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おまけ第4話 雪山山荘殺人事件前編

没ネタを書き上げました。

初めはミステリーを書こうと思ったのですが、無理でした。

代わりにこんなものができました。

 時期は高校三年の冬。

 高校最後の冬休みである。


 あのとてつもなく濃い思い出がある夏から4ヶ月が経っていた。



「やぁ、ミューイ。早いじゃないか」

 俺はそう言って神埼ホテルのいつもの会議室で入って来たミューイを出迎えた。


 現在このホテルに居るのは俺とレイーヌそして今来たミューイだけである。


 この会議室に呼んだ輝明さんは現在別の県で、現在レイーヌの今世の父邦治さんと電話会議中である。


 今日はいつもの通り輝明さんは立体映像で出席予定らしい。そして本日は『第一回BW宇宙訓練』の打ち合わせをするらしい。


「たいちょー!レイーヌさん!こんにちわですぅ。えへへ」

 と、なにやら満足げな表情をしながらミューイは挨拶をした。


「こんにちは、ミューイ。なにか物凄く幸せそうな顔をしていますけど…どうかしたの?」

 と、レイーヌがミューイに質問をする。


「えへへ。実は早く来ればここ、神埼ホテルの高級ランチをタダでご馳走してくれるってレイーヌさんのお父様から言われていまして…。ご馳走になってきました!」

 と、みみっちい事を言い出したミューイ。

 いや、俺もさっき早い昼食をご馳走してもらったばかりなので人の事は言えないな。


「あ、そういえば聞きましたよ!お二人、一昨日まで行ってた旅行で大変な事件に巻き込まれたんですよね!?」

「ん?あ、あぁ…そうだな」


 俺は出来れば思い出したくはない事をミューイから聞かれた。


 実は一泊二日で清堂家が贔屓にしているという山荘へ旅行に行ってきたのだ。

 そこの山荘は小さいが温泉が出ており、水も豊かという事なので輝明さんから夏に自分達の子供達のボディーガードをしてくれた御礼ということで、費用全て輝明さんや鬼一郎さんが出してくれるのでレイーヌと二人で行く事になった。


「はぁ…まさかあんな事になるとは思いもしませんでした」

 と、レイーヌにとっても悪い思い出となっているようだった。

 当然か…。


 しかし、

「その時の話聞かせてください!是非とも!」

 と、ミューイがグイグイ聞いてきた。


「はぁ?いや、そんな面白い話じゃないぞ?」

 俺がそう言うと、


「いいじゃないですか!雪山の山荘で猛烈な吹雪によって閉じ込められる。そしてそこで起きた"殺人事件"だなんてテレビの中でしか見られませんよ!?」

 と、ミューイは興奮していた。

 俺とレイーヌはそんなミューイの興奮した様子を見てから互いに目をあわし、

「はぁ~」

 と、溜息を吐く。


 どうやら聞くまで諦めなさそうだ。

 仕方が無い…。


「分かった。じゃぁ話すよ…」

 俺がそう言うと、


「わーい!ありがとうございますぅ、た~いちょ!」

 と、ミューイは喜んでいた。

 何でミステリーものが好きなんだろうなミューイは。




---------------------------------------------------------


 時間は遡って4日前。

 俺達はとある山荘に着いた。


 ロープウェイで行く事が出来る山荘で、夏には登山客も多いらしい。

 部屋数は15であり、従業員は5人。小さな所である。



 ここで、俺とレイーヌは明日まで雪景色を見ながら過ごす事になる。


「すごく綺麗な所ですね…」

 と、レイーヌは目を輝かせながら言った。


「あぁ、本当だな。俺はこういう絶景は山へ歩いて登らなくては見られない光景だと思っていたが、こんなに簡単に…しかも温泉付きの宿まである場所があるなんてな。これは輝明さんも進めてくるのも頷ける」

 俺は辺り一面雪景色の山を見下ろしながら感動していた。


 上にもまだ山はあるが、すぐ後ろは山荘よりも大きい岩が突き出ており雪崩から守ってくれている。


「しかし、園田さんに会うことになるとは思わなかったな…」

 と、俺はポツリと呟いた。

 ここに来る途中、俺を小岸 愛理へ対しての暴行という冤罪から救ってくれた人物。『日本虐め対策団体』の園田さんに会うことが出来た。

 園田さんというか、園田さんの家族も一緒だ。

 妻と子供二人でここの山荘へと来たようだ。


 ちなみに『日本虐め対策団体』と言ったが、実は彼。そこの正式なメンバーでもあるが、清堂家が派遣した俺を救出するための人材でもあるらしかった。

 なんか前々から学校で俺達スレード隊が虐め等の被害に遭った際、助けられるようにしていたらしい。


 準備良すぎだよ。輝明さん…。

 後で聞いて驚いたよ。


 それはそうと、

「ここでは温泉を見ながら遠くの山々を見れることだし、よし早速宿へ入るか」

「はい。オーヴェンス様」

 俺達は早速山荘の中へと入った。




「いらっしゃい」

 出迎えてくれたのは70歳位のおじいさんであった。


「こんにちは。清堂 輝明さんの紹介で来た者なんですが…」

 と、俺はそう言ってから懐から輝明さんから預かった手紙を出す。


「あぁ!君達が輝明坊ちゃまから紹介があった子達だね?話は聞いているよ。どれどれ?」

 おじいさんは手紙を受け取り中身を確認する。


「うん。確かに受け取りました。では、二人ともこれが君達二人の部屋の鍵だから。食事も期待していていてね」

 おじいさんはそう言って鍵を渡してきた。


 そして、俺達二人は201号室の二人部屋に入っていった。



---------------------------------------------------------



「ちょちょちょ!ちょっと待って下さい!二人同じ部屋に入ってんですか!?キャーキャー」

 と、ミューイはなぜか顔を真っ赤にして喜んでいる。


「いや、ミューイ。別に何も無かったから…」

 俺がそういうと、ミューイは驚愕の表情へと変わり、


「えぇ~。ありえないんですけどぉ」

 と、言ってくる。

 なんかムカつく。


「ミューイ。一応殺人事件があったのですから、貴方が期待するようなことが起きるわけ無いでしょう?」

 と、レイーヌからピシャリと言われる。


「あ、それもそうですね」

 ミューイはそう言って納得していた。


 そうだよな。殺人事件が起きたような時にそんな事してりゃ神経を疑うよ。

 まぁ、でもそれだけじゃないんだけどね…


「そんじゃ話を戻すぞ」


「は~い!」



---------------------------------------------------------


 俺とレイーヌは荷物を置いて、温泉に入ることにした。


 まだ明るい内に入ったほうが山々の絶景を楽しむ事が出来るからである。


 温泉は露天風呂となっており、目の前は本当に綺麗な山脈が連なっていた。が、入る前にとある出会いがあった。



 それは丁度服を脱いで露天風呂に入ろうとした時のことである。




「あれ?隊長じゃないっスか!?」



 その聞き覚えがある声の方向に俺は振り向いた。


「トリット!?」


 そこに居たのは部下のトリット・マーキーであった。





---------------------------------------------------------



「えぇぇぇぇぇ!?何でトリットさんがいるんですか!?」

 ミューイはそう言って驚いている。


「私もすぐ隣の女風呂にてリズリーさんと会いました。つまりはそういうことですよ」

 と、レイーヌが説明してくれた。

 説明ありがとうレイーヌ。


「あぁ、なるほど。リズリーは転生してから清堂家の人間ですもんね。そりゃ清堂家が贔屓にしている山荘の存在を知っていますよねぇ」

 と、ミューイは納得した。


 さて、続きを話そう…。



---------------------------------------------------------


「隊長?な、なんでここに??」

 トリットは驚きながらそう尋ねてきた。


「うん、ここじゃ寒いから温泉に浸かりながら話すよ…」

 季節は冬。しかも寒い高い山。周りは雪。裸のまま話していたら風邪を引いてしまう。


「はぁ…わかりました」

 トリットはそう言って俺と一緒に露天風呂に入る。


 その後、体を洗ってからゆっくりと温泉へ浸かる。


「ふぃ~…。それで、隊長は何でここに?ここって結構高いですよねぇ?隊長って今世はお金持ちでしたっけ?あ、ちなみに俺はリズリーと一緒に来たんっスよ~。いいでしょ~」

 と、トリットは下世話な話をしてきた。

 なんか失礼な奴だな。


「レイーヌと一緒に来たんだ。費用は清堂家が出してくれた。どうやらあの妖怪退治の報酬の一つらしい」

 俺がそう言うと、


「あぁ、なんか妖怪軍団を虐めた話っスよね?それにしてもレイーヌとですか~。うひょひょ、この旅館の壁は案外薄いらしいですからねぇ~…あんまり気合を入れすぎちゃうと隣の部屋に聞こえちゃうかもですよぉ~」

 本当にこいつは…。


「それはお前にも言える事だな」

 俺がそう言ってやると、


「はっ!?」

 と、トリットは驚いた顔になる。って今気付いたんかい!!



---------------------------------------------------------


「うっわ~…。トリットさん最低…」

 と、ミューイ。

 さっきのお前と一緒だよ。という言葉は喉まで出掛けたけど言わなかった。


「先ほどまでの貴方と一緒ですよ。ミューイ」

 と、レイーヌが言った。

 流石レイーヌ!はっきりと言っちゃう性格大好きだ!


「うぅぅ…」

 ミューイはトリットと同列に扱われたことがショックなのか落ち込んでいた。


「ふむ。しかし、トリットさんは後で何とかしなくちゃいけませんね」

 と、レイーヌはトリットにお仕置きしようとしている。

 そういえばこの話はレイーヌにしていなかったな。


「うん。お仕置きはいいけどリズリーが悲しまない程度にね…」


「了解です!」


 …さて、話を戻そう。



---------------------------------------------------------


 俺は風呂から出てレイーヌを待ち、レイーヌと一緒に出てきたリズリーと少し話をした後、俺とレイーヌは何か飲み物を買おうと休憩室まで足を運んだ。


 そして、そこには…。



「うえ"え"え"え"え"。地球の"技術も"捨て"た"も"ん"じゃな"い"わ"ね"ぇ」

「お"ぉ"ぉ"い"。軽々し"く"地球と"か"い"う"な"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"」

「い"っけ"な"ーい"。ごめ"ん"な"さ"ーい"」

「はぁ。可愛く"ね"ぇん"だよ"ぉ"ぉ"。しっかし、こ"の"マ"ッサ"ージチ"ェア"ーと"か"い"う"道具は"効く"な"ぁ"ぁ""ぁ"ぁ"」

「年寄り"み"た"い"な"事を"言わ"な"い"でよ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"」

「残念な"がら"俺達は"既に"年寄り"だぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"」


「マリーさんとラゼルトさん!?」

 俺は思わずそう声を出してしまった。


 なんとそこに居たのはプルプルとマッサージチェアーによって震えていたフー親子が居たのだ。


「あ"ぁ"ぁ"ぁ"ま"ぁ"ぁ"え"ぇ"ぇ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"り"ゅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"う"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"せ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"い"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"く"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"(あ、前田 竜生く)」


「ちゃんと話せ!ってか切れ!」


バチッ!


「んだ!ひっさしぶりー☆」


 マリーはラゼルトにマッサージチェアーの電源を切られ、声が元に戻り、そのまま挨拶を続けた。


「えっと、まだ…その…例の件で日本に?」

 と、俺はいかにも知り合いの外国人に話しかけている感じで聞いてみる。

 マリーやラゼルトが地球外生命体とバレないような言い方をしないとな。

 言葉に気をつけながら俺達スレード隊転生についての調査の進展を聞いてみる。


「ん?日本にってか、地球に来たのも久々よ」

 マリーはそう答える。

 いろいろ俺の配慮が台無しだ。


「おい!地球とか言ってんじゃねぇよ。あぁ、すまねぇな。お袋オフの時は大体こんな感じでダメになっているんだ…」

 と、ラゼルトさんがマリーを叱りつつ言った。

 ってか、アンタもですよ。こんな若く見える人をお袋って呼んじゃダメでしょ。地球基準だと絶対変だから。


「ようやくあの時の事件の資料が纏まったって連絡が部下から来てね~。そんで私が実際こっちに来て受け取ったの」

 マリーはそう説明をした。

 何だかスケールのデカイ話だな。

 資料を受け取るついでにはるか彼方の宇宙から現場を見に来るなんて相当仕事熱心なのだろか?


「いや、竜生君。お袋は単に報告にかこつけて遊びに来ているだけだから。惑星マティーナでもそうだっただろ?」

 と、ラゼルトが言った。

 なるほど。説得力ありますね。


「あ!ひっどーい!それは言わない約束でしょ!?だいたいラっくんだって…」


「うるせぇ!ラっくんは止めろ!そして科学技術の餌食になっていろ!」


「う"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"魔力が回復す"る"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"」


 こんなんで魔力が回復するんかい!


 ってか、ラゼルトも遊んでいるから人の事は言えんよなぁ…。



 まったく…それにしても仲が良い親子である。



 それにしても周りに人がいなくて良かった。



---------------------------------------------------------



「何だか登場人物が知っている人ばかりですね…」

 ミューイは苦笑いになりながらそう言った。


「うん…まぁね」

 ミステリーっぽい話をしているのになぜか知り合いの醜態ばかり話している気がする。


「ですが、知り合いは今オーヴェンス様が話した人達だけではありませんでしたけどね…」

 レイーヌがそう言うと、


「え…」

 と、ミューイは声を失っていた。


 そう。まだまだ知り合いは居たのだ。

 まぁいいや。続きを話そう。



---------------------------------------------------------


 俺とレイーヌはジュースを買った後、トリットとリズリーが遊ぶといっていた卓球台へと向かおうとしていた。

 すると、歩いている廊下の途中、見たことがある男性の老人が居た。隣には同じ年くらいの女性がいる。


「おや?君達は…」

 向こうも気が付いたようだ。


「あ!お久しぶりです!一ノ瀬さん」

「お久しぶりでございます」

 俺とレイーヌはそう言って揃って頭を下げた。


「ほっほっほ。いやはや。まさかここであの時の子らに会うとは思わなんだ。今日は二人でご旅行かい?」

 と、男性の老人『一ノいちのせ 重松しげまつ』さんが質問をしてきた。


「はい。実は輝明さんのご好意で…~。例の妖怪退治で…~」

 俺がそう説明すると、


「ほっほっほ。そうかいそうかい。いやぁ~輝明君もいい所を紹介したなぁ。ここはな?ワシも贔屓にさせてもらっておる旅館なんじゃ」

 と、言った。


「毎年季節の変わり目にはここに居る妻と一緒にこの旅館へと来るのじゃよ」

 一ノ瀬さんがそういうと、隣に居た女性。一ノ瀬夫人が頭を下げた。

 慌てて俺とレイーヌも頭を下げた。


「ほっほっほ。まぁ、こんな年寄りと話してばかりじゃ楽しめんじゃろ。それじゃあの!」

 そう言って一ノ瀬さんは去っていった。







「まさか一ノ瀬さんが居るとは…」

「考えて見れば輝明さんが知っているのですから五頭家の方々は全員知っているのではないでしょうか?」

「そうは言ってもこんなにここに来る日が重なるのか?」


 そんな事を話しながら俺とレイーヌは娯楽室に入る。


 娯楽室はレトロゲームや玉が内部で回るだけのパチンコ。そして卓球台があった。


カコーン!

カコーン!


 既に先客が卓球をしている。


 と、言うか先客はトリット達であるが、


「モリガン!?それにグリゼアと一之君!?」

 なんと、そこにはトリットと卓球対決をしているモリガンと、その後ろでモリガンを応援しているグリゼアと一之君が居たのだ。


パシーン!


 あ、モリガンのスマッシュが決まった。


「あ、隊長!どうもです。トリットから話を聞いていましたが、まさかこんな所で会えるとは思いませんでしたよ」

 と、モリガンが笑顔で挨拶をしてくる。

 笑顔になっているが、顔が怖いので邪悪な感じになってしまっているのが悲しい点だ…。


「坊ちゃま、レイーヌ様。こんにちは」

 グリゼアもペコリと頭を下げて挨拶をしてくる。


「あ、オーヴェンスさまにレイーヌさまだぁ!こんにちは!」

「やぁ、一之君こんにちは。でも別に『様』じゃなくてもオーヴェンスお兄ちゃんでいいからね」

「こんにちは一之君。私もレイーヌお姉ちゃんでいいですよ」

 俺達はそう挨拶をし合ったが、


「えっと、オーヴェンスさまとレイーヌさまには将来"おつけえ"しなくてはならないので!」

 と、一之君から屈託の無い笑顔を向けられた。


「「……」」

 俺とレイーヌはその笑顔を向けられた瞬間なにも言えなくなった。

 どうやらグリゼアの教育は徹底されているようだ。



「それにしても卓球か…俺はやったことがないからわからないけど、今のはモリガンの勝ちだろ?」

 俺は話題を変え、卓球台に目をやる。


「えぇ、今のは俺の勝ちです」

 と、モリガンは胸を張って答えた。


「ぐぬぬ。まだ一点じゃないっスか!?調子に乗らないでもらえますかねぇ」

 トリットは悔しそうだ。


「うふふ。頑張って下さいねぇ」

 トリットの後ろでリズリーが応援をする。


「ほぅ?既に7対0だが?11点取れば勝ちなんだろ?自分から勝負を仕掛けておきながらそのザマとはな…」

 と、モリガンは言った。

 え?そんなに差が開いてんの?


「モリガンは経験者なのか?」

 俺はそう聞いてみると、


「いいえ。俺もトリットも未経験者ですよ」

 そうモリガンから返答が返ってきた。


「ふん!笑っていられるのも今の内っスよ!いくっスよ!」

 トリットからのサーブで球が打たれる。


ポン!


 という音が響く。


「なんの!」

 モリガンが打ち返す。


ビシッ!

「はっ!こんなの!」

 トリットがちょっと強く打ち返す。


バシッ!

「ふん」

 負けじとモリガンは強く打ち返す。


バシ!

ベシ!

パン!


 ラリーが続く。

 モリガンもトリットも本気の目だ。


ポーン!


 あ、モリガンが高く打ち上げた。

 トリットは好機とばかりに目を光らせてスマッシュの体勢になる。


「あぁ…。お、お父さん頑張ってぇぇえ!」

 と、一之君が叫んだ。

 その言葉を聴いたモリガンは目つきが変わる。


 ん?お父さん?


「ひゃーっはっはっは!これで一点目だぁぁあああ!」


バシーン!!


 トリットは奇声を上げた後、思いっきりスマッシュを打つ。


 だが、


「甘い!」


パーーーーン!!


 モリガンは打ち返した。


「馬鹿なぁぁぁぁああああ!!?」


 見事にトリットのエリアに入り、トリットはそれに反応できず球を見送ってしまった。

 トリットは悲鳴を上げている。


カコーン。ポンポンポン。


 壁に当たって床を跳ね回るピンポン玉。


「「「「……」」」」

 皆沈黙する。


 いや、唯一人、


「そんな…」

 と、言ってひざから崩れ落ちている人物が一人。

 言わずもがな。トリットである。


 そんなトリットは放っておいて、モリガンはというと、


「一之君…」

 と、言いながら一之君に近付く。


「あ…」

 一之君は怒られるかと思ったのか縮こまってしまっている。

 絶対にモリガンの顔は今は関係ない。


「そう呼んでくれるのかい?」

 モリガンは優しげにそう一之君に尋ねた。


「い、いいの?」

 一之君はうれしそうにそう言った。


「あぁ、一之君…いや、一之さえ良ければな」


「うん。うん!お父さん!」


 そして、モリガンと一之君は抱き合った。

 グリゼアは涙を浮かべながら微笑みその光景を見ている。


 ナニコレ…すげぇ。



「あれ?俺この後絶対勝っちゃいけない雰囲気じゃね?」

 トリットは俺に助けを求めるように見てきたが、俺がどうこうできるものではない。


 俺は黙ってトリットとモリガンがしばらく経ってから再開した試合を見ているしかなかった。

 あ、トリットがストレート負けした。


 おめでとうモリガン。二つの意味で。

 何かお祝いを送らなくてはいけないかな?



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