第56話 宇宙連邦軍親衛隊登場
3日間前田一家は今だホテルで寝泊りをしていた。
それはデルクロイの一家やグリゼア、トリット、モリガンも同じである。
リズリーとパルクスは毎日のように市内を駆け巡っていた。
今日は3日前会議で話があった客人の宇宙連邦人が来る日だ。
俺には一応前日に午前9時からいつもの会議室で。という話がきている。
現在の時刻は8時40分。
そろそろ移動をしておこう。
俺はそのまま会議室に行こうとし、ホテルの扉を開ける。するとそこには竜也の姿があった。
ちなみにホテルでは、父と母の2人部屋、俺と竜也はそれぞれ1人部屋を与えられている。
目の前の竜也に俺は驚かされたが、どうやら竜也は俺の事を待っていたらしい。
…そうだとしたらノックぐらいすればいいのに…。
「やぁ、兄さんおはよう」
俺はとりあえず挨拶をした。
すると、竜也はぎこちなく、
「あぁ、おはよう」
と返してきて、
「一緒に行くか…」
と、言った。
え?一緒に行くの!?
てっきり別々に行動するかと思いきや一緒に行くとは竜也もなかなか勇気があるな。下手すれば敵だと思われていたんだろ?俺。
「へ?あ、うん」
俺はそんな情けない声を出した後兄と一緒に会議室へ向かった。
会議室では既にリズリーとパルクスとミューイ以外のスレード隊隊員とマリーの息子ラゼルトと鬼一郎さん、邦治さんと知らない老人が座っていた。
あの老人が宇宙連邦関係のお偉いさんだろうか。マリーやラゼルトと同じく地球人に似ている老人だ。頭髪は全て白髪で、蓄えている髭も白い。
「みなさん、おはようございます」
俺がそう挨拶をすると、皆挨拶を返してくれる。その後、鬼一郎さんが立ち上がり鬼一郎さんの隣に居る人を見て、
「紹介をする。私の隣に居る方は『一ノ瀬家 現当主 一ノ瀬 重松』さんだ」
おっと。五頭家関係の人だったのか。
なんかこれでもかってくらい偉い雰囲気を出しているな。
よくよく見たら軍服ではなく和服だから連邦軍とは違って日本人関係であることは明白だったな。
「お初にお目にかかります。『前田 竜生』と申します」
「ん!?りゅ、竜生の兄『前田 竜也』です」
今竜也はかなり驚いていたな。もしかして一ノ瀬家当主を知っていたのか?
その後、自宅から来たミューイも到着し、後は宇宙連邦軍からの人達を待つだけになった。
すると、ガタッと扉が開き、輝明さんとマリーの他に知らない男が4人部屋へ入ってきた。
おや?今日のマリーはラゼルトと同じく連邦軍の青い軍服だ。いつもの私服ではない。
ガタッ!
ラゼルトが慌てて椅子から立ち上がり敬礼をした。入ってきた人達は結構上の階級なんだな。確かラゼルトは大佐だったな…。あれ?その上!?
俺達も全員立ち上がり彼らが自分達の席の前に立つのを待つ。
その後輝明さんから簡単に、
「宇宙連邦軍からいらっしゃった方達です。それでは自己紹介をしましょうか」
と、挨拶をする。
ここで彼らの挨拶になった。
「おはようございます。私、宇宙連邦軍親衛隊本隊所属『テデラ・パリス』准将です」
テデラ・パリス准将は30代後半といった顔立ちだ。なんというかマリーやラゼルトと一緒で地球の白人に似た風貌だ。
眼鏡をかけており、優しそうな感じだ。
軍服の色は宇宙連邦軍の青色から白へと変更したものだ。
それにしても親衛隊と言ったが、なんの親衛隊だろうか?宇宙連邦軍の親衛隊ってなんだろうか?
「私は同じく宇宙連邦軍親衛隊本隊所属テデラ・パリス准将の部下、『ノーナル・レ・ルゥ』大佐です」
こちらはまさしく異星人といった感じだ。黄土色の肌を持ちトカゲ顔である。年齢なんて分からない。
パリス中将と軍服は同じく白色だ。
「私は宇宙連邦軍情報部第五課所属『カンツリー・ランツリー』大佐だ」
と、今度は顔立ちは地球人に似ているが、肌の色が水色。髪の色が深緑の軍人が言った。
年齢は地球人から見て50代といったところか…。体格も大きく目つきが悪い。性格が悪そうだ。
情報部と言っていたところから、おそらく彼が竜也に変な事を吹き込んだのだろう。
軍服はマリー達と同じ青である。
「同じく情報部第五課所属『マチナカ・ゲゼンプール』少佐です」
こちらは好青年という感じである。こちらは日本人に近い顔立ちである。少々肌の色が濃い位だ。種族としての色ではなく、単純に日焼けかもしれない。年齢は20代後半かな?
軍服はやはり青だ。
以上の連邦軍から来た人たちの紹介が終わり、俺達の紹介をした後全員席へと着き話し合いが行われた。
「すみません」
と、ここでグリゼアが手を挙げながら言った。
「はい、テューリーさん。ご質問ですか?」
輝明さんはそう言って、グリゼアの発言を許可する。
「すみません。そちらの白い制服の方々は宇宙連邦軍親衛隊という方々でしたが、情報部の方々も宇宙連邦軍の中の組織ですよね?大変言いにくいのですが、同じ軍の内の組織ですと第三者としての立場にはなることはできないのではないでしょうか?」
グリゼアははっきりとそう質問をした。
「そうだな。そこんとこはっきりさせておかないと公平に話し合うことができないぜ?」
トリットもグリゼアの意見に乗っかりそう言った。
「はははっ。確かにそうですね」
パリス中将は苦笑いをしながら輝明さんの方を向き、
「清堂様。ご説明お願いできますでしょうか?」
と、輝明さんにお願いした。
「はい、わかりました。では、スレード隊の皆様になぜ同じ宇宙連邦軍内の組織の方々に第三者として来ていただいたか説明をいたします」
そう言って輝明さんは説明を始めた。
「まず、宇宙連邦軍親衛隊というのは、国内の対ヴァルカ残党軍組織という一面も持っています。そして今回惑星リョーキューで起きたヴァルカ残党軍による戦闘の原因は宇宙連邦軍情報部内部にスパイがいた事が原因でした」
輝明さんがそこまで言うと、情報部のランツリー大佐が一瞬顔を歪めた。
輝明さんは気にせず続けて、
「親衛隊は国内の対ヴァルカ残党軍という立場なので、当然情報部に捜査が入りました。警察や軍の保安隊も入りましたが、ヴァルカ残党軍専門は親衛隊の方が上でしてね。結果的に情報部の何名かを逮捕する事に成功しました」
「つまり、親衛隊の皆様は情報部も私達地球人やスレード隊も調査対象なので今回の件にピッタリな組織だったということですか?」
レイーヌがそう言うと、
「はい。まったくもってその通りですね」
と、輝明さんがにっこりと笑顔を作って答えた。
「なるほど。どちら側も疑っているのですね。そういうことであれば問題なさそうですな…」
グリゼアは輝明さんの回答に満足したようだ。
「では、早速話を始めましょう。パリス准将お願いいたします」
そう輝明さんが言うと、
「はい。かしこまりました。まず、今回の話し合いにて議長的な役割を私が持たせていただきます」
と、パリス准将が言った。
あぁ、輝明さんは今回進行役ではなく、こちら側になるわけか。
「今回の問題点といたしましては、同盟関係にある五頭家へ極秘裏に連邦軍調査部の人間を送り込んだという点です」
と、パルス准将が言った。あ、情報部の人たちが不機嫌な面になった。ランツリー大佐は露骨に顔に出ている。
「同盟関係でありながらスパイのような真似をするのはどういうことか。というのが地球側の意見ですが、いかがですかな?ランツリー大佐」
パルクスがそう尋ねると、ランツリー大佐は、
「いくら同盟関係であろうとも、ヴァルカ軍が関わっている状況では調査せざるおえないでしょう。それにスパイのような真似とはいささか心外ですなぁ。五頭家の方々は以前我々に調査協力の依頼をしていただいていたではありませんか。今回の件は単純に調査の継続をしていたという事にすぎませんよ」
と、ランツリー大佐は小馬鹿にしたような態度でそう言った。この人はこういう態度じゃないといられないのだろうか…。
その発言に対し、マリーが手を上げて反論をした。
「しかし、その件は解決したのでありませんか?五頭家はヴァルカ軍と関係は無いと」
それに対しランツリー大佐は、
「確かに。以前はそう結果が出ましたが、念の為調査を継続していただけですよ?確かに秘密裏に動いていたのは問題かもしれませんが、そもそも秘密裏で無ければこれだけ自由に動けませんでしたよ」
ん?ランツリー大佐の言っていることも分からんでもないぞ。ただ、やられたこっち側はたまったものではないけどね。
「宇宙連邦軍は宇宙連邦国家の民を守る義務があるのだ。いかなる小さな疑問も慎重に捜査しなくてはならない」
と、ランツリー大佐は言った。
おんやぁ?これは大義名分だ。どうしたものか…。
すると、今度は輝明さんが挙手をし発言をした。
「確かにヴァルカ残党軍の脅威は我々も存じておりますので、言っていることは理解できます。ただ、その事に関して戦場に民間人を誘導するのはどうかと思いますが?」
この一言でランツリー大佐は苦虫を潰したような顔になる。
ん?戦場に民間人を誘導した?どういうことだ?
輝明さんは更に続け、
「一昨日結果が出ました。やはり東音熊高校での暴動事件の現場に前田 竜也君を誘導したのはあなた方調査部の人間ですね?それもランツリー大佐。貴方が直接前田 竜也君を誘導し、報告をさせていた」
なんの事だ!?
俺は慌てて竜也を見ると竜也は黙って目を閉じていた。
ランツリー大佐は忌々しいという目を輝明さんに向けている。
「ど、どういうことですか!?大佐!」
ランツリー大佐の部下、ゲセンプール少佐が輝明さんの言葉に驚き慌ててランツリー大佐に確認を取る。
「本当の事ですか?ランツリー大佐」
パリス准将は冷静にランツリー大佐に問う。
「えぇ…。それは間違いありません…」
ランツリー大佐は観念したかのように溜息をついてパリス准将に言った。
「た、大佐。我々の目的はあくまで前田 竜生の調査をさせる事であり、決してヴァルカ残党軍が関与している争いごとの中に民間人を放り込む事ではありませんよ!」
と、ゲセンプール少佐が言った。
これは怒れる話だな。
しかし、竜也は純ねぇちゃんの事だけじゃなく、情報部からの指示であの場所へ行っていたのか。
次に挙手をして発現したのはマリーだ。
「ゲセンプール少佐。貴方も宇宙連邦の存在を前田 竜也に伝えた後、協力を要請しましたね?本来であれば未交流惑星の住人に我々の存在を伝える事は厳禁となっているはずですが、そこはどうなっているのです?」
どうやら宇宙連邦の存在を未交流の惑星の住民に伝えてはならないらしい。まぁ当然か。宇宙からの使者が来たなんて話になればパニックになってしまう。
「う…」
ゲセンプール少佐は言葉に詰まり顔を青くした。
宇宙連邦(情報部)の立場では怪しいところを探っていた。いくら味方といえど手を抜けない。
地球側(五頭家)の立場では同盟を結んでいるのに疑って、なおかつ極秘裏に調査をしているとは何事か!
という事であるが、ここまでの状況ではどうやら宇宙連邦軍情報部の立場が危ういようだ。
情報部側はこれらの事については言い返せないようだ。五頭家側にとって不都合な事は無かったのだろう。彼らは追い詰められているようだった。
「う…ぐ。しかし、調査の仕方は問題があったかもしれないが、調査事態はするべきと私は考えている!こんな偶然あってたまるか!」
と、ランツリー大佐は荒々しく言い放った。
それに対し輝明さんは、
「それはそう思います。いまランツリー大佐がおっしゃっていた通り、調査の仕方に我々は苦情を言っているのです。調査の方は継続していただいてもかまいません。我々は原因がつかめるのであればそうしていただいた方がありがたい」
と、言った。
「う…ぐ…ん?」
ランツリー大佐は驚いたような表情をした後、納得がいかないような表情で黙ってしまった。
「ふむ…。皆様方よろしいですかな?」
パリス准将が話し合いに決着がついたと判断したようで、
「この度の件は、調査の仕方に問題ありとさせていただく。調査事態には問題はないと五頭家の方で判断しているようなので、その件は後ほど双方で決めていただきたい」
と、締めくくる。
なるべく遺恨を残さないようなやり方なのかな?これ。
ここで一ノ瀬家の当主『一ノ瀬 重松』が声を発した。
「ほっほっほ。そちらも上に早急に我ら五頭家が善か悪かを判断せよ。と迫られていたんじゃろ。今回我らに調査の連絡をしなかったのは、一度問題なしと判断した事を覆すのは連邦の立場的にも五頭家との関係上でもよろしくなかったじゃろうしな。今回の件は民間人の前田 竜也殿になにかしらの補償をして頂ければ問題無し。かのぉ?我々も今回の件で連邦とこれ以上揉めたくはない」
と、笑っていた。
いや、ちょっと怖い雰囲気を出している。
「んぐ…ご理解頂きありがとうございます」
ランツリー大佐は悔しそうにそう答えた。
「そういうわけで前田 竜也君」
と、マリーが竜也に話しかけた。
「え?は、はい!」
話の内容を眺めて放心状態だった竜也は我に返って返事をした。
「君の弟竜生君は確かに転生者だけど悪い事を考えている訳じゃないから安心してね。宇宙連邦軍は君達の味方よ」
と、笑顔で言った。
「え…。はは、はい…」
苦笑いを浮かべつつそう返した。
竜也も巻き込まれていろいろ苦労しているなぁ。
と、言うわけで会議が終わり俺達は会議室を出る。
ミューイはこのためだけに家から来たので申し訳ないと思う。だが、昼食はタダで高級レストランで食べる事ができるのでウキウキしていた。




