表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/81

第59話 餓鬼

「ここに居ると危険なのかな?移動したほうがいい?」

 情けない事に俺は幸輝君に聞くことしかできない。そうすることでしか今は情報収集ができないのだ。


「とりあえず僕がお札を貼りなおしておいたよ!この前、琴音っていう女の子の友達に沢山貰ったんだー」

 お札を貼った?

 改めて家の中を見回すと、幸輝君の身長くらいの高さにお札が貼ってある箇所がいくつかあった。


「一応妖怪とかから守ってくれるみたいだけど、魅香ちゃん達を探す?」

 そう幸輝君が聞いてきた。

 答えは勿論決まっている。

「あぁ。探しにいこう。ただし、幸輝君。君はこの家に残っていなさい。外は妖怪で危険ならばここに居たほうがいい」

 俺はそう幸輝君の目線に俺の目線が来るよう足を折り曲げ語りかけるが、

「でも、前田先生武器とかないんじゃないの?」

 と、言われ、早速行動がどん詰まりになった。

 あ、いや、待てよ?

「いや、大丈夫。俺は魔法が使えるんだ。知っているだろ?」

 そう言って指先から火を出してみせる。ちょっとこの部屋が明るくなった。あ、囲炉裏がある。この家やっぱりかなり古い時代の家だな。


「僕なら銃を出せるよ?」

 幸輝君はそう言ってポンと拳銃を出現させる。ただの拳銃じゃない。未来的なデザインのレーザーガンだ。

「えっと、悪い妖怪が出たら逃げなきゃいけない時もあるかもしれないんだよ?」

 俺が再度説得しようとすると、

「僕は浮くことができるよ?すごい速いよ?」

 と、幸輝君は浮いて見せた。

 はい、俺よりも強いことカクテーイ!

「う、うん。分かった。その代わり危なくなったら直ぐにここまで逃げるからね?」

「はーい!」

 ちょっと自信を失くしながらも俺と幸輝君はレイーヌと魅香ちゃんの捜索に乗り出した。




 現在俺達は勝手に入っていた古い民家から出て、集落を散策していた。

 手には幸輝君が出してくれたレーザー式拳銃がある。


「ってか、なんで妖怪界に集落があるんだ?」

 と、俺は歩きながら呟く。

 それに対して幸輝君が、

「多分すっごい昔に妖怪退治の基地として紀崎の家の人達が使ってたんだと思う!」

 と、答えてくれた。

「そうなのか…。そうなると、ここはもう管理しなくてもよくなった土地なのか?」

 と、俺は言いながら散策を続けた。


 幸輝君はヒョコヒョコと歩きながら。または浮きながら民家を見回る。

 ゾンビとかが居たら危ないからもうちょっと警戒して欲しいな。

 あ、ゾンビは妖怪じゃないっけ?


「幸輝君。もうちょっと警戒しながら進もう」

「はーい!」

 幸輝君は聞き分けが良く、俺がそう言うと、俺の側まで戻ってきて警戒をしていた。かわいいな。


「さて、鬼が出るか蛇が出るか」

 俺がそう言って進んでいくと、


ガサッ!


 と、草陰から音がした。


 結構高さがある草に覆われた場所だ。


 ちょっと期待して、

「レイーヌか?魅香ちゃんか?」

 と、言ってみる。


 すると、


「ウガァアアアアアアア!」

 と、ちっちゃい鬼みたいなものが出てきた。

 身長は幸輝君と同じ位だろうか。


「出てきたのは蛇じゃなくて鬼だったね」

 などと、幸輝君は言っている。そうじゃない。


「くっそ!」


ピュンピュン!


 俺は迷わず引き金を引き、小鬼を倒した。ってか、倒れた。あれ?そういえば現代兵器で倒せるもんなの?

 あれか?レーザーガンだからか?

 いや、レーザーガンだからなんだってんだ。光属性なのか??光属性だから闇属性っぽい妖怪に効いたのか?


「と、いうか倒してよかったのか?いや、明らかに襲ってきたような…」

 俺がそう呟いていると、


「大丈夫だよ!だってこいつ今僕達を殺そうとしていたから。殺気っていうのかな?そういうの向けてきたもん」

 と、幸輝君が言った。すごいな。そんな事までわかるのか。


「そうか。ふぅむ、こういうのを見ると、やっぱりここは妖怪界なんだなっていうことを感じるよ」

 俺はそう言いながら子鬼の死体を確認した。

 触ってないよ?呪われたとかになったら嫌じゃん?


「餓鬼が出てきたっていうことは、ここは一応妖怪の縄張りなんだね!てっきり悪い妖怪がこの辺にいなくなったから紀崎さんとかの家の人がいないんだと思った」

 と、幸輝君は言っていた。

 あぁ。こいつの名前は餓鬼っていうんだ。

「どっちにしろ警戒しなくちゃいけないってことだよね?」

 俺がそう聞くと、

「うん、そうだね。あ!ほら、沢山来たよ!」

 と、幸輝君は指差した。

 幸輝君の指差す方向には、餓鬼が10匹…いや、20匹…いや、それ以上集まってきていた。まだ距離は遠いが拙いな…。


「う…。後退しながらしとめていこう。こう沢山障害物があっては回り込まれたら大変だ!」

 と、俺は幸輝君に言ったが、


「僕が空中から倒していくよ!先生は地上から攻めていこうよ!」

 と、提案してきた。

 何その空爆的な発想。

「で、できるのかい?」

「もちろん!」

 幸輝君は笑顔でそう言った後、空中へ浮かんで、

光剣こうけん!!」

 と、言って二本の光る剣を自身の周りに浮かせて飛んでいった。

 二本の光る剣はビームを発射し、上から餓鬼を仕留めているようだ。


「俺も負けてはいられないな…」

 俺は身体強化の魔法を使い、反射神経も強化してレーザーガンを撃ちまくる。

 つくづく攻撃方法が魔法だけじゃなくてよかったよ。こんなところで魔力切れなんて状態になったら目も当てられないからな。


「ギャ!」

「ギギ!?」

「グゲ!」

 餓鬼達は断末魔を上げながら次々と倒れていった。

 よし、順調だ。


 グオォォォオオ!!!


 ん?なんか変な音が聞こえたような…。


「先生!なんか向こうの森の辺からでっかいのが来る!」

 と、幸輝君が叫ぶ。


 何だでっかいのって!?


 大体餓鬼も倒しつくしたので、チラっと森の方を見ると、何か大きい塊が木々の間から飛び出した。


「グガオオオオオオオオオ!!!!!」

 出たぁぁぁああああああ!!!

 何あれぇぇぇぇぇ!?


 牛と人間の老人の顔がくっ付いたような3mはあると思われる生物が現れた!

 いや、生物じゃなくて妖怪か!?


「公民館のぉっぉぉおおお!!!掃除当番はぁぁぁぁああああん!!」


 なんかなんの脈略もない日本語話しながら突撃してきたぞ!?


「行っけぇ!」

 幸輝君が一本の光る剣を飛ばす。すると、剣は人面牛の体を貫通し、再度戻って再び貫通する。


「ぐぎ!?」


 お?人面牛には効果はあるようだ。

 幸輝君は同様の攻撃を繰り返すと、


「うがあぁあああああ!?来るも行かぬも結果はいっしょぉっぉぉおおんおんおん!」

 と、人面牛はそう意味不明な言葉を言いながら倒れた。


 やったのか?

 あ、これフラグ?



 …。ピクリとも反応しないな。


「先生!やっつけたよ!」

 と、幸輝君は降りてきた。あ、やっつけたのね。良かった良かった。フラグは回避した。

「すごいぞ!良くやった!」

 俺は頭を撫でながら幸輝君を褒める。

「えへへ」

 と、幸輝君は笑顔を浮かべていた。

 さっきから笑顔のままだな君は。まぁ、絶望に染まっているよりかはいいけどさ。


「はぁ、それにしてもここは危険がいっぱいだな…」


ピュン!


 俺はそういいながら目に付いた餓鬼を撃ち殺す。

「うん。僕も兵隊さんを出せればちょっとは楽になるかと思うんだけど…」

 ここで初めて幸輝君は難しい顔をする。

「兵隊さん?」

 俺はなんのことかと思い、聞いてみる。

「えっとね。兵隊さんっていうのは、僕のお父さんから貰った兵隊さんだよ!普段は何でも兵隊さんに頼っていちゃ駄目だって言われたんだ!この前もちょっと出しすぎて出しすぎだよって注意されちゃった」

 と、一気に幸輝君は説明をしてくれた。

 だが、肝心の兵隊さんとは何なのかが分からない。


「幸輝君は兵隊さんを出せるのかい?それは今出す事は可能かい?」

 と、聞いてみる。


ピュン!


 あ、すみません。餓鬼が視界に入ったんです。撃ち殺しただけです。


「この前みたいにいっぱいじゃなければいいかもしれないけど、いっぱいってどれくらいから?」

「うぅん。とりあえず一体だけ出してみようか」

 俺はそう言ってみる。正直兵隊ってのに期待した。

 あれかな?まさか人間を作り出すってことじゃないだろうか?もしそうならば確かに兵隊を出しすぎると、戦闘が終わった後その後の措置に困る。再就職先とかを考えて輝明さんは幸輝君に兵隊の数を制限させたのだろうか?


ピュン!


 何度もすみませんねぇ。


「分かった!じゃぁ、一体出してみる!」

 幸輝君は空中に手をかざすと、自己空間からヌッと物体が現れた。


「なるほど。こういうパターンか。いや、こういうパターンであれば確かにありがたいが…」


 出てきたのはロボット兵であった。

 身長は170ちょい位だろう。

 武器を身につけ、ちょっとかっこいいデザインである。


「これって妖怪に対抗できるのかな?」

 何気なく聞いてみる。

 ほら、良くあるじゃないか。機械が霊的なパワーで操られるとか。追いかけられて逃げ込んだ車のエンジンがかからないパターンだよ。


「大丈夫だよ!妖怪にも十分威力があるみたい!」

 と、幸輝君は答えた。

 あ、はい。もうファンタジーなのかSFなのかわかんなくなってきたぞぉー!


「そんじゃ、ロボットさん!悪い妖怪倒しちゃって!」


「了解!」


「うわっ!?」


 いきなり喋り出してびっくりしてしまった!


ドンドン!ドドドン!ピュンピュン!


 ロボット兵はそのまま餓鬼達を駆逐し始めた。

 どうやらロボット兵が持っている武器はビームと実弾を使い分けられるようだ。

 と、いうか実弾でも効くのか?


「なぁ、幸輝君。妖怪達はビームじゃなくて実弾でも効くのかい?それと、もっとロボット兵を出す事はできるのかな?」

 俺がそう聞くと、

「うん。特殊な弾なんだって!ロボットの兵隊はまだ沢山出せるよ!何体出せばいいの?」

 と、答えてくれた。

 特殊な弾か…。

「う~ん。とりあえず20体?」

「わかったー」

 幸輝君は次々とロボット兵を出現させていく。最初からこれがあればよかったのではないだろうか?まぁ、子供にそれに気づけとかいうのも無理な話ではあるが…。


「そういえば、前に沢山出しすぎちゃったって言っていたけど、何があったんだい?」

 と、聞いてみた。

 輝明さんが禁止令を出したような事態だ。何か拙い理由があるのかもしれない。


「えっとね。ちょっと前、夏休みの前だったんだけど、こんな感じで魅香と琴音とかと一緒に山で霊界に入っちゃったんだ!結界とか張られて出られなくて、悪いお化けとかが沢山襲ってきたから、1万体のロボット兵とか無人のBWでやっつけちゃった!空飛ぶ戦艦も出したよ!」

 大盤振る舞いである。

 そりゃ規制されるわ。

 ちょっと悪霊に同情しちゃったぞ。


「え…それじゃあ、悪霊とかその結界の世界とかは?」

 俺は恐る恐る聞いてみると、


「爆発しちゃった!山の一部もも爆発して木がなくなっちゃったんだ!」

 笑顔で言い放ちやがった!

 えぇぇ…超デンジャラスじゃ~ん。

 うん。輝明さんが規制した理由が分かったよ。


「なるほど…。今回は気をつけような!」

 要はあんまり出さなければいいのだ。

「はい、先生!」

「うん。元気がよろしい」


 この後、しばらくピュンピュンドンドンと銃撃音がこの集落で鳴り響いた。


 どんだけいたんだよ餓鬼。







「No.03異常無し!紀崎 魅香様発見できません!」

「こちらNo.14異常無し!同じく紀崎 魅香様、及び神崎 麗華様発見できません!」

 ロボット兵達が次々と報告をしてくれる。


 残念ながらこの集落周辺には二人は居ないようだ。


「場所を移すか…。しかし、あの森へ入っていくのは少々危険だな。幸輝君。もう少しロボット兵を出せるかな?」

 俺はさっきの心の誓を破棄して幸輝君に相談する。


「出せるよー!どれだけ出す?」

「う~ん。ヘリコプターみたいに空中から探せる乗り物はないかな?」

「あるよ!」

 あるのか!なんでも揃っているな!


「じゃぁ、その乗り物を5、6機出せる?」

「出せるよ!出すね!」

 幸輝君は目を輝かせながら乗り物を出してくれた。


 おぉ…。これはヘリコプターというよりかはもっと進化した空中浮遊ができる大型車両のようだ。

 簡単に言うと、ローター部分がないヘリだ。

 羽の代わりに四つの噴射口がある。


「じゃぁ、探してきてね!」

 幸輝君がそう言うと、6機の機体は浮かび上がる。

 ん?各機体に4体ほどロボットが飛びながら付いていったように見えるが…。

「なぁなぁ、幸輝君。あの乗り物に付いていったロボット兵達は?」

「護衛だよ!こういうのには護衛が必要なんだって!」

 徹底しているなぁ。


 捜索用の機体達は夕暮れの空へ飛び立って行った。


 そういえば、先ほどから夕暮れからまったく夜にならないな…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ