第61話 妖怪VS宇宙技術
レイーヌが見た飛行物体は、清堂 幸輝が出した輸送兼探査機であった。
その機内での会話。
「捜索目標発見。紀崎 魅香と生体反応一致。隣に居る人間も神埼 麗華の画像データと一致。保護対象発見」
「隣の妖怪を『むもも』鬼動隊第16部歩兵中隊副隊長と確認」
「音声による照合も一致」
「こちらに向け、メッセージを発しています」
「解析中。解析中」
「解析完了。周りにいる妖怪は保護対象とむもも副隊長を襲っているとのメッセージ」
「状況確認完了。むもも副隊長の証言を裏付けるものであると判定」
「敵対妖怪に向け攻撃攻撃開始」
「「「「「攻撃開始」」」」」
「出撃出撃攻撃攻撃」
「了解」
「了解」
「了解」
「了解」
「了解」
ロボット兵達は次々と機外へと飛び出して行った。
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ババババババ!!!
ピュンピュンピュン!
いきなり飛行物体から何体もの人型の浮遊物体が飛び出てきたかと思えば、敵対する妖怪達に向かって銃撃を開始しました。
実弾やビームを撃ってきます。
「な、なんだぁああああ!?に、人間共が攻めてきやがったのかぁあああ!?!?」
いい気になって襲ってきたあいつは、現在かなりうろたえています。
「ギヤァアアア!!」
「ギィィィィィ」
「ピャァァァァァァ!!」
私達を囲んでいた妖怪たちは木っ端微塵になりながら死んでいきます。
「おぉお!あれは幸輝の出したロボット部隊だな!」
そう魅香ちゃんはそう嬉しそうな顔をしながら言います。
なるほど。あれは幸輝君が出したロボット兵と兵器達でしたか。
輝明さんと同じように巨大な自己空間を持っているようですね。
「舐めるなよ!お前ら、あの空中に居るでかぶつを叩き落せ!」
おや?まだ元気があるようですね…。
な!?
ブウウウウウン。
ブウウウウウン。
ズシーン。
ズシーン。
伏兵がまだ居ましたか…。かなりの数ですね…。
羽が生えた虫のような妖怪。
同じく羽が生えた爬虫類系の妖怪。
そして、地を歩く3mはある間抜け面の妖怪。
餓鬼や地を這う昆虫系の妖怪も次々と姿を現します。
これでは、いかに強力な兵器を有していようと、物量で推し負けてしまう…。
巨大飛行物体も、私達を回収しようと降りてきましたが、空中を舞う妖怪達に阻まれ再び上昇してしまいました。
「撤退しつつ回収してもらいましょう!」
「わかりました。先生」
「むもも!」
二人とも私の意見に賛成し、敵の数が少ない後方へと除除に下がります。
「逃がすかよ!うわっ!?」
ピュンピュン!
バシバシ!
あの生意気妖怪は私達を追いかけようとしますが、空に居るロボット兵に撃たれて追いかけられないようです。
プシュー!
ドォォォオオン!!
プシュー!
ドォォォオオン!!
3mの巨大妖怪は飛行物体から発射されたミサイルで体を吹き飛ばされていきます。
しかし、小型の飛行昆虫妖怪には苦労しているようです。
私達は退路を作りながら山を降ります。
空中からの援護もあり、比較的追っ手に苦しむ事はありません。
しかし、退路の先の妖怪達は私達も積極的に倒さなくてはなりません。
私は銃で弾数を気にしながら確実に仕留めます。
それにしても、横目でみると魅香ちゃんの活躍には目を見張ります。
今日早速扱い方を習った火炎系の魔法…いえ、妖術ですね。を、使いながら刀を巧みに扱い、素早く敵を切り刻んでいきます。
時代劇で見る殺陣よりも速く、迫力があります。
あの小さな体の何処にあのような力があるのでしょうか。
よし、かなり敵の妖怪達の数が少なくなってきました。
これであの飛行物体に乗り込んで…。
「自爆します!」
え?
ズドォォォオン!
空中で味方のロボットが爆発してしまいました。
なんで??
よく見ると、他のロボットも空を飛ぶ妖怪達に捕まり身動きが取れない個体がいくつか存在します。
「自爆します!」
ズドォォォオン!
「自爆します!」
ズドォォォオン!
身動きが取れなくなったロボット達は纏わりつく妖怪ごと自爆を選ぶようです。そうすることで少しでも敵を減らそうとしているのでしょうか。
これでは援護が居なくなり、飛行物体も私達を回収できません!
これは本格的に拙い状況になってきました…。
「自爆します!」
ズドォォォオン!
また一機自爆をしてしまいました。
本当に拙い!!
あ!
更に私達に追い討ちをかけるような事態を目にしてしまいます。
前方の妖怪が少ないと思われたエリア。そのエリアの先に森があるのですが、そこからワラワラと妖怪が出てきました。
絶対絶命です。
これでは退路もありません。
魅香ちゃんの方を見ると、魅香ちゃんも冷や汗を流しながら厳しい目で森を見ています。
「むもも!むもも!」
むももさんは何を言っているか分かりません。多分あれでしょうか。諦めるな!とか言ってくださっているのでしょうか。
魅香ちゃんだけでも守らないと…。
そう思った矢先、
パシューン!
パシューン!
辺りがフラッシュを発しられたように一瞬明るくなりました。
どうやら上からの光のようです。
「あ…」
私は思わず笑顔になってしまいます。
「幸輝…!」
魅香ちゃんも声を震わせながら幸輝君の名前を呼んでします。
呼びたくなっちゃいますよね。
最高のタイミングです。
「魅香ぁー!!」
「レイーヌ!魅香ちゃん!無事かぁああ!?」
幸輝君とオーヴェンス様が別の飛行物体の扉を開け、私達に向け大声で声をかけてきてくれています。
パシューン!
パシューン!
次々と光を放ちながら飛行物体の数はドンドンと増えていきます。既に20を超えているでしょうか。おそらくワープでここまできたのでしょう。空中浮遊するロボット兵も大量に居ます。
飛行物体からは次々と翼が生えていないロボット兵達が降下してきます。
戦況は再びひっくり返りました。
あ、空中にもっと大きいのがあります。あれは飛行艦船でしょうか…。
森から出てきた妖怪たちは数多くの飛行物体や艦船の攻撃でバラバラになっていきます。
銃弾が雨のように降り注ぐ光景なんて初めて見ました。
「魅香ぁ!」
と、幸輝君が飛行物体から飛び降ります。
あ、まだ高い!
スチャ!
大丈夫だったようです。身体能力が高いですね。
「幸輝ぃ~!幸輝ぃ~!」
おやおや、魅香ちゃんは幸輝君に抱きついて泣いちゃってます。
緊張の糸が切れちゃったのかな?
今まで大人顔負けの立ち振る舞いをしていたけど、それはちょっと無理をしていたのでしょう。
「ははっ。魅香、大丈夫だった?ふふふ」
相変わらず幸輝君は満面の笑みです。
彼の笑顔で救われる事でしょう。
しかし…、
「もう安心していいよ~。魅香を虐めた奴は~」
と、幸輝君は言った後、
「みんな殺すから」
ひっ!?こ、怖い!
こ、幸輝君の笑顔が…邪悪になりました!
「レイー…ヌ!?」
私の近くに駆け寄ってきてくれたオーヴェンス様も幸輝君のただならぬ気配に驚いてしまったようです。
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俺と幸輝君はこの集落を拠点とし、行方不明のレイーヌと魅香ちゃんの捜索をする事にした。
最初に入った民家なんて既に近代化されてしまい、SF世界に居るようだ。
外ではロボット兵が忙しなく動いている。
「もっと捜索隊を増やしたほうがいいかもしれない…」
「そうなの?どの位増やせばいいですか?」
俺の呟き一つ一つを聞き逃さないようにしているのか、幸輝君はずっと俺の側にいて俺がロボット兵にしている指示を聞いている。
「うぅん。あれだけ危険な妖怪が居るとなると、もっと捜索隊を多めにしておいたほうが良かったかもしれない。輝明さんは幸輝君に制限をかけたようだけど、状況によってそれは大きく変わってくるものだ。今回はある程度大量にロボット兵や輸送機…だっけあれ?」
「そうだよ!」
「そうか、ありがとう。コホン!輸送機を出したほうが良い遠方用に航続距離が長いものも出したほうがいいと思う」
俺がそう言うと、幸輝君は、
「戦艦もあった方がいいのかな?」
と、言って来た。
戦艦?海はないけど…。あぁ、そういえばこの世界には空飛ぶっていうか宇宙を駆け巡る事ができる戦艦があったなぁ。
「幸輝君。そんなものがあるのかい?」
「あるよ!おっきいのと中ぐらいのと小さいのどれが良い?」
「ん?サイズに違いがあるのかい?」
もしかして…。
「幸輝君。小さいのを空中に出せる?」
「はーい!出せるよ!」
幸輝君はそう言うと、空に向かって手を振った。
現在は家の中にいるのでモニターを見てみると、そこには宇宙軍艦が浮いていた。
あ、これ駆逐艦だわ。多分。
これはあれだな。軍艦を全て戦艦って勘違いしているパターンだな。
「幸輝君。これは多分駆逐艦だ。幸輝君が持っている軍艦の中で、情報収集や機動力があって小回りが利く艦はどんなのかな?」
俺がそう聞くと、
「駆逐艦っていうんだー!えっとね、小さいこの駆逐艦が前田先生が言う通りの力があるみたい!」
そうか。ならば、
「駆逐艦も10隻位出しちゃおうか。もう少し捜索範囲を拡大しよう」
「はーい!前田先生!」
そう言って幸輝君は次々と駆逐艦や輸送機、ロボット兵を出す。
「<緊急連絡。緊急連絡>」
と、ここでいきなりモニターに連絡が入った。
「<神埼 麗華並びに紀崎 魅香を発見。ただし、敵対勢力と戦闘をしている模様。発見した部隊が援護をしています>」
「な、なんだって!?」
やはり俺達の時と同様に妖怪に襲われてしまったか!
「<『むもも』鬼動隊第16部歩兵中隊副隊長も一緒のようですが、少々戦況は不利のようです>」
誰だよそいつ!
「先生!」
「あぁ。助けに行こう!」
俺と幸輝君は庭に出て、幸輝君が目の前に出現させた輸送機に乗り込み、出したばかりの駆逐艦や輸送機と共に助けに向かった。
「距離はどの位だ!」
俺は近くのロボット兵に聞くと、
「ワープ使おう!ワープ!」
と、幸輝君は言って来た。
そうか。そういう手も使えるのか!
「よく言ってくれた幸輝君。よし、全機全艦ワープしろ!目標レイーヌと魅香ちゃんの所!」
「了解!」
ロボット兵はそう言って輸送機のボタンを押す。
ヒュン!
俺達は大部隊と共にワープをした。
ワープ後は虐殺ショーであった。
森から出てくる妖怪を蜂の巣にし、山から下りてくる妖怪を木っ端微塵にした。
「魅香ぁ!」
おやおや、幸輝君は飛び出して魅香ちゃんの所へ行ってしまったよ…。あらあら、抱きついちゃって。フフフ。幸輝君、魅香ちゃんの事が好きなのかな?おや?魅香ちゃんもまんざらでもなさそう…って!今この高さから飛び降りたの!?
俺はもう少し高度が下がってから飛び出し、レイーヌの側へと駆け寄る。
「レイー」
俺はそう避けんでレイーヌに駆け寄る。恋愛ごとならこの俺も負けていないつもりだ。
しかし…、
「もう安心していいよ~。魅香を虐めた奴は~。みんな殺すから」
「ヌ!?」
ぴゃ!?
こっわい!何あれぇぇぇ!?あれが今まで天使の微笑みをしていた幸輝君の顔なの!?!?




