…」
レイーヌも不安な顔をしている。
まさか…。
俺とレイーヌはロビーに降りて早速受付のおじいさんに話を聞こうとした。
ちなみのこのおじいさん。この山荘の経営者である。
「拙い!拙いぞ!」
おじいさんはうろたえていた。
「どうしたんですか?」
俺はおじいさんにそう尋ねる。
「ねぇ、さっきの音はなぁに?」
と、マリーさんが。
「小さな地震のような揺れを感じましたわぁ」
と、リズリーが。その後からトリットも来る。
「なんじゃなんじゃ?」
と、一ノ瀬さんが。
「いったい何があったんだ?」
と、モリガンが。
「変な音が聞こえたぞ」
と、竜也が。
「ふむ。皆さんも同じ音を聞いていたみたいですね」
と、ダンディーな雰囲気に戻った邦治さんが。
「もしかして雪崩ですか?」
と、園田さんが。
「…」
無言で降りてくる藤造さん。
次々と知り合いがロビーにやって来た。
何だこの状況。
「あぁぁ…すみません。どうやらそちらの方がおっしゃる通り、雪崩が起きてしまったようでして…現在ロープウェーへの場所や従業員が寝泊りする場所へ通じる道がふさがれてしまったようなのです…」
と、申し訳なさそうにおじいさんは言った。
「あぁ…そうなのか…」
と、モリガン。
「まぁ、自然現象であれば仕方が無いのぉ」
と、一ノ瀬さん。
「従業員が寝泊りする場所は大丈夫なのですか?」
と、竜也が聞く。すると、
「えぇ、電話は繋がりますので、先ほど確認を取ったら全員無事だと。あそこにもここと同じように後ろに大きな岩がありますからね。ただし、私以外の従業員はここの山荘には残っておりません…」
そう言って再び申し訳なさそうにするおじいさん。
「まぁ、電話が繋がるなら問題ないわよねぇ~」
と、のん気に欠伸をしながら言うマリー。
「そんじゃ道が開くか救助が来るまで寝ていますか~」
と、言うトリット。
「いや、晴れたら我々も雪かきをした方がいいのでは?」
と、提案する藤蔵さん。
「そうですね…。本来であればこのような事は依頼しないのですが…。よろしいでしょうか?」
そう伺いを立てるこの山荘の主に対し、
「「「えぇ。大丈夫ですよ」」」
と、俺達は答えた。
「し、しかし皆様結構落ち着いていらっしゃいますね…」
と、おじいさんは驚きつつそう言った。
「ははは…」
俺は苦笑いをした。
なぜならば最悪超テクノロジーである転送やマリーの魔法で何とかできるからだ。
俺だって火の魔法で雪を解かせる可能性がある。
この場にいるおじいさん以外の人は全員その事を知っているため、落ち着いていられるのだ。
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「おぉぉぉ…ようやくそれっぽくなってきましたね。ってか、全然緊張感ないですけど…」
と、ミューイは目を輝かせた後文句を言ってきた。
「いや、仕方がないだろう。事実なんだし」
俺はそんなミューイの態度に呆れ名がらそう言った。
「そもそも軍人たるもの。そうみっともなく慌てふためくような事はしませんよ」
と、ピシッとレイーヌが言った。
「はぁ~い…すみません…」
ミューイはショボンとしている。
さっきからレイーヌに怒られてばかりだな。
まぁ、当然か。これから起こる殺人事件を嬉々として聞こうとしているのだからな。
「はぁ…。まぁいい。ここからようやくミューイが聞きたがっていた事件になってくる」
俺は溜息を吐いた後そう言うと、
「え?本当ですか!?」
ミューイは再び目を輝かせた。
はぁ…。
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