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第24話 救出作戦その2

 モリガンとの待ち合わせ場所は海であった。

 寂れた港で寂れたコンテナが大量に置かれていた。これでもまだ使うのだろうか…。

 夕日に照らされた海を見たかったが、勝手な行動をするわけにはいかない。


「ここで時間が来るまで待っていようか」

 と、輝明さんは提案をした。

 それに対し俺は、

「そうですね…。しかし、いくら前世は俺の仲間だったからといっても、殺し屋ともコンタクトが取れるとは驚きました」

 と言うと、

「ははは。協力者が多いからね。この市内でのことはその協力者の指示範囲で動いているよ」

 輝明さんはそう言って笑っていた。


 あれ?


「てっきり、輝明さんが指示をだしているかと思ったんですが、輝明さんは指示を受けていた側だったんですか?」

 今まで輝明さんがこのグループのトップであるかと思っていた。


「ん~。君に分かりやすく言うと、俺はとある地域の領主で、今回同じ旗の下の領主に立ち入って仕事をする許可や協力をお願いしているんだ。それで、こっちから何をしたいかその別の領主様に連絡して、あっち行けば仲間に会えるよー。とか、仲間に会う場所は手配しておいたよー。とか情報をもらっているんだ」

 なるほど、相手の土地を踏み荒らさないように気をつけているというわけか。


「その割には、輝明さんの配下でホテルとか営業していますよね?」

「うぅん。その辺はやっぱり君達の世界とは別の感覚かなぁ~。領主って例えが悪かったかもしれないけど、別にここで儲ける為に領主をしているわけじゃないし」

 そういうものなのか。

「ま、私の下で働けば嫌でも分かってくるようになるよ」

 そう言って輝明さんは欠伸をしてウトウトし始めた。

 外を見ると後ろから着いてきた鬼一郎さんが車を降りて煙管をふかしていた。


「このまま夜を待つのか…後1時間50分…暇だな」

 俺がそう言うと、

「隊長も少し寝てはいかがです?」

 と、リズリーが提案をしてきた。

 そうだな…。少し寝るか…。


「そうさせてもらうよ…。あ、そうだ家族に夕飯はいらないって伝えておかないと」

 俺はそう言って母親にメールを送った後、少しの間の眠りについた。





「…う。…長」


 ん?なんだ?


「隊長!起きてくださいオーヴェンス隊長!」

「うおっと!」

 どうやらリズリーに起こされたようだ。辺りは夏なのでまだ明るかったが、


「そろそろ時間ですよ」


 と、リズリーに言われて車を降り、待ち合わせ場所へ向かった。

 どうやら今回も夢の中で竜生と会うことはできなかったようだ。




 少し歩くと、着いた場所は既に使われなくなった建物だ。

 なぜ港の近くにこんな建物があるのだろう。夜になったら変なものが出そうだな…。


 中は明かりが無く、薄暗い。


 ここ最近夜なのに昼間のように明るくする道具を多用しすぎてそれに慣れてしまっていた。いわゆる電気と蛍光灯である。


「これは暗いねぇ」

 と、輝明さんは言って掌から光りを出した。あれ?掌から光りが出ているぞ!?


「これは見た事がない道具ですね…」

 と、俺は輝明さんの掌を見る。


「ん?いや、これは道具じゃないよ」


「え!?じゃぁ魔法??」

「いやいや、超能力ってやつだよ。私はこの体の様々な部分から光りを出す事ができるのさ。名は体を現すってね!明かりが輝く輝明さんってねぇ!!」

 と、言って両目からピカッと光りを出した。周囲は更に明るくなる。

 超能力??


「輝明殿…おふざけはやめて下され」

 と、鬼一郎さんが呆れている。


「冗談が通じないなぁ。もう」

 と、笑いながら懐から懐中電灯を出して辺りを照らした。って懐中電灯あったんかい!

 しかし、輝明さんは変な能力を持っているな…。魔法以外の能力を初めて見たかもしれない。


 少し歩くと目的の場所へと通じる扉を発見する。

「そろそろかな?あった、この部屋だ」

 輝明さんはそう言うと扉を5回ノックした。


「…入れ」


 と、中から声が聞こえた。


「失礼し致します」

 そう言ってまず最初に輝明さんから中へと入っていった。

 俺も続いて中に入る。


 中はやはり薄暗いが、電気の明かりが点いていた。

 オレンジ色の電球が一つ点いただけの部屋だ。


 中には木箱に腰掛けている男が一人…。

 顔面怖っ!間違いなくモリガンだ!転生してもそんなに怖い顔になってしまったのか…。


 デルクロイは筋骨隆々、レイーヌはナイスバディな美人さん。転生しても見た目は大体同じになるのだろうか?

 哀れ…モリガン。え?俺の顔?ナニソレワカンナイ。


「…お前が『清堂 輝明』か?」

 声にもなんというか威厳があるなぁ。


「その通りです。『浜口はまぐち つかさ』さん」

 輝明さんの言葉にチッと舌打ちするモリガン。


「失礼。本名はいけませんでしたね。ですが、盗聴器なんてありませんからご安心を。私もこの部屋に入る際スキャンしましたので」

 何気にとんでもない事を言った輝明さん。


「えぇっと。なんてお呼びすればよろしいんでしょうねぇ。『月夜の狼』(つきよのおおかみ)さん?それとも『モリガン・ムグ・タクトリス』さんですかぁ?」

「!?なぜその名前を!」

 モリガンはハッとした表情で輝明さんを見た。


「今回お会いした理由にもなります。スレード隊のモリガンさん」

「お前…誰だ?」

 そう言って殺気を飛ばしてくるモリガン。


「あぁ、いえ。私はあなたと同じ転生者ではありません。あなたの仲間なのはこの三人です」

 輝明さんはそう言って俺とリズリー、パルクスを前に出す。


「やぁ、モリガン。久しぶりだね。『オーヴェンス・ゼルパ・スレード』だ」

 俺の自己紹介の後にリズリーとパルクスが続く。


「た…隊長!リズリー!パルクス!生きていたんだな!」

 いやいやモリガン、俺達は一度死んでいるぞ?


「まぁ、再会を祝して食事会でも開きたいのだが、モリガン。君は今なにか厄介な仕事をしているようではないか?一緒に来て欲しかったが、大丈夫なのか?」

 と、俺は聞いてみた。


「いえ、既に仕事を辞める許可は出ています。私は政府専属の暗殺者だったもので…」

 政府専属の暗殺者!?そりゃまたすごい職に就いていたんだな。


「そんなこと俺に話してしまってもいいのか?」

 俺は不安になってモリガンに聞くが、

「隊長に、といいますか、清堂 輝明には言っても良い。という許可はもらっていますので…。どうやら上は清堂家との対立は避けたいようです」

 いったい本当に何者なんだ輝明さんは。

 宇宙連邦に協力している事がそんなにステータスになるのだろうか。


「俺は今政府の関係から清堂のところへ行けと命令されています。いったい何が起きたのやら…」

 どうやらモリガン自身もこの状況を飲み込めていないようであった。

「とにかく、今後雇い主はあんたって事になる。清堂さん、よろしくたのむぜ。俺としては前世でお世話になったスレード隊長に忠誠を誓いたいんだがね」


「えぇ、タクトリスさん。よろしくお願いいたします。まぁ、スレード君のことについては大丈夫だよ。将来的にはタクトリスさんはスレード君の下に付いてもらいたいのですけどねぇ」

 輝明さんはそうにこやかに言った。


 ん?将来モリガンが俺の下に付く?

「え?どういうことです?」

 俺がそう聞くと、


「スレード君は元々軍の一部隊の隊長さんだったのでしょう?しかもタクトリスさんの部下でもある。私としてはスレード君も私の下で仕事をしていただき、リール連邦の元スレード隊隊員を率いてもらいたいのですよ」

 おぉぉ…なんだか俺の進路にかかわる重要な話が来てしまったぞ…。


「確かに俺が前世で忠誠を誓ったのは隊長ですし、それについては全く問題はありませんが、いったい俺達に何をさせようってんです?」

 モリガンの疑問はもっともだ。俺も知りたい。


「あぁ、説明会の時、その辺の話していなかったねぇ…。簡単に言うと、地球を敵対生命体や宇宙怪獣からの防衛、それと将来地球人が宇宙進出した際の足がかり…というか下準備をしてほしい」


「「う、宇宙怪獣?」」

 俺とモリガンは目を丸くして聞き返した。

 なに宇宙怪獣って!?


「あはは。宇宙怪獣なんて地球付近や地球人管轄のエリアには出た事ないよ。備えあれば憂いなしってことだよ」

 と、輝明さんは笑っていた。

 うぅん…。この惑星の防衛と将来への準備か…壮大な仕事だな。やりがいもありそうだ。


「輝明!」

 突然鬼一郎さんが輝明さんを呼んだ。

 鬼一郎さんの視線の先には筒状の金属物がドアから投げ込まれていた。

 筒状の何かは煙を出している。煙幕!?


「よっと!」

 と、輝明さんは落ち着いて指先から一筋の光を煙を出す筒に向かって放つ。すると、煙を出す筒はあっけなく消滅した。え、何それ。

 リズリーとパルクスは入り口から慌てて離れて俺をガードする。

 敵か!?

 すると、銃を持った覆面をかぶった男がいきなり部屋に入ってきて銃を輝明さんに向かって撃った。


 パシュッ!


 音が小さい!?

 銃というのはもっと大きな音が鳴るはずだ!

 少なくともリール連邦が使っていたものはそうだった。


 銃弾は輝明さんの首に当たったらしく、

「クホー!クホー!!」

 と、輝明さんは両手を首に当て苦しがっている。

 喉から血を噴出させながら輝明さんは倒れこみジタバタしている。

 ま、まずい!早く治療を!


 そう思っていると、次々と覆面の男が俺達に向け発砲をする。


カキン!カキン!


 なんと、鬼一郎さんはどこからか取り出した剣で…いや、刀で銃弾を弾き飛ばした。

 どこからそんな武器を…ってか、すごい芸当だな!


 だが、次々と男達が部屋に入ってきて銃を俺達に乱射する。合計3人の覆面男が入ってきた。


「な!?」

 俺は思わず目を瞑るが、カキカキカキカキン!と、全て鬼一郎さんが銃弾をはじいてくれたようだった。


「クホー!クホー!くっほほい!」


 いきなりなんだこの声は!?


 変な声が聞こえたと思って輝明さんの方を見ると、先ほどまで苦しがっていた輝明さんはにんまりと笑顔を浮かべ覆面男達に殴りかかっていった。


「えい!とぉぉう!」

 ありえない速さで敵三人にパンチを贈る。

 約一秒で三人にそれぞれ一発ずつ殴っていた。

「「「ンギャギャギャギャギャギャ!!!???」」」

 敵三人はブルブル震えて倒れた。

 倒れてもなおビクビクしている。なんなんだ…。


「んじゃ、行ってくるねー。鬼一郎、後は頼んだよ」

 輝明さんは鬼一郎さんにそう言って手を振ると、入り口から飛び出していってしまった。

 なんなんだあの人!


「ギャッ!ギャギャギャ!」

「な、なんだお前ウゴゴゴゴゴ」

「ひっフミョミョミョミョ!!!??」


 輝明さんが出て行った後、外で変な声が聞こえてくる。

 まだ他にも敵がいたのだろう。


 しばらくすると輝明さんが戻ってきて、

「佐々木刑事に連絡しといたよ。すぐに来るってさ」

 と、言いながら入ってきた。


「まったく、貴方はなぜそんなにもふざけた態度を…」

 と、鬼一郎さんは呆れながら輝明さんに抗議していた。


「ん?どこら辺が?」

 と、輝明さんが聞き返す。嘘だろ??


「なぜ銃弾をまともに受ける必要がある!貴方ならば受け止めるなり皮膚で弾いたりできるはずだ!」

 と、鬼一郎さんは少々声を荒げて言った。

 って、そんな事できるんかい!輝明さんの体はいったいどうなっているんだ!

 そういえばあれだけ流れていた輝明さんの血が見あたらない。


「敵を油断させるためだよ。当たってもあの程度ならば回復できるし問題ないよ」

 迫真の演技だったなぁ…。ってか、回復したのか!?魔術っぽくなかったから、超能力の一種なのかな?輝明さんの能力は体の一部が光るだけじゃないのか…。


「そういう問題ではないだろう…はぁ…」

 どうやら鬼一郎さんは輝明さんを叱る事を諦めたようだ。


「あ、アンタら一体何者なんだ!?それにいったいなんなんだこいつらは!」

 と、モルガンは銃を構えて悪態を吐きながら倒れた男達に近付く。

「私達の客人ではないようだよ?」

「なんだと!?」

 輝明さんに言われてモリガンは驚いていた。

 慌てて寝転がっている男の覆面を取ってみると…。

「くっ。確かにこいつは俺が仕留めようとしていた奴だ。アンタの所へ行けと命令される前に政府から指示されていたが、アンタの所へ行く命令が来てから政府も別の暗殺者を用意したから行け。と言っていた…」

「あらら」

 モリガンの説明にいやに軽いノリで答える輝明さん。

「この様子だと、俺の後釜の奴はやられちまったか…。しかし、こいつらがこんなにも簡単にやられるなんて…」

 モリガンは苦笑いをしながら輝明さんを見た。


「モリガン。この人の戦闘能力は通常の人間と比べては駄目よぉ。私達からしたら化け物なんだからぁ」

 と、リズリーがモリガンへ注意をした。ってか、何気に酷いこと言うね。一応輝明さんは俺達を助けてくれたんだぞ…。


「俺のミス…だな…」

 おっと、モリガンが落ち込んでいるぞ?

「記憶を取り戻して1ヶ月…。前世の記憶が邪魔をして仕事に集中できなかった…。今回も尾行されてこのザマなんだろうよ…」


「モリガン…」

 俺は慰めの言葉を言えなかった。

「改めて、俺はアンタ…いや、清堂さんの下につくよ。こんな俺でも雇ってもらえるのか?」

 モリガンは輝明さんの方を向き直って言った。

「あぁ、もちろんだとも。君に暗殺業をしてもらいたいわけではないからね。こちらこそよろしくお願いしたい」

 輝明さんはまじめな顔をして言った。こう言っては失礼だが、やればできるようだ。


「隊長。またよろしくお願いします」

 モリガンは俺にも頭を下げた。

「あ、あぁ…。こちらこそよろしく」

 俺、まだ輝明さんの下で仕事をするって決めてないんだけどな…。




 その後佐々木刑事達大勢の警察が来くれた。状況を見て驚いていたが、俺達への事情聴取とかも特に無く、苦笑いをしながら暗殺者グループに手錠をかけて帰っていった。



 あらかた片付いたところで、

「それでは、スレード君をお家までお送りしよう」

 と、輝明さんが言ってくれた。

「ありがとうございます。あ、そうだ。リズリーとパルクス。携帯の番号交換しないか?」

 と、二人に提案した。

「まさか隊長と携帯の番号を交換する日が来るとは思いませんでした」

 などとリズリーは変な事を言っていた。

「そういえば二人はいつから記憶が?」

 聞いていなかった事だった。デルクロイのように数年前からなのだろうか。

「私達は生まれた直後からですわよぉ」

「え!?」

 リズリーとパルクスは赤ん坊の時から前世の記憶があったのか…。ならば前世と今世の記憶で混乱するような事態は無かったのか?

 ってか、リズリーとパルクスは見た目は若いが、精神年齢は既に50超えて…。


「今ぁ、隊長はぁ失礼な事ぉ考えているのかしらぁ~?」


「い、いや!そんなことはないぞ?」

 な、なんで分かったんだ?リズリーは心を読む魔術なんて使えなかったよな?いや、生まれてから更に20年以上年月を重ねれば新たな魔術も…。

「たぁいぃちょぉう?」


「ヒィっ!」

 再度リズリーが睨んできた。

 俺は何も考えてないよ!!

 俺、悪い隊長じゃないよ?


「あ、帰る前に夕飯食べなきゃね」

 輝明さんの提案で食事をみんなで食べる事になった。

 た、助かった!




「まさか隊長とファミレスで飯を食うことになるとは」

 目の前でモリガンはステーキを頬張りながら言った。


「そういえば私達軍の食堂では一緒にお食事をしたけれど、こうやって外のお店でお食事したの初めてでしたわねぇ」

 と、リズリーもハンバーグを食べながら言った。


「外で食べると言っても結局いつもパルクスが何か作ってくれたよな」

 俺も戦時中野外でパルクスが作ってくれた料理を思い出しながらピザを食べている。


「パルクスの飯か…。またキロキロ鳥のチキンソテーを食いてぇなぁ」

 モリガンは前世でよく食べたパルクスの料理を思い出しながら懐かしそうに言う。

 そういえばレイーヌがよく弓で狩ってくれたっけ。


「レイーヌが飛んでいるキロキト鳥を射って落としたのには驚いたな」

 俺がそう言うと、


「アレはプロの領域ですよ」

 と、モリガンは苦笑いをしながら言った。


「キロキロ鳥…いない」

 パルクスが喋ったぁぁぁ!!コホン。

 珍しくパルクスが喋った。あぁ…キロキロ鳥は居ないよなぁ…。


「そうだよなぁ…。ここ、別世界だもんなぁ」

 モリガンは残念そうにそう言った後、

「ホント、この世界って何なんだよ…」

 と、ポツリと言った。


「モリガン。この世界の事は後々詳しく説明致しますわぁ」

 と、リズリーは微笑みながらそう言う。

「あぁ、頼むわ」

 モリガンは素直に頼んだ。


 今回こういう風にスレード隊の…いや、元スレード隊メンバーと新しい事で思い出を作る事ができて嬉しく思う。

 前世ではこんなふうに過ごすことはできなかった。

 あのまま死なずに戦いに勝っていたのであれば可能だったかもしれないが、勝ったら勝ったで部隊が解体され、新しい所へ配属された可能性だってある。


 そう思えば今世の世界も悪くはないと思えてくる。


「輝明殿、このアサリの酒蒸しは大変美味であるぞ!」

「おぉ、うまうま」

 輝明さんと鬼一郎さんの二人と鬼一郎さんが乗っていた車の運転手は別のテーブルで食事を楽しんでいた。



 そして食事を終えたあと、俺は自宅に帰り就寝した。




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 夜。とある豪邸の一室にて。



「やぁ、君が家の娘と付き合っている子だね?」


 僕は今、お付き合いをさせてもらっている同級生の女の子の家でその子の父親に挨拶をしている。

 彼女の父親は病気かと思うくらいゲッソリとしていた。まぁ、あんな事があった後じゃ仕方がないかもしれないけど…。


「はい、お付き合いをさせていただいております『長谷川はせがわ 拓夢たくむ』と申します」

 僕は自己紹介をすると、


「あぁ、娘から聞いているよ。君は娘を救ってくれたんだよね?」

「いえ、助けたというほどのことでは…」

「いやいや、謙遜はしなくてもいい」

 と、やせ細った彼女の父親は力なく笑っていた。


 その後しばらく当たり障りのない会話をしたあと、彼女の父親は僕に一つの依頼をしてきた。

 それは彼女とお付き合いする上での事とは全く関係のないことであった。


「えっと、確かに僕は入学して直ぐ電話番号を交換しましたけど、僕が電話をかけるんですか??」

 僕は戸惑いながらそう言うと、


「はは、私がいきなり電話をかけても知らない番号だろうしね。それに彼は警戒してしまう」

「はぁ…」

「頼む長谷川君。私が彼に謝罪をする機会を作って欲しい!」

 彼女の父親はそう力強い目をしながら僕に頭を下げた。

 ここまでされたのに断るほど僕は冷たい人間ではない。


「わかりました!必ず彼を公園にまで連れてきます!」

 僕はそう言って彼女の父親に約束をした。


 それにしてもなぜ公園なのだろうか?

 ファミレスとかではダメなのかな?


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