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第64話 再び宇宙へ


 追悼を終え、俺達が会場を出たのはお昼近くであった。


 外の広場を見て1年前の光景を思い出す。


「今年は静かだな」

 と、隆は言った。

「ハッ!去年はあのバカみたいな団体がいてうるさかったからな。一斉検挙でもされたんじゃね?」

 達也は会場前の公園を見ながら冷たくそういった。


 隆が言う通り、1年前は会場前の公園で反学校派の生き残りの連中が抗議デモをしていた。

 彼らも懲りない奴らである。


 2年前のあの事件で世間から非難をされたのは羽射刃暗の連中と反学校派の連中であった。


 銃を持ち、学校へ押し入り、生徒や市民を虐殺した恐ろしき人殺し集団として世間に公表された。

 連中の鎮圧には一ノ瀬家が手を回したらしいが、別に問題ないだろう。

 普通、五頭家は今回のように日本政府に手を貸したりはしないが、ヴァルカ残党軍の件も関わっている可能性もあった為、今回は特別に手を貸したらしい。


 公表された結果、反学校派を支えていた自称正義の活動家の弁護士等比較的それなりの肩書きがある者の内半数は見事に手のひらを返した。だが、もう半分は自分が騙されていたなどと頑なに認めず、活動は続けた。つまり、勢いを失ったとはいえ、完全に反学校派の勢力を潰すことはできなかった。


 しかし、ここ1年活動を率いていた者達は消えている。


 不思議な事に、突然の病や事故、失踪が続いたのだ。


 本当に不思議だよね。



……。


 五頭家へちょっぴり恐怖を感じてしまった。


 達也が言う通り一斉検挙ならどれだけ良かったことか。




 今の会場前の広場は報道陣や追悼に来た者のみで、反学校派の連中はデモなどしていない。


 平和になったものだ。



 そんなことを考えていると、

「どっかで昼飯食べてくか?」

 と、達也が提案をしてくる。

 追悼の会の後だというのにノリが軽いなぁ。

「どこでもいいけどなぁ~」

 と、隆。

「お・す・し~。回らない方~」

 と、気の抜けた声を発するミューイ。

「馬鹿かお前は!」

 と、隆はミューイの頭を叩く。

「うぅぅ…」

 悲しそうにするミューイに、レイーヌは、

「はぁ。お寿が食べたいなら回る方に行きましょ」

 と、言ったところで、昼食は回転寿司になった。

 ちなみに兄の竜也と純ねぇちゃんは既に帰っていった。新婚夫婦の時間を邪魔するなんて野暮な真似はしないよ?


 そして所変わって回転寿司屋。

 心なしかレイーヌは目を輝かせている。

 あれ?レイーヌは社長令嬢だから普段もっといい握り寿司を食べていると思うのだが…。あ、回転しているのが珍しいのか!

 確かに機械で回っている握り寿司を見ると、俺もテンションが上がる。


「いやぁ~。しかし、また麗奈さんと一緒に外食できるとは思わなかったなぁ~」

 と、達也は鼻の下を伸ばして言った。

「ほんとほんと!」

 と、隆も同様に鼻の下を伸ばしている。

 おい。二人共レイーヌが俺の婚約者ってこと忘れているんじゃないだろうな?

「はぁ…」

 見ろ。ミューイが呆れ顔をしているぞ?


 俺達5人は大学も一緒で普段よく一緒に行動している。

 正確にはミューイの同級生である外岡とのおか 美菜みな花田はなだ あやもである。彼女達も一緒の大学だ。

「え、えぇ。そうですね」

 レイーヌはその状況に困惑しつつ引きつった笑顔で返事をした。

 レイーヌは優しいなぁ。


「ところで、これからの予定ってどうする?」

 と、隆が思い出したかのように言った。


「う~ん。どこに行こうか?一昨年は海、去年は山。今年は海にする?」

 と、達也は言ったが、残念ながら俺達(俺、レイーヌ、ミューイ)は別の惑星に行くんだよなぁ…。

 余談であるが、俺達は長期連休の旅にいろいろな所へ行く。


「竜生はなんか行きたいところあるのか?」

 そう隆が聞いてきたが、どこに行こうかなんて全く考えていなかった。俺は惑星『ガ五』に行く事で頭がいっぱいなんだ。


「あえて言うならば遊園地とか?」

 と、俺は提案したが、


「「却下!」」

 なんと達也と隆が同時に拒否してきた。

「な、なぜだ!」

 俺は特に変な事は言っていないと思うぞ!?


「あのな?一応俺達全員で遊びに行けるところを考えているんだ。何でお前と麗奈さんがイチャイチャしている姿を見なけりゃならん?」

 そう呆れたように言ってくる隆。

 それって何処に行っても一緒の事が言えるんじゃないか?


「そうだぞ!竜生」

 と何故か偉そうに言う達也。なんなんだよ!

「全く。油断も隙もあったもんじぇねぇ」

 などと隆はブツクサ文句を言いっていた。

 なぜ海や山だといいのだろうか。

「他に案がないのであれば海にするぜ」

 と、達也は言う。

「ヘイヘイ。それでいいですよー」

 俺はぶっきらぼうにそう答えておく。

「それじゃぁ、私は美菜と彩に伝えておくね~」

 と、ミューイは言った。

「予定はこれから4日後だ!」

 と、元気よく言った隆。

 残念ながら俺達スレード隊はその頃宇宙だろうな…。


 そんな事で夏休みの予定を決めた俺達は解散をした。




 そして4日後…。




 俺は今海…ではなく宇宙に居る。


 あれからレイーヌと水着を買ったりするデートをしたが、買った水着を実際に使うのは身代わり人形であるためなんともテンションが上がらない買い物だった。

 レイーヌの水着姿が見られないのだ。これほど残念な事はない!あ”あ”あ”あ”あ”!


 …そして今は輝明さんが所有する戦艦の中である。宇宙戦艦を個人で所有するとかもはや輝明さんはよくわからない存在である。


 パタパタと子供達が走り回っている姿を確認する。うん、輝明さんの息子の幸輝君、鬼一郎さんの娘の魅香ちゃん。そしてグリゼアの息子の一之君だ。

 実はもう二人、鬼一郎さんと、鬼一郎さんの息子で魅香ちゃんの弟が来る予定だったが、どうやら『覚醒した』とやらで来なかった。

 どうやら姉程ではないが弟君も結構な能力を開花させたらしい。それにつきっきりなため、鬼一郎さんは来ることができなくなってしまったのだ。


 そんなわけで今回は輝明さんとスレード隊、そして子供3人の旅となった。



 惑星『ガ五』。正確には『地球・ガ五』というらしい。変な名前だ。

名前の由来は地球特殊能力機関『ガルド』と特殊能力一族『五頭家』の共同管理惑星だったためらしい。

 元々の名前は数字や文字を並べた単純な名前だったらしい。(例えば『A-001』のような)

 正式に一部の地球人達の物になったのでつい最近正式に名前をつけたらしい。俺の感覚が間違っているのかもしれないがセンスの欠片も無い名前だ。


 その惑星を宇宙から見た第一印象は、地球によく似ていた。海も多いが緑も多い。だが、不自然にぽっかりと茶色く円なった場所が所々にあるという印象だ。

 あれが演習場になるのだろうか。


 早速空港に降り立つと、そこにはかなりの人間が出入りをしていた。

 空輸されている物資の積み込み物がちらりと目に入るが、どうやら植物の苗木のようだ。まだ植えるつもりなのだろう。

 今まで行って来た惑星とはまた違いがあるので目に入るものが珍しくキョロキョロとしてしまう。あぁ、やはり看板には日本語表記のものがあるんだ。

 あれ?なにか違和感が…。



「あの。輝明さん、ここって軍港ですよね?」

 と、俺は輝明さんに違和感がある事を伝える。

 周りにいる人達は軍服姿だし、飛び立つ航空機は明らかに軍用だ。極めつけはBWも飛び立っている。

 ちょっと変わった点とすれば苗木が沢山運ばれていたところだろう。

「ん?そうだよ。やっぱりワクワクするだろ?」

 輝明さんはそう肯定した。

 俺達が異星へ降り立つ際圧倒的に軍事基地の確率が多いなぁ。


「え?あぁ、それもそうなんですが、なんで植物の苗木をわざわざ軍で取り扱っているんですか?」

 俺がそう言うと、輝明さんは納得したように、


「あれは軍事訓練スペース用の苗木だよ。樹木が多いところでの戦闘訓練をする時ようの木々が必要だろ?」

「なるほど。そういう場所も一から作らなくてはいけないんですね」

 地球であれば、木々がある場所を有効活用すれば言いだけの話だが、ここにはそれがないのだろう。元々荒廃していた惑星という話であったから、木々すら見当たらなかったのかも入れない。


「おっと、そろそろ出口だ。ここだよー」

 輝明さんと出入り口を出ると、そこには軍用トラックや装甲車が止まっていた。

 出入り口にはズラっと軍服を着た兵士達が一列に並んでいた。練度は高そうだ。


「お久しぶりです。清堂 輝明様!」

 と、一際階級が高そうな人が出迎えてくれた。

 日本人顔だな。あ、日本人か。

 他の惑星で出迎えてくれる人物が同じ日本人ってのもなんだか違和感が有るな…。


「やぁ、赤林あかばやし大将。久しぶりだね。今日から僅かな間だがよろしく頼むよ」

 そう輝明さんは言った後、俺達の方を見る。

 大将なんだ。めちゃくちゃ階級高い人が出迎えに来たな。


「ほぅ。彼らが例の?」

 と、赤林大将といわれた人物が俺達を見てポツリと言った。

「えぇ、そうです。元々BWを扱っていた軍人だったので、飲み込みも早かったですよぉ~」

 そうニヤっと笑い輝明さんは赤林大将に話した。

 それを聞いた赤林大将もニヤリと笑顔を作る。あ、これヤバイ顔のやつだ。なんか碌でもない事に巻き込まれそう。

「ふっふっふ。それでは行きましょう」

 赤林大将はそう言って俺達を案内した。


 何だかよろしくない予感をしつつ俺達は訓練場へと向かった。

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