第46話 引越しの清堂
俺はその後、本題に入ることにした。
「ワイルーの事なんだけど、清堂 輝明さんにどうにかならないか聞いてみるよ」
と、俺は言った。
すると、
「オーヴェンス兄様。それは嬉しい話なのですが、清堂様というのは別の惑星の方ですよね?それも宇宙連邦とは別の国出身の。そのような方がどうにかすることはできるのでしょうか?」
と、アリアが不思議そうな顔をする。
「うぅん…どうだろう?相談するだけしてみるよ…」
あぁ。そういえば万能かと思っていた輝明さんは地球人だった…。リール連邦や宇宙連邦にどれだけ影響があるかわからない…。
「そうですか…ありがとうございます」
そう言ってアリアは頭を下げ、ワイルーやダルガーも続いて頭を下げた。
それから、皆が落ち着き、昼食も食べ終わりに近付き、談笑をしているた頃、執事が声をかけてきた。
「主様、清堂の方がいらっしゃいました」
おっと、輝明さんが来たか。
「もうそんな時間だったのね。楽しい時間はいつも早く過ぎ去ってしまうものね…お通しして差し上げて」
アリアがそう言うと、
「かしこまりました」
と、言って執事は部屋を去っていく。
しばらくすると、輝明さんが入ってきた。
「どうも、あ。お食事中でしたか。これは失礼」
輝明さんがそう謝罪をした。
「いえいえ、時間通りに来ていただいたのにも関わらず、こちらの準備ができてなく、申し訳ございません。例の件ですね?」
と、アリアが言った。
例の件?
「例の件とは?」
俺が不思議そうに聞くと、
「どうも~、有限会社引越しの清堂で~す」
と、にこやかに言い放った。
いきなり何を言っているのだろうか…。
あぁ、俺のへやの荷物を運び出してくれる件か!
「持って行くものがあれば預かってくれるんでしたよね?」
「へい、その通りでございやす!」
「…」
この方のノリは軽いが俺よりも強いんだよな…。
「では、俺の部屋はこっちなので…」
俺はツッコミはせず、そのまま輝明さんを案内した。
数分後、俺と輝明さん、そしてアリアとその息子達は俺の前世の私室に戻ってきて、
「それじゃぁ、どれ持っていく?いくらでも入るよ?何なら全部?」
と、言ってきた。
「大変な作業になりますよね。今日中皆のところに回るわけではないのでしょう?」
と、俺は聞いてみた。
「いや、今日中に全員の所へ行く予定だったよ」
シレッとそういう輝明さんに少しの不安を感じつつ、
「今からいる物いらない物と分けるのは少々時間がかかるかと思いますよ?全部なんて可能なんですか?」
「できるよ」
えぇぇ…。あれか?地球のテレビとかである空想上の魔法で掃除機のように吸い込むのか?
「では、その方が俺も楽なんでお願いします。あいえ、ベッドや机、本棚は要りませんね。本や机の中に入っている小物をお願いいたします」
と、俺は言ってみる。これは輝明さんをほんの少し試してみようといういたずら心もあった。なんでもありの宇宙技術ではどうやって運び出すのか気になるのだ。
きっと時間がかかるぞぉ~。
「了解、荷物は全て清堂家が管理するマンションに置いておくから、将来そこに住んでもいいし、物置代わりにしてもいいよ」
俺の将来の家まで準備してくれているのか!?将来の俺の為に投資しまくりじゃないか?
「ちょっと待ってください!俺、そんなお金ないですよ!?」
マンションの料金なんて学生の身で払えるわけがない。
「ん?あぁ。大丈夫大丈夫。宇宙連邦からスレード隊発見用予算を沢山もらっているから」
と、輝明さんは言った。
「え?そんな予算があったんですか?」
「うん。これはスレード隊への保障金というわけではなく、単純に僕達がスレード隊のお世話をする時にかかるお金だよ」
いったいいくら位なんだろう。
そんなことを考えていると、
「ほいさ」
輝明さんがそう言って手を振ると、いくつもの渦が家具周りの空間にできて荷物は吸い込まれていってしまった。
「「「「…!?」」」」
言葉が出ない。アリア達の様子を見るからに輝明さんがやった事はあまり一般的なものではないようだ。
ってか、本当にアニメのように吸い込まれていったぞ!
後で取り出す際にグチャグチャになって出てくるんじゃないだろうか?
「私達、手伝おうと思って来たのですが…」
と、ワイルーが目を点にしながら呟く。
そうだよね。そういう反応になっちゃうよね。
いろいろと規格外なんだよ地球人…いや、五頭家の人達って…。
「…輝明さんもこんな強力な魔法使えたですね…」
俺がそうポツリと言うと、
「いんや、これは科学だよ」
と、笑顔で答えてくれた。
俺、科学が何だかわからなくなってきてしまったよ…。
ひとまず、俺の荷物を片付けた輝明さんは、デルクロイとグリゼア達がいる部屋へと向かって行った。
その間、俺とアリアとその息子達とでお別れの挨拶をした。
その際、
「これ、お話していた写真やビデオレターです」
と、アリアは鞄を渡してくれた。鞄自体も何だか高級そうなものであった。
「ありがとう。世話になったな」
俺がそう言うと、アリアは不安そうな顔になり、
「オーヴェンスお兄様がお望みであるならば、いつでも遊びにいらしてもかまわないのですよ?」
と、言ってきた。やはり息子のワイルーが考えていた事を払拭させたいのだろう。
「うん。いや、そもそもあんまり来れるか分からなかったし…。まぁ、一回だけ顔を出す覚悟だったから、アリアに会えたのはとてもうれしかったよ。また機会があれば是非寄らせてもらうよ」
俺はそう元気付けるようと思って言った。
「はい。私もあえてうれしかったです。またのお越しをお待ちしております」
アリアがそう言って締めくくり、ダルガーとワイルーも自分の仕事場へと戻るため、俺に挨拶をして仕事へと向かって行った。
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グリゼアは迎賓室にて兄のヴィシュラットと会っていた。
無論、グリゼアの息子の一之も一緒である。
一之は早速ヴィシュラットと打ち解けたらしく、ヴィシュラットと遊んでいた。
「兄上。ありがとうございます」
グリゼアはそう礼を言った。
「ふむ。なぁに、いいってことよ」
ヴィシュラットはニコニコ顔で一之を肩車している。
なんと一之へ宇宙連邦軍BW『リッドⅦ』フィギュアセットも渡していた。こんなの地球で飾っておく事はできない。遊んだ後は押入れ行きである。
「それよりも…」
と、ここでヴィシュラットはまじめな顔になり、一之を床へと降ろしてリッドⅦフィギュアセットで遊ばせる。そして、
「グリゼア。一人身だといろいろと大変だろう?地球という星でいい人は居ないのか?」
そう聞いてきた。
「兄上、あいにくながら私は転生者という身です。これからスレード隊が再び発足すればそれなりに事情が通じる相手でないといけません。現在そのような人はいませんよ」
と、グリゼアは言った。
「ふぅむ、そうなのか…。しかし、いつまた前の旦那が襲ってくるのかわからないんだろう?」
不安そうにそう聞いてきたヴィシュラットに対して、
「えぇ。残念ながら私が現在住んでいる日本という国は斬首刑を気軽に行えないので、数年すれば再び世間にあいつが放たれるでしょう」
「うぅむ…。私が地球に居ればこの手で切り捨ててくれるというのに…」
グリゼアの回答に残念そうにそう言ったヴィシュラット。
「ご安心を。兄上に手を煩わせることなく、私が引導を渡します」
そう平然とした表情でとんでもないセリフをグリゼアは言った。
子供の前なのに物騒な会話である。
「ふはは。そうだな、お前であれば大丈夫であろうな」
グリゼアの性格や実力を思い出したヴィシュラットはそう言って笑っていた。
ヴィシュラット78歳。ダンディーなおじいちゃんである。
グリゼアとヴィシュラットがそんな物騒な話していると、
コンコン。
と、ドアを叩く音が聞こえ、
「どうも~引越し屋の清堂で~す!」
という挨拶も聞こえた。
「おぉ!もうそんな時間か…。もう少し話していたかったのだが仕方が無い。どうぞ!」
と、ヴィシュラットが輝明を部屋へと招き入れる。
「どもども~。あ、初めまして地球人の清堂 輝明です」
輝明はヴィシュラットへ挨拶をした。
「これはこれは。よくぞいらっしゃって下さいました」
と、ヴィシュラットは嬉しそうに輝明の手を取って握手をする。
グリゼアは何故兄がここまで嬉しそうな表情をするのだろうか?と疑問に思っていると、
「いや~。先のヴァルカ大戦の英雄といわれている『天音姫』の一族へお会いできるとは。長生きしてみるもんですな。グリゼアの帰還にも驚きましたので、ここ何日かは驚きっぱなしですぞ。わっはっは!」
と、ヴィシュラットは笑っていた。
どうやらヴィシュラットは先のヴァルカ大戦の事についていろいろ知っているため、地球人の存在もよく知っているようであった。
それから輝明はグリゼアの指示に従いオーヴェンスの私物と同じく輝明はグリゼアが地球へ持っていくものを自己空間の中に入れるのであった。
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デルクロイは息子の兄ドルーガと弟ガインツと一緒に話をしていた。
「それはそうと、いいのかお前達。戦争が終わったばっかりなのにこんな所で油を売ってるなんて」
デルクロイはそう息子達に向かって言った。
「大丈夫大丈夫。戦闘機なんてもう殆ど飛ばしてないし」
と、言い放つ戦闘機のパイロットであるガインツ。
「俺も自宅で英雄を接待しろなんていう指示が司令官から直々に来ちゃってるんだよな。英雄ってか、家の親父なんだけどね。司令官も俺達が息子だからって機を使ってくれたのかな?」
そう言って笑うドルーガ。
「そういえば、息子と言えば地球でも親父の子供が居るんだって?」
と、ガインツは初日に少し話したデルクロイの地球での生活について思い出し、聞いてみた。
「あ、あぁ…」
デルクロイは一瞬言葉に詰まりながらも肯定した。
その様子を見て不思議に思ったドルーガとガインツ。
「親父。地球の子供ってどんな子なんだ?」
恐る恐るドルーガは質問をしてみる。
「あ、いや。ちょっとな…。こんな事息子に話すことじゃないが、地球での俺の子供達は中二病ってやつにかかっちまって…」
と、デルクロイはポツリと言った。
「ん?なんだそりゃ」
中二病という言葉にピンとこないドルーガ。
「病気ってことか?おいおい、大丈夫なのか?治りそうなのか?」
病という言葉に反応してか心配するガインツ。
「そうか…中二病って言葉が通じないのか…」
と、デルクロイ。
まぁ、通じないのも仕方が無いのかもしれない。
何せこのリール連邦は魔法有りの国であり、現在に至っては超能力も横行している。リアル中二病の世界なのだ。
「いや、ちょっとアニメに憧れているって感じなんだよ。常にアニメのセリフを言っている」
デルクロイがそう説明すると、息子二人はどう言葉をかけていいのかという表情となってしまう。
「ワシ。子供きちんと育てる事ができないのかもしれん…」
と、デルクロイは落ち込んでしまう。
「そ、そんな事はないって親父。ほら俺達はまともに育っただろ?」
ドルーガはそう励ましの言葉をデルクロイへ送る。
「自分でまともとかって…」
「ガインツ!今は黙っていろ」
そして、余計な事を言われたためドルーガはガインツを叱る。
「だがなぁ…俺お前達を育てている途中で死んじまったし…」
そうデルクロイがイジケていると、
「どうも~引越し屋の清堂で~す」
と、扉の前で声が聞こえた。
「あ、もうそんな時間だったか…」
そう言って慌ててドルーガは扉を開ける。
無論、扉の先に居たのは輝明だ。
「どもども~。初めまして~おや?ダージンバーさん、いかがしました?」
輝明はデルクロイの雰囲気がおかしいことを感じ取り、心配して近付く。
「あぁ、清堂さん。問題ないぞ。それよりも私物だったかな?持って物はそんなにないから」
と、言いつつデルクロイは用意してあった箱を指差す。
「あ、は~い毎度あり~」
輝明はそう言いつつ箱を自己空間へ吸い込む。
「へい!一丁上がり~」
妙にテンションが高い輝明。
それを見たドルーガとガインツは。
「「親父、地球人は見たところあんな感じだから大丈夫なんじゃね?」」
と、口をそろえて言った。
盛大な誤解である。
「そうか~?そうかなぁ~…」
デルクロイも少しほっとしたようだ。
人種的にあんな感じならば仕方が無いと。
失礼である。
こうして誤解が解けないまま、デルクロイは息子達との雑談を終了させた。
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一通り挨拶を終えた俺達は、デルクロイとグリゼアに合流し、後のメンバーの家へ行って輝明さんの引越し作業を待っていた。
移動中、俺は輝明さんに早速ワイルーの事を相談してみた。
「なるほど。つまりスレード君はワイルーさんを辞職させたくないと?」
「そういうことです。俺の存在が彼の心を不安定にさせてしまったという気持ちもありますし、これは身内の贔屓目でもあるかもしれませんが、妹の子供を路頭に迷わせるような事をしたくないんです」
輝明さんの問いかけに俺は素直にそう答えた。
「うぅ~ん。僕がどうこうって話を付けられる立場じゃないし…。あ!そうだあの人に相談してみようかな…」
と、輝明さんはなにか思いついたようだ。
マリーさんとかに相談するのかな?
「うん、わかった。とりあえずその件については相談できる人にスレード君を引き合わせよう」
「ありがとうございます!」
話をする人はマリーさんかな?
その後、各家を回っていくと時刻は既に16時となっていた。
そういえば惑星リョーキューは地球と同じ24時間である。
地球と同じ感覚に惑わされることはない。
ただ、日本との時差は1時間程あった。こちらの方が1時間程早い。
そして、輝明さんが、
「そんじゃ、明日皆帰るけど、今日は最後に一箇所行こうと思うんだ」
と、切り出した。
「それはどこですか?」
ミューイがそう聞くと、輝明さんは、
「博物館だよ」
と、うれしそうに言った。
「博物館ですか?」
不思議そうにモリガンが言った。
「うん、博物館だよ。その前に、皆に確認しておきたい事があるんだ。これから行く博物館に行きたいかどうか」
神妙そうにそう言った輝明さん。博物館に何があるというのだろうか?
「どういうことですか?何か我々にとって不都合な…あぁ…もしや」
グリゼアは輝明さんに質問をしている途中、何かに気が付いたようだ。
俺達を博物館に連れて行くって事は、スレード隊に関連した事だろう。軍事関連…、だな。
「これから皆に行ってもらおうと思っていた博物館は、『リール国戦争歴史博物館』なんだ」
やっぱり。
「元々行く予定はなかったんだけどね。リール国から是非来て欲しいという依頼があったんだ。それで、その戦争博物館なんだけど、勿論君達が前世で死んだ時の戦いの記録もある。そして、それは結構新しく、宇宙連邦も介入した戦いとあって結構詳細にいろいろ展示されていたり、情報が公開されているんだ。その影響で、君達スレード隊は英雄視されているんだよ」
「マジっすか?英雄視されているなんて何だか照れるな~」
「わ、私達が英雄なんですかぁ!?」
輝明さんの説明で浮かれるトリットと驚くミューイ。
「あ~…っと、つまり、君達が死んだ時の状況や記録も残されているし、遺品や死んだときに使っていた武器…BWなんかも展示されているんだ」
「へぇ~。あんなでかい物が展示されているってなると、結構スペースとりますよね?」
「楽しみですぅ」
「「「……」」」
輝明さんはトリットとミューイの反応が予想外だったのか、少し困惑していた。
「ま、まぁ、そんな物もあるわけなんだけど、懐かしむのも結構だが、君達は自分が死んだ。という事実を直視する事になるんだ」
「え?あぁ、前世で死んだってことですよね?」
と、トリットが質問をする。
「その通り。あのような死に方をしては相当な精神的なショックが与えられた状態のはずなんだ。君達はそれに耐えられるか分からない。だから、行くか行かないかを決めて欲しい。もちろんそれでも行きたいという人は連れて行くし、行きたくない人はホテルまで送っていくよ」
なるほど。確かに俺は最後まで生き残ったので、全員が死んでいく様子を見ているから結構ショックがでかい。特にレイーヌが死んだ時の光景は忘れられないだろう。
だが、俺は転生し、レイーヌも転生した。そしてスレード隊全員が転生して再び集まる事ができた。
「俺は、大丈夫だと思うが…」
俺は皆を心配して見ると、
「私は一瞬の出来事だったので、あまりよく覚えていないのですよ」
と、レイーヌ。即死だったのか…。苦しまずに死んで何よりだったかもしれない。
他の皆も同じ状態だった。
ミューイやグリゼアも指揮車を宇宙連邦のBWに蹴られた時に運転席や指令席が思いっきりゆれて体が浮き上がり、首をぶつけて2人とも首を骨折して死亡したらしかった。
グリゼアから淡々と聞かされたその話に若干恐怖を覚えつつも、スレード隊全員が博物館へ行く事が決定した。




