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第66話 乱入者

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 惑星『ガ五』日本エリア地上防衛隊第9BW隊。


 俺たちは今回地球から来たという違う惑星からの転生者の部隊と模擬戦をする事になった。

 異星人の転生者??いろいろとツッコミたい事はあったが、模擬戦ということには変わりはない。

「<ヘヘッ。隊長!まさか奴ら地中から来るなんて思ってないでしょう!>」

「地上戦テストだというのに本と俺らってたち悪いよな」

「<地中から飛び出して地上戦をするんです。なぁ~んにも間違ってませんぜ!>」

「<<<ギャハハハハ!>>>」

 このチンピラのような話し方をするのはいただけないが、新型機のテストを地球出身の異星人とかいう訳の分からない存在に取られるという屈辱を晴らそうと皆張り切っていた。

 転生者だか何だか知らねぇが、やってやるぜ!

「よし、敵に近付いたぞ!ドリルミサイルを発射後、地下から地上の連中へ格闘攻撃を加えるぞ!」

「「「<了解!>」」」

 俺は部下達と一斉にミサイルを発射させる。

「計20発のミサイルだ!」

 さすがにこれだけのミサイルを避ける事はできねぇはずだ。

「<た、隊長、地中攻撃をされています!>」

「<な、何だと!?全員地上に出ろ!>」

 畜生、敵は地中に攻撃して俺達が地中から攻撃できないようにしているんだな!?巻き添えを食ってはかなわない。地上へ飛び出すと、そこには俺達が発射したミサイルが竜巻と砂の波に飲み込まれ爆発している瞬間を見てしまった。


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「<目標。地中からの奇襲を仕掛けてくるつもりのようです>」

 グリゼアがそう言う。

「ただ地中から攻撃するわけではなく、飛び出てくる恐れがあるな…」

「<可能性はあります。あくまでも地上戦ですからね…>」

 と、グリゼアは返した。

「よし、それじゃあ地中に居ても地上に出てきても初撃に対応できるように地面に攻撃しよう」

「「「<え!?>」」」

 スレード隊の面々は俺の意見に驚き声を上げた。

「なに、単純な話だよ。土で津波を作ればいいんだ。リズリーは天候魔法で竜巻を頼む。トリットは念の為ミサイル妨害電波及び魔法を出せ。デルクロイは地面に最大火力をぶつけろ。それとレイーヌは可能であれば敵を打ち落とせ。パルクス、モリガンは俺と一緒に敵に備えろ。全員敵が出てきた瞬間に後方へジャンプする準備もしておけ!」

「「「「「<了解!>」」」」」

 リズリーは即座に天候魔法で竜巻を作り、トリットは妨害電波を出す。

「<目標。約20秒で我々の地点に到着します!16、15、14…>」

 ミューイが秒読みを開始する。

「さて、飛び出して射撃攻撃をする気か格闘攻撃を仕掛けてくる気か…。どちらにせよ…」


「<敵、ミサイル!>」


 グリゼアがそう力強く言葉を発した。

「デルクロイ!」

「<了解でさ~!>」

 デルクロイの機体がミサイルや大口径ビームを地面に向けて発射する。すると、土や砂、石の津波が発生し、リズリーの竜巻に舞い上がっていく。

 同時にミサイルが接近し、殆どが竜巻や土砂、妨害電波や魔法にミサイルは動きを止められ落とされていく。

 パルクスとモリガンはそれぞれの射撃武器で弾幕を張る。

「<目標、地上に出てきました!>」

 ミューイの声が全機に響く。

「全員下がれ!レイーヌ!」

 俺がレイーヌにそう声をかけると、

「<了解!>」

 レイーヌの狙撃銃がエネルギー弾を出した。



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「<う、うわぁああ!?や、やられた!>」


「な…遠藤!?」

 俺の部下がやられた弾は演習用の弾であった。

 俺は今日、一度で複数の現象に驚いていた。

 第一に目の前で俺達が発射したミサイルが全て落とされた事。

 第二にいくらBWの増幅装置があるとはいえ、これほど大規模な竜巻魔法や妨害魔法を広範囲に出せる事。

 そして第三にこの竜巻と土砂の中、正確に味方が撃ち倒された事。

「<た、隊長!敵が散開しています!>」

「あわてるな!飼葉と草原はもう一度潜れ!俺と神楽坂は敵との乱戦に持ち込む!フォーメーションDだ!」

「<<<<了解!>>>>」

 俺達は陣形を整え、敵に向かっていった。


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「ん?敵が突撃してくる!?全員気をつけろ!」

 俺はスレード隊全員に指示を出す。

「んな!?」

 思った以上に素早い動きで俺のところまで一気に距離を詰める。なにが旧型の機体との戦いだ。あれは確かにこの雷牙より古い機体だが、あれとこの機体では使用目的が全然違う。

 『GBWG-3岩壊三式がんかいさんしき』。土や砂地に潜り奇襲を行うために作られた機体だ。見た目はずんぐりむっくりしているモグラが二足歩行をしているような感じだ。モグラの鼻先に当たる部分がドリルになっている。

 現役で使用しているものであり、地上戦ではこれ以上厄介な機体は同等の大きさのBWではなかなかと存在しない。


 おっと。目標は俺のようだ。飛ばされる竜巻や岩をものともせず突っ込んできた。


「<ふはは、中世の世界から来た転生者だったかな?もうBWには慣れたのか?>」

 と、相手側から通信が流れてくる。発進元は俺に目掛けて突っ込んでくる機体のようだ。

「もとの世界でも地上戦を主にしたBWに乗っていたんでねぇ」

「<なに!?>」

 俺は垂直にジャンプし、向かってきた機体を飛び越えると相手の機体『岩壊三式』の左側の背を思いっきり蹴る。

「<ちぃ!この機体を蹴り飛ばせる力があるのかよ!>」

 と、バランスを崩した相手の機体はバランスを立て直しつつ俺の方へ向いた。

「<はっはっは、BWの使い方、わかってんじゃねぇか。俺はこの隊を指揮している『吉永よしなが』ってもんだ!>」

「そうか。俺はスレード隊隊長『前田 竜生』だ」

 無線でそう答えた後、おれは直ぐに持っていたアサルトライフルを連射モードに切り替えて発砲する。

 弾は真っ直ぐ相手の『岩壊三式』に向かっていくが、全て<弾かれた>と判定が出る。マジか!

「<ハッ!そんな豆鉄砲、効かねぇなぁ>」

 なんだろう。この人さっきから一人で盛り上がっているぞ。

「<うひゃひゃ!うりゃぁ!どうだぁ!>」

 両手の鋭い爪で俺に襲い掛かってくる。

 もはや相手のテンションを疑ってしまう。あ、いや。これも作戦か…。

 スレード隊は地中の地中から迫る敵と地上に出て攻撃を加えている『岩壊三式』に翻弄され陣形が崩れている。

 接近戦が得意なモリガンは地上に出ているもう一機を相手にしているが、他の敵二機は味方がいる中の地中で動き回っているのでデルクロイ、レイーヌなどは狙いをつけられないでいた。

 つまりこの目の前の隊長さん。俺に指揮をさせないつもりだろう。

 だが、そんな時の為の…。

「<パルクス、トリットは隊長と戦っている機体へ攻撃、デルクロイは離れていろ。その他はモリガンの援護をしろ>」

 と、グリゼアの声が響く。

 指揮ができる人間は一人だけじゃないんだよ。


「<んげ!?>」


 目の前の吉永とかいう隊長は慌てたように声を上げた。

「<デルクロイ。私の所注意しつつ、武器を構えておけ>」

 と、グリゼアからデルクロイに指示が入る。なるほどな…。

「<じゃぁな!>」

 吉永はパルクスとトリットが着く前に地中に潜ってしまう。厄介だなあの機体…。だが、もう一機倒させてもらう。

「<デルクロイ、私の所に敵が来た。移動するから敵地中に向けて撃て!>」

 と、レイーヌが。

「<おう、了解!>」

 そうデルクロイが答えて砲をグリゼアとミューイの機体『栄華』の居る方へ向けた。

 『栄華』は愚鈍そうな図体だが、ホバークラフトにより見た目以上のスピードを出しながら移動をした。

「<敵、ミサイル発射!地中より出ます!>」

 ミューイが言い終わる前に地中からミサイルが顔を出したが、それと同時にミサイルは爆発した。


「<ううぇぇ!?吉永隊長!砲撃支援機にビームや実弾を打ち込まれてやられたようです!>」

 相手である吉永隊の隊員が悲痛な声を出す。


「これで2機目!」

 俺はそう言うと、持っている剣にビーム粒子を纏わせ敵機がいる方向へ移動する。


「<うわぁ!>」

 そうモリガンが相手をしていた『岩壊三式』から声が聞こえた。

 モリガンは吉永隊長とは違う地中に潜ったばかりの機体に目をつけ、刃を突き立てたのだ。


「<た、隊長!足が!足を刺されましたぁ!>」

 どうやら運よく足に剣が刺さり動きを止めたらしい。

「<なんだと!?待ってろすぐに…拙い!>」

 吉永隊長が駆けつける前に俺の機体は高くジャンプした後、相手に突き立てた。

「<ひぃぃぃ…隊長、申し訳ありません…>」

 相手の悲鳴がオープンチャンネルで聞こえてくる。なんでだよ!

「これで3機目」

「<ちっ!>」

 吉永隊長は悔しそうに舌打ちをした音が聞こえてくる。なんでこんなところまで丸聞こえにしてあるんだろう…。

「<調子に乗るなよ!>」

 吉永隊長は俺の機体の前に飛び出し、再度格闘戦に持ち込もうとする。

 俺は既に剣を引き抜いているので、構える。

ガゴン!

 飛び出し、空中で吉永隊長の『岩壊三式』が不自然に左腕から始まり体を捻る。

「<何!?>」

 吉永隊長の驚愕の声が聞こえる。

「<隊長、大丈夫ですか?>」

 あ、レイーヌが狙撃をしてくれたんだな。

「あぁ、大丈夫だ。これで4機目!」

 俺は迷わずバランスを崩した吉永隊長機にモリガンと一緒に剣を突いた。よし、反応が消えたな。

 最後に地中に潜った機体に目をやると、デルクロイが両肩の上に飛び出ている大口径ビーム砲からビーム粒子を放った。地中とはまったく別の方向へ…。

「?」

 不思議に思いデルクロイが放ったビームの方角を見ると、3つの点の内1つの反応が消えたところだった。

 8対8だからな後3機いたはずだよな…。

 どうやら後からやってきた3機は俺達が使う『雷牙』の後継機『GBW-07太刀風』だったようだ。レーダーにはそう反応が出ている。

「<ひぃぃぃ…>」

 相手の機体から声が響く。なんでこいつらオープンチャンネルで会話しているんだ??

 あ、デルクロイがまた地中に潜んでいた『岩壊三式』を砲撃で吹き飛ばして今度はトリットとリズリーがビームソードでメッタ刺しにしてる…。これで6機目か…。


「よし、後は太刀風2機と指揮車だ!今度はこっちから向かうぞ!」


 そう俺が指示を出した4分後、俺達は相手を全滅させることに成功した。


 スレード隊被害0

 吉永隊破壊8+指揮車1


 圧倒的な結果に終わった。


「<なるほど、吉永隊を倒したか…だが、彼らを倒して満足してもらっては困るぞ>」

 と、通信が流れてきた。この声は赤林大将だ。まぁ、素人ではないにしろ遊び半分だろ絶対。

「<高性能な通信傍受機能を装備するその機体のおかげで、敵の次の手が丸分かりだっただろうからな>」

 あれ?もしかして今まで吉永隊の声が聞こえていたのは傍受していたからなのか?

「<諸君にはこれから更なる試験をしてもらう>」

 なんだ?これから第二ラウンドでもするつもりなのだろうか…。

「<前方より敵反応多数!『太刀風』15、『雷牙』4!雷牙は全てノーマルですが、太刀風は半分ほどが追加装備の強化タイプのようです!砲撃型、格闘型、高機動型、狙撃装備もあるようです!あ!航空機も投入してきているようです!数8>」

 ミューイが全員に早口でそう伝えてきた。

 おいおい、絶対おかしいよこの対決。なんで雷牙の試験なのに向こうも同じく雷牙を出してきてるの!?それに航空機って…。

「くそっ、仕方が無い。全員戦闘態勢!パルクスはグリゼアとミューイを守れ!」

「「「了解!」」」

 全員の声が聞こえ、俺達は攻勢に入る。

「俺とリズリーは航空機を落とす!他は地上機に対応しろ!」

 俺はそう指示を出し、空中へと飛び上がった。これ地上戦のテストじゃなかったっけ?

 とにかく片付けるのであればさっさとやった方がいいな。


 まだ向かってくる航空機よりも高度は下であったが、俺は指示を出す。


「リズリー。風系魔法で航空機の進路を妨害しろ」

「<了解ですわぁ!>」

 リズリーが魔法を唱えて、空中上で気流の乱れが発生する。


 あ、相手の航空機部隊が見えた!

 やはり速さを重視した航空機であるため俺達がいる領域に到達するまでが早い。


 航空機が目の前まで来てミサイルを大量に発射していく。

 だが、俺とリズリーは空中でミサイルを迎撃及び回避して曲芸を見せる。

 俺もミサイルを発射したが、敵も上手く回避する。が、リズリーが設置した罠が効いた機体があり、気流の乱れに機体をブラつかせ、合計2機がミサイルの餌食になった。


 何とかミサイルを避けた機体もリズリーと俺のアサルトライフルで次々と撃破判定をもらっていった。


「残り4機だな」

 俺は逃げ回りながら何とか攻勢に出ようと頑張っている航空機に対して牽制をかけつつ策を考える。

 純粋な高速戦闘では不利になるかと思われた空中戦であるが、意外と使えるBWであったため確実に相手を追い詰める事ができた。


 見ると、下で頑張っているスレード隊のメンバーも敵を確実に倒しているようだった。

 この機体強すぎるんじゃないか?

 だが、数が多すぎる。下から相手の航空機の援護だろうか、それにしても遅すぎるが5機ほどのBWが上昇してきた。

 BW同士の空中戦か…。


 そう思っていると、通信が入った。


「<全員演習を中止せよ!>」



 何事だ?

 演習に参加していた全員がそう思っただろう。

「<繰り返す。全員演習を中止せよ!>」

 赤林大将からの通信であった。


「<現在惑星付近に強制ワープを行おうとしている不審な船団をとらえた。既にスペースコロニー艦隊、軌道衛星上防衛艦隊が動いているが、我々惑星部隊も出撃準備にかかれ。各機演習モードから実践モードへの切り替えを忘れるな!>」

 え?敵!?…クソッ。

「スレード隊、我々も戦闘体制を整えろ。輝明さん、この機体達使わせてもらいますよ!」

 俺の通信を聞いているかどうかは分からないが、一応俺は輝明さんに許可を貰う。

「<あぁ、勿論大丈夫だよ。そもそもその機体は君達が今後扱う予定だから問題ないよ>」

 と、輝明さんから返信があった。

 そうと分かれば話は早い。後は敵が来るのを待ち構えるだけだ。

「<というか、防衛戦に参加してくれるのかい!?こちらとしてはありがたいが、できれば無茶をして欲しくはないんだが…>」

 輝明さんから再び通信がはいり、そう心配そうに言ってくれた。

「ははっ。輝明さん、俺は前世では軍人でした。危ないと思ったら引きますよ。皆良いか?」

「「「「「「「「<了解であります!!!>」」」」」」」」

 と、スレード隊全員から通信が入った。

「<わかった…。無茶だけはしないでくれ>」

 輝明さんはそう言って通信を切った。


 俺は地上に残されていたスレード隊のメンバーが俺とリズリーが居る高度まで上昇してきている事を確認しながら気を引き締めた。



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