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第29話 小岸愛理の華麗なる変身

 私の名前は小岸 愛理。

 この市の議員『小岸おぎし 利吉りきち』の一人娘。


 今まで私は不自由の無い生活をおくってきた。


 だけど、高校生活を始めてから、不愉快になる存在が居た。


 それは私が所属するクラスの問題児。泉、朝川、そして前田の3人だ。


 泉と朝川は私にとって問題は無い。私に会えばヘコヘコと頭を下げるような小物だ。


 だけど、ゴミのような存在が私の目の前でうろつくのは少し不愉快であった。


 それよりも一番不愉快な存在なのは前田だ。


 前田 竜生。以前は少し明るい奴だった気がする。今では見る影も無く根暗な存在。


 泉や朝川にイジられているけど、それがウザくてたまらない。


 そんなに嫌そうな顔をする位なら学校へ来なければいいのに。見ているこっちも不快だ。


 クラスの皆も前田イジりが始まると嫌そうな顔になって前田が居る方向から目を背ける。いい加減前田もこの状況に気が付いて欲しい。お前がクラスに居るだけでこの教室の雰囲気が悪くなる一方なんだよ!


 何度かお父さんには話した事がある。お父さんはその度に、

「それは前田という男子が悪い。弱い奴は弱いままなんだから大人しく従うべきだ。それにしてもクラスの雰囲気が悪くなるのを察する事ができない程空気が読めないとはな…。まぁ、そういう奴だからそんな目に遭うんだろう…」

 と言っていた。

 まったくもってその通りだと私は思った。


 あぁぁ…。前田 竜生という存在は本当にウザい。


 早く消えてくれないかな…。このままあいつと卒業アルバムに一緒に写るなんてごめんよ。





 その願いは意外な状態で叶うことになる。





 きっかけは夏休み前の一つの事件だった。私は忘れる事ができない不愉快な事件…。


 その日のお昼後の授業。前田は午後の授業に出なかった。


 珍しい事ではない。うわさでは泉や朝川のイジりが酷い時は保健室に逃げ込んでいるようだった。


 また保健室か。こっちとしては授業を気持ちよく受けられるからいいんだけどね。


 だけど、あいつはやってきた。遅刻をして。ほんっとにがっかりよ。


 思えばあの時から前田の雰囲気がおかしかった。


 医務室に行きたいとか喚いていた気がする。しかもその場所が分からないと…。保健室って言いなさいよ!




 次の日、とんでもない事が起きる。


 昨日泉と朝川の顔を見ないなと思っていたら、どうやらあの前田があの二人と喧嘩をして勝ったとの事だった。


 信じられなかった。


 どんな卑怯な手を前田は使ったのだろう。


 堂々と前田は自分の席に座っている。なんか雰囲気変わってない?


 ま、あんな三人の事なんて別にどうでもいいけどね。


 そして更に次の日事件が起きた。


 ヅカヅカと泉と朝川が前田の席にまで行って三人でもめている。


 どうやら前日の件でもめているらしいけど、はっきり言ってそんな事こんな場所で話さなくていいでしょ?


 前田も何を意地になっているのかその場から動こうとしないし、少しは空気読めよ!


 すると、泉が急に椅子を持ち上げた。


 だけどその椅子は前田に落とされるわけではなく、私のところへ飛んできた。


 後から聞いた話だけど勢いあまって手が滑ったとのことだった。


 私は額に大きな傷を作って気絶をした。


 許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない!!!!!


 前田の奴が素直に従わないで挑発するような事を言ったから泉はキレた!その事に気付かず事件後も私に謝ろうともしなかった!


 お父さんはこの事件の話を聞いて激怒した。


 直接前田の家に乗り込んでいって文句を言ったらしいけど、私に謝るどころか私を助けたつもりで英雄気取りらしい。


 信じられなかった。


 お父さんは学校に抗議し、前田を退学にするように言った。市議会の仲間にも教育委員会にも話を通したらしい。


 だけど前田は抵抗した。


 市の教育委員会が駄目ならば県の教育委員会。そして、マスコミにまでむちゃくちゃな理論を言って従わせていた。


 許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さないゆるさないゆるさないゆるさない!!!!!


 皆あいつの作り話に踊らされている!


 全部あいつのせいなのに、皆あいつの言葉を信じて私のお父さんを追い詰めて、お父さんの仕事を奪った!


 泉と朝川はちゃんと私に謝って学校を出て行ったのに!なんであいつは抵抗するの?人間の屑じゃない!?


 仕事を奪われたお父さんは酷く落ち込んでいた。


 悔しかった。私の為に動いてくれたお父さんが何でこんな目に遭わなきゃいけなかったの?


 前田だけじゃなく、世間はお父さんを追い詰めた!


 新聞もテレビもテレビのインタビューを受けている奴らもみーーーんな私のお父さんを批判した!


 私のお父さんはこの市の為に必死で働いてきたのに、皆あの詐欺師にそそのかされて掌を返したんだ!


 許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さないゆるさないゆるさないゆるさないユルサナイユルサナイ!!!!!


 前田も、マスコミも、この市の奴らも全員許さない!!




 しばらく経ってお父さんは復讐を決意したようだった。


 趣味で集めていた銃のコレクションを使い、共に仕事を奪われた仲間と泉と朝川が所属していた不良集団も使って、前田と世間に復讐をしようとしたのだ。


 偶然知ってしまった私はそれに賛同した。


 父は少し驚いていたが、最終手段として私をとっておくと言っていた。



 私も前田に復讐するチャンスがある!私は歓喜した。


 ついでにここに住む連中にも痛い目を見てもらおう。


 まず私は朝川に近付いた。


 泉は既に警察に捕まっていたため、近づけなかった。


 私は朝川に告白して恋人ということになった。ま、好きだなんて嘘だけどね。


 前田に復讐することを手伝って欲しい。と言ったら喜んで従ってくれた。


 次にクラスの長谷川に告白をした。もちろんこれも嘘である。私があの時怪我をした際助けてくれたので惚れたと言ったらまんまと信じた。本当に男って単純。


 まず、長谷川にお願いしてお父さんと前田を仲直りさせたいと言った。


 あいつ、喜んで前田を呼び出した。




 だけど失敗した。


 あいつは呼び出すだけ呼び出して前田を取り押さえるとかそういうことをしなかった。本当に役に立たない。


 お父さんはあいつを追って行き、一方私は作戦通り学校の近くにある廃工場へ行った。


 ごめんねお父さん。私どうしても自分の手で前田を殺したいの。


 次も長谷川を使って前田をおびき寄せる。


 怖いから一緒に居て!二人きりで居たいの!そう言うと本当に長谷川は一人で廃工場へやってきた。


 こいつは疑うという事を知らないのだろうか。


 前田を呼び出す事には成功したが、結局これも失敗に終わる。


 長谷川の始末には成功したけど、前田の奴がバリアみたいなのを使ってきて銃弾が全部はじかれてしまった。


 なんなのあれ!反則じゃないっ!!






―――そして、現在。


 作戦は失敗。これから朝川を使って逃亡することにした。

 忌々しい奴等め!のん気に犬の散歩や公園で遊んでいる連中を見たら一気に腹が立ってきた。

 私はこの市でお父さんに牙を向いた住人達に制裁を加えた。

 奴らは私が撃った弾で皆倒れていった。ざまぁないよね。

 後何人殺そうかしら。そう考えていると、目の前に女の人が立っていた。

 外国人っぽい。


「あれ!?なんで??」


 朝川が慌てだした。どうやらバイクのスピードが落ちているらしい。長谷川と同じで朝川も使えない…。


「面白いことになっているからついつい来てみたら、いいものを見つけたわ。うふふ。あなた、いい心を持っているわね…」


 突然目の前に突っ立っていた女が私に話しかけてきた。

「なによ!?」

 私はイラつきながら答えた。

「ふふふ。元気があるのねぇ。私はカトリーヌ。魔女よ」


 突然頭がおかしい人が目の前に現れたと思った。


「そう…。じゃぁ、魔女ならこの銃弾防いでみなさい」

 私は持っていた銃でカトリーヌとかいう女性を撃った。

「あらあら」

 カトリーヌは私を面白いものでも見たような顔をして、笑っていた。

 それよりもおかしい!何で倒れないの??


 よく見ると信じられない光景が目の前にあった。


 なんと私が撃った弾は全てカトリーヌの前で止まっていたのだ。

 前田が使っていたバリアーみたいなものではない。本当に何も無い空間で止まっているのだ。


「何がどうなっているの…?」


 私には理解ができなかった。

 前田の馬鹿はバリアーを使ってくるし、目の前の女は空中で銃弾を止めるし…。


「うふふ。分からないわよねぇ~。なら力をあげるから、もうちょっと頑張ってみない?力の使い道は自由よ?」

 カトリーヌが私の額に指を置き、カトリーヌの腕から黒い煙のようなものが出てきて私に流れ込む。

「な、なになに!?」

 私は体が冷たくなっていくような気がした。


 え?私死ぬの!?


 まだやりたい事だってある!それに復讐ができていない!


 お父さんはそのうち国会議員になって総理大臣になるって言ってた!


 私はこの国の姫となるのよ!?


 なんで今死ななきゃいけないの!?


 皆許さない!


 許さない許さないゆるさないゆるさないゆるさないユルサナイユルサナイユルサナイユル…サナイユ…ルサ…ナ…イ…キ、




キ、




キキ、







キキキキッモチイィィィイイイイイイ!!!!







「ひゃっほぉぉぉおう!!!なぁに?この感覚ぅ!すっごくすっきりするし、すっごく頭が冴えるぅ!?」

 私は体の中から溢れてくる力の感覚に酔いしれた。


「あらあら…。まさかこれほどまでに力が上がるなんて…。地球人って皆こうなのかしら?」

 カトリーヌは驚いている。地球人?どういうこと?

「自由にしていいって言ったけど、是非とも私の部下にしたいわぁ」

 部下!?

「部下って、部下になったら何か得する事があるの?私はこの国の姫よ?」

「そうねぇ…。毎日この市街で起きているような事を自分の手でできるようになるわ」

「…」

「あら?気に入らなかったかしら?」


 私は一瞬目が点になったが、すぐにカトリーヌの…いえ、カトリーヌ様の御言葉を理解し歓喜した。


「いいじゃなぁ~い、いいじゃなぁあああああい!すっばらしいわカトリーヌ。いえ、カトリーヌ様!貴方のような天才、そう出会えないわ!」


「うふふ。そう?うれしい事言ってくれるわね」

 あぁ、なんてすばらしい事を言うお方だろう。私はこの人を師として崇めよう。




「愛理…危険だ!そいつはなんかヤバい!」


 後ろで朝川がなんかウザい。


「あら?あなたは?」

 カトリーヌ様が質問をする。

「愛理の男だ!」

 平然と嘘を言うのね朝川…。キ・モ・い・ゾ☆


「あなたは男運が無いのね、愛理…」

 と、カトリーヌ様から同情の視線をいただく。

「お恥ずかしい限りで…」

 私は恥ずかしさからカトリーヌ様の顔を見る事ができなかった。

「とりあえず、あの男に生きてもらっていても仕方が無いから、殺しましょ…」


パン!


 あれ?何かカトリーヌ様言った?

 私は朝川があまりにもウザかったから銃で朝川の額を撃って殺しちゃった。


「あぁ、すみません。お話の途中に!朝川を利用するおつもりでしたか?」

「ん?いいえ、手間が省けたわ。あなた、結構才能あるわよ?さ、一緒に行きましょうか?あいつらが来る前に」

「はい!」

 私はカトリーヌ様に褒めてもらってすごくうれしかった。

 ん?あいつらって?

「あいつら。とは誰ですか?警察ならば私が…」

 今の私なら誰にでも負けない気がした。


「いいえ、愛理。奴らは自分達の盟友の約束を律儀に守っている者達よ。これがあるから地球には近付きたくないのよね…」


 カトリーヌ様がそう言い終わると急に天候が悪くなってくる。なんか黒い雲が空を覆っている。

 なんだろう嫌な感じ…。


「ちなみに、どこへ行くんです?」

「ふふふ。宇宙よ。ちょっと準備するわね」

 え?宇宙!?

 私は心が躍った!先程までの嫌な感じを忘れ、これから始まるであろう壮大な宇宙旅行物語に私は期待した!



 だけど何だろう…。空や地面から嫌な気配が近づいてくる。


「死してなお、私の邪魔をするのね…『天音あまね』!!」

 カトリーヌ様は忌々しいという表情をしながら空を見上げていた。


 本当に何なんだろう。


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