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第55話 前田竜也について

 他のメンバーもその事に気付いたのか、全員マリーの方へ視線を移し始める。

 なんだ?何かヴァルカ残党軍とやらの情報が分かったのか?

 それにしてはマリーの顔色が悪い。


 あれ?もしかしてさっきからの表情の硬さは俺に呆れていたわけではなく、何か言い辛い事があったからなのか?

 そして、心なしか輝明さんの表情は先ほど俺を叱っていた時よりも凄みがある。

 なんだろう?


「…いやぁ~、私も今朝情報をもらって確認したばかりなんでぇ~」

 と、マリーは言い訳のような事を言っている。

 どうやらマリーには寝耳に水の話だったようだ。


「ふぅ。まぁ良いでしょう。しかし、いややはりと言うべきでしょうか…。連邦も一枚岩ではないようですね?」

 輝明さんはそうため息をつきながら言った。

 というか、宇宙連邦という超超超巨大組織が一枚岩であるわけが無い。嫌味なのだろうか。

 しかし、輝明さんに嫌味を言わせる程の事ってどういう内容なんだ?


「えっと、皆に説明すると、実は宇宙連邦のスパイというか協力者が地球に入り込んでいたんだ」

 そう輝明さんが説明すると、


「え?あんた方もその宇宙連邦の協力者なんじゃないんですかい?」

 と、デルクロイが質問をする。もっともな意見だ。


「うん、言い方が悪かった。実は僕達宇宙連邦と協力する立場の者を監視する人達が居たってことさ」


 うん?

 ……。

 あーなるほど。


「つまり、同盟を結んでいる相手に対して監視をしていたということなんだ。地球世界でも確かに一般人を雇って状況を知るという事をしていないわけでもありません。しかし、それらは敵国にやる事。いくら宇宙連邦が大国だとしても、これはいささか対応が酷くはありませんか?」

 そう輝明さんは言ってマリーを見る。


「え…あぁ…その~…いや、私もまさかそんな事をしているとは思わなかったものでして…」


 マリーは今までに見たことが無い位動揺をしている。


「えぇ、私は別にあなたに対して文句を言っているわけではないのですよ。今まで代々我々はあなたにお世話になってきましたし、今回の惑星リョーキューの件もいろいろと助けて頂きました。命を救われた恩人でもあるのですから」

 輝明さんはそう言った後、すこし表情を和らげ一呼吸置き、

「ですからこれはあなた個人ではなく、あなたの所属する連邦軍の中に存在する我々を監視していた一派にお伝え願いたいんです。マリー・フー准将」

 と、続けた。

 あ。そう言えばマリーは准将とかいうお偉いさんだった!

「はい…」

 マリーはそう力なくうなだれた。

 それを見た輝明さんは、急ににこやかになり、

「まぁ、マリーさんにもその一派にはきつく言って下さったようですし、私としても今回の件が穏便に済めば良いと思っています」

 と、さわやかに言った。

「は、はははっ。ありがとうございます」

 マリーさんの笑顔はぎこちない。

「問題は、その協力者なんですよ」

 と、輝明さんは今度は俺の方に向かって話を始めた。

「え?自分に何か関係がある話しなんですか!?」

 そう俺は聞いた。

「うん。実はその関係者っていうのは君に関係があるんだ」

 輝明さんが言い辛そうにそう言った。

 え?まさか、知らず知らずのうちに俺自身がそういう事をしていたのか!?


「実は君のお兄さん。『前田 竜也』が協力者だったらしい」

 え?今急に兄の名前が出てきたような…?


「すみません。誰が協力者ですって?」


 俺は聞き間違いであることを願い輝明さんに問いかけた。


「残念ながらマリーさんも確認してくれた事実なんだ。君の兄『前田 竜也』は僕達と同じ宇宙連邦軍の協力者であり、君を監視していた者なんだ」


 俺の中で衝撃が走った。


 ショックを受けたというよりも歯車がかみ合ったような感覚になったのだ。


 そうであれば納得いく部分がある。


「それはいつからですか?もしかして2年位前から?」

 俺がそう聞くと、輝明さんは驚いたような顔をして。

「うん。その位の時期からだったらし。もしかして何か気付いていたのかい?」

 と、答えてくれた。


 あぁぁ…。なるほど。


 昔はそれほど仲が悪くなかった兄弟。しかし、最近…というか2年程前からよそよそしくなった兄。


 なぜか過剰に両親に迷惑をかけるな。と言い続けていた兄。


 なぜか俺がいじめられていた時助けようとしてくれなかった兄。


 純ねぇちゃんや安奈ねぇちゃん、昌さんと会おうとしたら拒否してきた兄。


 昨日学校で暴動事件が起きたとニュースが流れた時、真っ先に俺の方を見た兄。




 よそよそしくなったのは、俺の正体を知ったからだろう。


 両親の心配をしていたのは、俺が起こす行動に両親を巻き込ませたくなかったのだろう。


 俺がいじめの相談をしてもまともに取り合ってくれなかったのは、得体のしれない俺に恐怖したか監視をする為にあえて無視をしたのだろう。兄の性格上助けてくれたはずだ。


 純ねぇちゃん達に近付けたくは無い理由は俺の正体がつかめなかったからだろう。


 学校の暴動事件も俺の正体を知っていたから真っ先に俺が関係していると思い俺を見たのだろう。



「…」

 いろいろと納得いった。


「大丈夫かな?」

 と、輝明さんの声が聞こえ、肩を叩かれた。

 肩を叩かれた方向を見ると、心配そうに見るレイーヌだった。


「あ、うん大丈夫。大丈夫ですよ」

 俺はレイーヌと輝明さん両方に答える。


「兄は2年程前から俺を警戒している素振りを見せていたので、納得できたんですよ」

 と、正直に答えた。


「うん、大体その位の時期から君を監視していたみたいだね」

 と、輝明さんは言った。やはりか…。


「しかし、監視員としては結構不自然な行動をとっていましたね。なんというかバレバレとは言いませんが慣れていないというか…」

 俺がそう率直な意見を言うと、

「そりゃ、現地で雇った素人さんだからね」

 と、輝明さんは笑っていた。あぁ、特別な訓練を受けたわけではないのか…。


「おいおい、ちょっと待った。そうだとしたらちょっとおかしくないですかい?」

 と、デルクロイが声を上げた。

「確かこの前の話だと、転生先を確認できたのはリズリー、パルクス、トリット、モリガンの四人じゃなかったのか!?」

 そうデルクロイは質問をした。

「そうだね。確かに僕のところに…というか僕達地球人側に渡された情報だとそうなっていたよ。だけど本当はスレード君も転生先として確認がとれていたんだ」

 うわぁ。ということは、18年以上前から俺は監視対象になっていたのか…。


「やはり地球人側への疑いは払拭されてはいなかったということか…」

 と、グリゼアは言った。例の五頭家の関係者に転生者が多かったので宇宙連邦に疑われていた事を言っているのであろう。


「本当に申し訳なかったと思っているわ。私も前々からの調査で問題無しと言ってはいたんだけど…。指揮系統が違っている者達の仕業だったの」

 そうマリーは言った。

「今回の件でスレード君の兄、前田 竜也に対する対応が変わってくるでしょう。我々五頭家関係者が接触したとしても信用される事はないでしょう。ですが、このまま放置というわけにもいかないと考えています」

 輝明さんはそうマリーの方を見ながら言った。

「えぇ、私達宇宙連邦側の人間が彼と接触して誤解を解く。という事ですね?」

 マリーはそう頷きながら言ったが、

「そうですね。その方が良いでしょう。ただ、フー准将や准将直属の部下と接触させてしまってもなかなか信用できないでしょう」

 輝明さんの意見に、

「うぅ~ん…そうですねぇ~」

 と、マリーは頭を悩ませている。

「おそらく我々を監視している派閥に協力を仰ぐ事は難しいですよね?」

 今度は輝明さんがマリーへ質問をする。

「そう…ですね。今だ話し合いが決着していないようです」

 そう残念そうにマリーは言った。

「ならば第三者的な立場の方にご説明願えればどうでしょう?現状、前田 竜也君にはかなり歪な情報を渡しているようなので…」

「第三者ですか?う~ん…私の部下以外の調査員…?それとも宇宙連邦の外務省職員…?」

 と、マリーは頭を悩ませている。その前に、

「あのー、歪な情報って何ですか?」

 そう俺は質問をしてみる。

 それに対し、輝明さんは、

「まず、一つ目は今回君達の転生は俺達五頭家が関わっているっていう情報と、二つ目に五頭家や前田 竜生君が羽意刃暗や小岸元議員の虐殺事件、反学校派の事件、更にヴァルカ残党軍にも関わっているという内容さ」


「「「「「は!?」」」」」


 俺を含め会議室中から反感の声が上がった。

「そ、それはどういうことだ!そんな馬鹿な話、あるわけないだろう!」

 と、グリゼアは手を机に思いっきり叩き立ち上がりながら怒鳴った。

「虐殺事件はむしろ止めた方だろ!?俺達は証言できるし。ってか、宇宙連邦は記録映像とか見てないのかよ!撮ってたんじゃないのか?」

 トリットもそう言って怒っていた。

「だから問題が大きくなっているんだよ。ね?フー准将」

 輝明さんはそう言ってマリーの方を見ると、

「えぇ、そうです」

 と、マリーは答えた。

 マリーは続けて、

「今回五頭家の皆様はカトリーヌとの戦いで多大な犠牲を払いました。ヴァルカ残党軍との戦いに関しても勲章物です。それを一部の者達により我々宇宙連邦と五頭家の方々との関係が崩れようとしているんです」

 マリーが言うカトリーヌとの戦いによる犠牲というのは、俺達が惑星リョーキューへ里帰りする前に起きた小岸元議員達による虐殺が起きた時の事だ。

 あの時小岸 愛理を連れて地球から脱出しようとしたカトリーヌを止めようと何隻もの五頭家の所有する宇宙艦が破壊されたのだ。


「なにせ今回の件の調査機関の中のことなので私でも手を出す事がしにくくて…」

 マリーは疲れた表情でそう言った。

「そうは言っても一般人を巻き込むという事には賛成できません」

 と、今まで黙っていた邦治さんが言った。

 そこで輝明さんはマリーに助け舟を出す。

「ま、先ほども言ったとおり、マリーさんからも既に彼らに苦情を言ってくれてあるようですし、これ以上は追求しません。ただ、調査をするにしても我々五頭家は協力する立場にある。と思っていただきたいものですな」

「…はい」

 輝明さんの言葉でマリーはそう返事をしてこの話はここで終わった。

 しかし竜也が宇宙連邦軍の関係者だったとは…。後でどんな顔をして会えばいいんだろうか。



 とりあえず、今後の事については竜也の誤解を解くためにマリーさんが適切な人材をよこしてくれるそうだ。ついでに今回問題となっている竜也に接触した側の派閥の人も来るという話になった。

 マリーさんと輝明さんの話を聞く限り、宇宙連邦軍情報部に口出しできる組織を派遣してくれるそうだ。

 ただし、来るといっても3日程かかるとのことである。

 それまでは平穏に過ごせることを祈るしかない。


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