第63話 二年後の世界
それから2年が経った。
2年後の夏である。
俺とレイーヌと達也と隆は同じ大学に入り、ミューイも1年生としてこの年の春に入学した。
大学は勿論輝明さん達五頭家の息がかかった大学である。
達也と隆は俺がこの学校へ行きたいと言ったら、二人もついてきてしまった。
そこそこ有名な学校であったため、二人は必死に勉強をしていたが、なんとなく巻き込んでしまったのではないかと言う罪悪感がある。
しかし、その罪悪感はすぐに消える。
二人は、
「「え?また俺達三人で遊んだほうが楽しいじゃん!」」
と言いやがった。
おい!大学を何だと思っていやがる!
最初はこの大学が何をする学校なのか全くわからなかったのだが、ひとまず人体実験などはされなかった。
俺達スレード隊は既に進路は決まっており、それぞれの役割も既に決まっている。
いや、正確には俺とレイーヌとミューイだ。
他のメンバーは順調に仕事をこなせているようだ。
仕事の内容は勿論リール連邦軍に居た頃と一緒でBWのパイロットだ。
しかし、BWのパイロットといえど乗る予定の機体がリール連邦で使用していたものとは格段に性能が違うし環境も違う。
主な訓練環境は宇宙であった。
一応俺達大学組もバイトという事でBWのパイロットをしているが、バイトで巨大ロボットに乗って戦闘訓練するっていろいろとおかしいよな。
この二年で変わったことといえば、俺と兄の竜也との関係は一応修復はできたと思う。
ただ、一番のニュースとしては、なんと兄の竜也と純ねぇちゃんが結婚した事だ。
本当に義姉になるとは思わなかったよ…。
どうやら竜也は俺との二年前の対話でいろいろと吹っ切れたらしい。
大学を卒業したら直ぐに純ねぇちゃんと結婚をした。1ヶ月前の話である。
そして大学二年生の夏休み…。
俺は久しぶりに輝明さんに呼ばれて今では馴染み深い神埼ホテルの会議室へと足を運んだ。
「やぁ!久しぶりだねぇ、皆。今日は皆にうれしいお知らせだよ!」
相変わらず妙なハイテンションで集まった俺達にそう言った輝明さんは笑顔で立体映像を映し出した。
もうお決まりのパターンだ。
「ははっ。今日はどんなものを見せてくれるんだ?」
と、仮にも雇い主にでかい態度でそう聞くデルクロイ。
見ろ。グリゼアが呆れ顔だ。
「ふふん。今日は皆を実機に載って地上訓練をしてもらおうかと思っているんだ」
実機訓練…BWに乗るのだろうか。
「ほぅ。地上訓練か…」
と、モリガンはニヤリと笑う。
BW乗りは全員俺を含めて驚いている。
何せ今まで実際にBWに乗って行う訓練は、宇宙訓練のみであり、地上、空中、水中はやったことが無かった。
シミュレーターでは何十回もこなしているが、やはりそろそろ実際に各条件で動かしたかったのだが地球でそんなことをしたら大騒ぎになってしまう。
「いやぁ~。つい最近いい惑星を手に入れちゃってねぇ」
と、とんでもない事をいい始める輝明さん。
「わ、惑星を手に入れたんですか??」
レイーヌも驚いて質問をした。
「うん。惑星といっても元々荒廃していた惑星なんだけどね?許可貰って馬鹿みたいに腐葉土ばら撒いて植林とかしてたらだんだんと復活しちゃったようで…価値上がる前に買取申請しようとしたら宇宙連邦からタダでもらえちゃった。いやぁ、バイオテクノロジーって偉大だね!」
と、うれしそうに輝明さんは言っていた。
「元々五頭家やガルドとかの地球人が管理している宇宙ステーション群があった場所だったからほんとうれしい話だよね。ってか、今まで無料で借りていた状況から正式に僕らのものになったってだけだから、感覚では全然変わりないんだよね~」
そう説明を付け加えて輝明さんは言った。
輝明さんが言った宇宙ステーション群には、かなりの規模の戦力と人口がいる。
なんと人口8,780万人の日本人が暮らしているという事実を知った時にはさすがに驚いた。
え?何でそんなに日本人が進出しているの?
国際組織だかのガルド管轄の各国あわせて(日本人以外)の人数も3億人と聞いた時には更に驚いた。つまり4億人近い地球人がそこにいるのだ。
まさか地球人がそんなにも宇宙に進出していたなんて…。
戦力は無人艦も合わせて艦船数3千隻という莫大な数が揃っていた。
聞くところによると惑星には既にガルド、五頭家関係の地球人半分ほどの人たちが10年程前から移民しているらしく、宇宙ステーションに居るもう半分は惑星の新住宅完成待ちか宇宙ステーションに住み続けたい人のどちらからしい。
更に今後各宇宙に散らばっている地球人達も希望があればそこの惑星に移り住む予定らしい。
『各宇宙』である。各惑星ではなく各宇宙だ。どんだけいろんな場所にいるんだよ地球人!
それはさておき、今回演習の話が出たのは荒廃した(既に荒廃から立ち直っているが)惑星『地球・ガ五』が正式に地球人のものになったので、いちいち申請しなくてはならなかった惑星内での戦闘訓練が自由に行う事ができるということになった。という理由らしい。
今まで現地の防衛隊員のみが使用していたが、今後五頭家やガルドの地球人ならばどこの所属でも使用できるようになったとの事。
輝明さんのよほどこの事がうれしかったのか、一日中テンションが高めだった。
「もちろん、学生組の皆は行きたい人のみだから強制ではないよ。ちなみに地球での生活に関しては心配しないでいいよ。また身代わり人形をマリーさんに用意してもらうから」
是非とも行きたいのだが、身代わり人形は大丈夫なのだろうか…。いまだに慣れないんだよなぁ。
ちなみにあれからマリー・フーさんやラゼルト・フーさんはちょくちょく日本に来ていたりする。半年に1回くらいのペースで。
流石に俺もマリーさんやラゼルトさんがかなり年上という事をようやく自覚してきたので、心の中での呼称もさん付している。
フー親子が地球へ来る理由は情報局との合同調査ということだ。
五頭家への疑いが未だ晴れてはいないというわけではなく、調査は地球へなぜ俺達が転生されたかを詳しく再調査しているとのことらしい。
情報局との調査同行はラゼルトさんが殆ど行っている。マリーさんは…。遊んでいる。
その度に息子のラゼルトさんにめちゃくちゃ怒られている。本当に大人げない150歳以上…いや、もう160歳以上の方である。(正確な年齢は今でも不明だ。調べるのも怖い)
ハッ!?今寒気が!?
そうそう。この2年で五頭家関係についてわかったことも多い。
2年前の事件での関係での一つ目は日本国政府との関係である。
日本国政府を始め、世界とのあらゆる政府は宇宙連邦の存在すら知らない。
極希に存在を知る者がトップになったりするが、基本民衆には知られてはいない。
日本のお偉いさんからは五頭家は昔からある名家で、様々な方面で影響力が大きい存在として認識されているようだ。
五頭家は政治に直接介入はしないが、協力したりはするらしい。情報操作等も平気でやる。
協力内容を他にも挙げるとすれば、事件捜査の協力である。
ここで二つ目の五頭家についてわかった事の話になる。
二つ目は一つ目に関連して、政府の依頼で協力する事件捜査についてである。
『佐々木刑事』
この方は五頭家と協力して事件捜査をする存在であり、宇宙連邦の事は知らない人だ。
てっきり宇宙連邦の事やヴァルカ残党軍の事を知っている人と思っていたのだが、違っていた。
他にもわかったことがあるが、キリがないので一旦終了とする。
そんなこんなで、俺の夏休みのスケジュールは進んでいった。
出発は一週間後である。
その前に俺は…いや、俺達はこの一週間の内でやらなくてはならないことがある。
会議があった3日後。俺は達也、隆、ミューイ、レイーヌ、そして竜也と純ねぇちゃん夫妻と一緒に広大なホールの中の椅子に座っていた。
ここでとあるものが開かれている。
『第二回音熊市集団暴力事件被害者追悼の会』
そう。二年前に起こったあの忌まわしき事件の被害者達を追悼する会が開かれていたのだ。
他のスレード隊の皆や五頭家の皆さんは俺達とは別の場所に座っているはずだ。
先程、佐々木刑事も見つけた。
追悼者の名簿の中には勿論長谷川君も居る。
写真の中の長谷川君は笑顔である。
そういえば俺の腕の中で死んでいった時は二回とも安らかな顔であった。
苦痛の表情を浮かべて旅立つ事がなくてよかった。
彼は最期に立派に戦って死んでいったのだ。
現代日本でそんな事を言えば非難の嵐であるが、どうしても前世の記憶や感情がある俺にとっては彼の最期に現代日本の感覚とは違う感想を持ってしまう。
未だ長谷川君を含め、多くの人の敵は取れていない。
小岸 愛理。
あいつはあれから地球に来ていない。
地球への警戒網が宇宙連邦や五頭家等によって強化された事もあり、ヴァルカ残党軍すら見かけることも無かった。
もっとも、カトリーヌ自身やカトリーヌ級の力の持ち主が到来した際、警戒網が役に立つかはわからないそうだが…。
だが、愛理は姿を隠したわけではないようだ。
つい最近聞いた話であるが、あいつ日本人を誘拐したそうだ。
詳しく聞くと、あいつは誘拐した日本人を操って別の銀河で暴れたらしい。
宇宙連邦国内ではなかったが、友好国で起きたので宇宙連邦が動いたそうだ。
愛理はそのまま逃げてしまったとのことだ。非常に残念である。
もし、次に愛理と対峙する機会があるならば、俺が直接引導を渡したい。そう思った。
―――――。
犠牲者の名前が次々と読み上げられ、会場内はすすり泣く声がいたるところから響く。
いまだ乗り越えられていない人も居るのだ。当然だろう。
目の前には老若男女様々な人達の目に涙が浮かんでいた。
「あれから2年なんですね」
一緒にいたレイーヌはそうポツリと呟く。
「あぁ。2年経ったんだ」
2年前の夏。この音熊市はいろいろとおかしかった。
教育委員会による虐めのもみ消し。
羽射刃暗による無差別テロ。
反学校団体によるテロ。
闇や暴力が一時期支配をしていたこの街。
犠牲は大きかったが、今は安定した街になってきていると思う。
「おっと…」
俺は目の前から歩いてくる人達が居たので道を開けた。
あぁ…外国人も居たんだ。
あの時のニュースは世界中に衝撃を与えたみたいだからなぁ…。もしかしたらあの時の被害者に外国人の身内が居たのかもしれない。
歩いてくる一人は日本人の男子高校生。あれ?あの制服この市の高校じゃないな。
それにしても、2年前は俺もあんな感じだったのかな。と、歩いてくる男子高校生を見て思う。
男子高校生はそのまま歩いて俺の横を通り過ぎていった。
彼もきっとこの出来事を乗り越えて自分の道を進むのかもしれない。
さて、俺もそろそろ行こうかな…。
「…前田君。来てくれてありがとう」
「!?」
あれ!?今明らかに長谷川君の声が聞こえた!!?
「どうしました?竜生」
と、慌てる俺を見てレイーヌが心配して声をかけてきてくれた。
皆がいるので、オーヴェンスとは呼ばない。
「え?あ、今長谷川君の声が聞こえたような…」
後ろから聞こえたようだが、もちろん後ろに長谷川君はいない。なんだったんだ!?
「ちょっと、竜生さん。怖いこと言わないでくださいよ」
と、ミューイが苦笑いをする。
「ん?その長谷川君って例の竜生が前居た学校で仲が良かった奴で、2年前のテロで死んだ奴だったよな…」
隆が思い出したかのように言った。
「あ、相変わらずそういうオカルト能力もってんのな竜生…」
達也は若干引いてしまっている。お願い!引かないで!あなたの妹さんの夢の件は嘘なの!
「う…。き、気のせいかもな…」
本当になんだったんだろう。
うん、きっと長谷川君が天国から語りかけてくれたんだよ!そうしよう!




