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第21話 スレード隊が転生した理由

「どうも、初めまして。私の名前は『清堂 輝明』。この会合を企画したものです。本日お集まりいただいたのは他でもありません。今回皆様にお話したい内容はこの星、そしてこの国で自然現象ではない『転生』の反応を確認したためです」

 と、輝明さんが挨拶をした。


 転生。その言葉にスレード隊の誰もが反応した。いや、リズリーとパルクスは落ち着いている。


「では、前世関係の詳しい説明を『水沢みずさわ』さんからお願いいたします」

 輝明さんが言った水沢さんって誰だ?と思っていると、リズリーが立ち上がった。


「今先ほどご紹介いただきました『水沢みずさわ 朱里あかり』と申します。前世での名前は『リズリー・ボルグラン』です」


 会議室がざわつく。


 邦治は、

「なるほど、彼女が例の転生者でしたか…」

 と言っている。ん?邦治さんは自分の娘が転生者ということは伝えられていないのか?というか、転生者の存在を知っていたのか?


「私の左隣に座る彼も転生者で、名前は『近藤こんどう 翔太しょうた』ですわぁ。前世での名前は『パルクス・ナードレー』ですぅ」

 パルクスの紹介でも俺以外の残りのスレード隊は驚いていた。

 パルクスは紹介されると頭を下げただけだった。

 今世でも無口なんだね。パルクス。


「私達は元居た国で同じ軍、同じ部隊で活動していました。国の名前は『リール連邦』。部隊の名前は『スレード隊』ですわぁ。当時、戦争状態だったリール連邦は新型兵器『バトルワーカー』を使用し、敵国を次々と打ち破っていきました」


「バトルワーカー…ですと?」

 邦治さんが小さくつぶやいた。

 え?邦治さんバトルワーカーも知ってるの??


「しかし、とある一国を攻めようとした時、敵の高性能BWの攻撃によってスレード隊は全滅してしまいました。ですが、BWや車両内に施されていた転生用魔法陣の仕掛けによって、強制的に転生されました」


 うん。俺達スレード隊の前世であった出来事だな。

 ってか、そんな事があって俺達は転生したのか!?


 大きな謎が解けてしまった。


「転生先はこの星『地球』。そして国も場所も同じところに転生いたしましたわぁ。しかし年代はバラバラで…。実は、運良くまとまって転生したわけではありません。これは私達が乗っていた兵器に施された仕掛けによるものでした。仕掛けられていた意図は不明ですわぁ」

 やはり偶然ではなかったか…。誰かしらの意図があると思っていたが、BWや指揮車両に仕掛けられていたものだったとは…。

 しかも何故仕掛けられていたかわからないとは…。

 あれ?そういえば誰が仕掛けたんだ?その転生用魔法陣。


「あのぉ~。誰が私達を転生させたのですか?」

 と、ミューイが聞いてくれた。

 よく聞いてくれた。ミューイ。


「テロリスト集団ですわぁ。詳しい事は後々説明致しますわぁ」

 と、リズリーは言った。

 って、テロリストかよ!!


「私達の転生はリール連邦の戦争に介入した宇宙間国家『宇宙連邦』によって直ぐに判明。様々な妨害などをした結果、この星、『地球』に私達の魂がたどり着いたんですの」


 うちゅうかん国家?宇宙?宇宙!?

 俺は驚愕した。宇宙に進出している国家など聞いた事がなかったからだ。


「宇宙連邦ってなんだ?」

 デルクロイが声を上げた。

 それに対しリズリーは、


「リール連邦は様々な国がまとまってできた国で連邦になりましたよね?宇宙連邦の規模は複数の宇宙からなる国で、それぞれの宇宙の中の数千、数万では表しきれないほどの国や星が集まってできた国家です」

 と、説明すると、デルクロイは目を回していた。


「宇宙中の国々!?それに複数の宇宙!??」

 ミューイはその衝撃的な発言に耳を疑い声を上げた。


「そんな馬鹿な話…」

 グリゼアもそう言っても訝しげな目でリズリーを見る。


 俺もグリゼアの話を信じられずポカーンとしてしまう。ってか、なぜいきなりSFの話になるんだ!?この地球で今まで過ごしてきてそんな話は一個も聞かなかったぞ!?ところで自分で思っていてなんだが、SFってなんだ?


「いきなりですので信じられないかもしれませんが、そういうものがあると認識してください。これは地球世界でもごく限られた人達でしかしらないことですからぁ」

 リズリーはそう説明してくれた。


 地球世界でも限られた人しか知らない情報…。うーん、これはひとまず信じるという方向にしておくか。リズリー、パルクス以外の他のスレード隊メンバーは疑うような目をリズリーに向けているが、これが正しい反応なのだろうな。

 俺、この世界の常識に疎いのでこの場で少し浮いている気がする。


「では、説明を続けますわぁ。私達の身近な事でご説明いたしますと、前世で我々が死亡した時、我々を殺したBWは宇宙連邦軍のものでした」


 え?俺達を殺したのもその宇宙連邦だったのか!?


「我々を殺したからといって不用意に警戒する必要はありませんわぁ。彼らは現在友好的な立場となっていますの。現在私とパルクスもその宇宙連邦と親しく付き合いがある組織のメンバーとして活動していますわぁ」

 それが、輝明さんと鬼一郎さんの居る組織…。というわけか。


「私とパルクスの活動目的はもちろん転生されたスレード隊隊員の発見。そしてその後の支援です。ここまでで質問はありますか?」

 リズリーの問いに俺が手を上げる。

「俺達を支援…。というのは具体的にはなにかな?残りのメンバーを見つけるということだろうか?」

 と聞いた。


「残りの隊員を見つけるための支援はもちろん行いますが、実は既に全員発見しています。コンタクトは一応取れているのが1人、コンタクトを取っていないのは残りの1人ですわぁ。全員発見後も支援を続けます。具体的な支援は魔法の秘匿にもかかわる内容です」

「魔法の秘匿?」

 俺が再度聞くと、

「皆さんもお気付きかと思いますがぁ、この惑星には魔法を使う。という行為は絵空ごとと考えられていますぅ。しかし、この星の全ての人間に『魔力』が無いわけではありません。大昔から魔法を使える人々は存在していましたわぁ。現在 でも『魔力』という名の能力を持っている人は居ます。ですが、この惑星ではほんの一握りの人間のみです」

 俺が認識していた常識とは大分異なっているな。魔法を使える人が少ない世界か…。俺の居た世界…というか惑星?では結構な人数が使えていたな…。スレード隊のメンバーは全員能力幅はあるが魔力を持っていた…。


「困った事にこの少数の人間を狙う者が少なからず存在します。ここに居る輝明様が属する『清堂家』、鬼一郎様が属する『紀崎家』は魔術を正しく使う者を保護する組織でもあるのです。私とパルクスを早期に発見し、保護していただいたのも『清堂家』の方々でした」

 リズリーとパルクスはそうやって出会えたのか。


「清堂家等の方々によって、我々は保護される。という支援を受けられます。希望すれば自分の魔力に合った仕事も斡旋していただけます。ただし、皆様には魔法を使えるという事を世間には秘密にしていただきたいのですわぁ」

 いい事尽くめなのか?確かに所属して損は無さそうだ。

 魔法を秘密することについては問題ない。ようは誰にも言わなければいいのだ。


「……」


 おや?先ほどから邦治さんの様子がおかしいぞ。

 額には汗をかき、娘を青い顔で見て、輝明さんを見る。という行為を繰り返している。

 それに気付いた輝明さんが、

「ボルグランさん、ちょっと私からいいかな?」

 と、リズリーを前世の名前で呼んで、リズリーの説明を遮った。

「あ~っと…。最初にはっきりとさえておくべきだった」

 と、輝明さんは言って邦治さんを見た。

「邦明さん、既に察しはついていると思いますが、お伝えさせていただきます。本来今日あなたと会談する予定だった事です」

 そう前置きをして、

「ここに居る中で、転生者は、

スレード隊隊長オーヴェンス・ゼルパ・スレード。今世名:前田 竜生

スレード隊副隊長グリゼア・テューリー。今世名:君山 佳奈美

ミューイ・パルトラ。今世名:森澤 春香

デルクロイ・ダージンバー。今世名:井野口 正嗣

パルクス・ナードレー。今世名:近藤 翔太

リズリー・ボルグラン。今世名:水沢 朱里

…そして邦治さん。あなたの娘、

レイーヌ・パレス・バルカッチェ。今世名:神埼 麗華

以上7名です」


「そ…そんな!私の娘が…」

 邦治はそう涙を浮かべながら言った。

 父親としてはショックなのだろうか…。

 自分の娘がまともじゃないとでも思ってしまっているのだろうか…。

 そう思っていると、輝明さんが、

「邦治さん、娘さんは前世の記憶があるというだけで、あなたの娘であることには変わりはないのですよ?」

 と、言った。

「そう…なのか?麗華?」

 と、恐る恐るレイーヌに聞く邦治さん。

「当たり前です。お父様」

 と、レイーヌはちょっとむくれていた。可愛い…。

「私がいくら転生したといっても、今世の記憶が全く無いというわけではないんですよ?ちゃんとお父さんに育ててもらった記憶もありますし、遊んでもらった記憶もあるのですから」

 レイーヌがそういい終わると、邦治さんはポロポロと涙を流しながら、

「わ、私は…麗華が別の存在になってしまったのかと…。もう遠い存在になってしまったのではないかと…」

 邦治さんはそう言って麗華の手を握った。

 親子愛か…。いいものだな。


「ふむ。これなら大丈夫かな…。ボルグランさん、すみませんでした。続けてください」

 と、邦治さんの様子を見て安心した輝明さんがリズリーに話のバトンを渡そうとするが、

「輝明様、後残す話は宇宙連邦の件とこれからの事ですが…」

 とリズリーが言った。

「そうか。もうリズリーから話す事は?」

「再会の言葉ならば後で交わしますわぁ」

「分かった。では、宇宙連邦の事を説明する」

 こうして輝明さんから宇宙連邦の話を聞き、どうしてリール連邦の戦闘に介入したかを聞いた。




 宇宙連邦とはリズリーが最初に話したとおり、宇宙間つまり別の宇宙をまたにかけ、まとめた国らしい。


 地球の殆どの住民はその国家の存在を知らない。


 清堂家は宇宙連邦の存在を知っている地球人として、宇宙連邦に様々な面で協力をしているらしい。

 邦治さんの家、神崎家は清堂家の一派に所属しており、資金源として活動しているらしい。そのため、その家長たる邦治さんは地球外生命体の事は知っていて当然の情報であった。


 もちろん宇宙連邦の他にも宇宙に進出している国家は沢山あるのだが、そうでない国や惑星も沢山ある。

 その一角が、俺達が転生する前の惑星『リョーキュー』であった。


 惑星リョーキューは魔法を使える人間が多く存在する星という認識は随分昔から宇宙連邦にされていたらしい。


 前提として自力で宇宙進出を果たした国家や惑星のみ交流。としていた宇宙連邦は単に惑星リョーキューは観測を定期的に行うだけの価値が殆ど無い惑星だった。


 しかし、ここで問題が発生してしまう。


 大昔から宇宙中の国家と敵対していたテロリスト集団に惑星リョーキューを目につけられてしまった。


 テロリスト集団は早速リール連邦の周辺国家にリール連邦を攻めるように裏工作を開始しつつ、リール連邦には高度な技術を与えた。


 リール連邦周辺国家はリール連邦に様々な嫌がらせを開始し、時には襲ってリール連邦の民を虐殺したりした。


 リール連邦は当然怒り、周辺国家に対して宣戦布告。


 戦争はリール連邦の一方的な勝利となった。が、リール連邦の怒りや憎しみはなくなることは無かった。


 周辺国家と協力していた様々な国家が、リール連邦に潜入し、リール連邦の民を更に虐殺する事態が多発。リール連邦は潜入していた者達をひとり残らず惨たらしい方法で殺し、さらに戦火を拡大した。


 宇宙連邦はたまたま定期的な観測を惑星リョーキューへしていた。


 いつも通り文明レベルが低い星として報告書も特に変わり無し。となるかと思っていたが、宇宙連邦は惑星リョーキューに大規模な戦闘を確認した。


 大規模な戦闘と言っても、宇宙連邦からしたら小さな戦闘であるが、惑星リョーキューからしたら歴史的な大戦であったため、調査を開始。ここで驚くべき物を宇宙連邦は発見した。


 文明レベルに合わない機械技術、魔法技術を発見。


 人型巨大兵器BWも宇宙連邦現役のものと比べれば、比較にならない程低レベルなものであった。


 しかし、見過ごすわけにはいかない。


 よくよく調べると、2500年前に使用されていたとある魔法国家のBWと一致。

 陸戦主体で僅かな時間浮遊できるが、高機動な空中戦どころか宇宙戦にも対応していない。当時宇宙連邦が所有するBWと比べてもかなり貧弱な部類であった。それでも惑星リョーキューにしてみれば強大な力を持った機体であることには違いはない。


 調査の結果、宇宙連邦をはじめ宇宙中の国家が敵対をしているテロリスト集団がリール連邦に関与していることが発覚。

 直ちに宇宙連邦は軍を動かし、テロリスト集団の排除に取り掛かった。


 宇宙連邦軍は惑星リョーキューの付近を移動していたテロリストの宇宙船等を取り締り、リール連邦との交渉も密かに行った。が、リール連邦はこれ以上宇宙連邦が介入するのであれば宇宙連邦へも攻撃の意思を見せてしまった。

 リール連邦も今まで散々苦汁を舐めさせられ続けた周辺国に対してわずかな期間敵国を占領しただけでは気が済まなかったのだろう。と宇宙連邦軍は考えた。


 宇宙連邦は仕方なく、リール連邦を交渉のテーブルに引きずり込むべく、圧倒的な力の差を見せつけることにした。


 ちょうどこの辺りで俺達スレード隊はガリオニア公国に攻めようとしていた時期だったらしい。


 リール連邦は俺達のような精鋭部隊であるスレード隊をはじめ、王族の部隊を使うなど強力な部隊をガリオニア公国に向けていた。


 宇宙連邦軍はたった5機のBWでリール連邦ガリオニア公国攻略部隊を攻撃した。


 これが俺達スレード隊の死んだ背景にあった出来事であった。


「ちょっと待て、それでは宇宙連邦は己と敵対しているテロリストの勢力を排除する為に、リール連邦を攻撃したというのか!?随分と身勝手な話ではないか!」

 と、デルクロイは批判した。


 その通りであると俺は思った。

 いくらテロリストと宇宙連邦が敵対していたとは言え、惑星リョーキュー内での戦争はリール連邦と相手国の問題であるはずだ。


「惑星リョーキューに介入したということは少々行き過ぎた行為ではないでしょうか?今の話を聞くからに、リール連邦は宇宙連邦軍に攻撃をする意思は伝えたが、実際に攻撃はしていなかった。宇宙連邦はそうまでしてリール連邦にテロリストの技術支援を受けてもらいたくない理由はなんだったんですか?」

 俺も輝明さんに質問をした。


「ふむ。確かにおっしゃることはごもっともですね。では、テロリストの正体とテロリストが惑星リョーキューで手に入れていた資源についてご説明させていただきます」

 輝明さんはそう言うと、会議室の中央に映像を映し出した。

 これは後からわかったのもだが、立体映像というものらしく、地球の技術ではないらしい。


 流された映像は『闇の悪意について』という文字が映し出されていた。


 映し出された文字には可愛らしいイラストも付きながら説明がなされた。


スレード隊の転生の秘密が一部明かされました。


余談ですが、『宇宙連邦』の名前を『○○宇宙連邦』と最初にカタカナの名前を付けようか悩んでいます。


単純な『宇宙連邦』では変でしょうか…。


弱小架空国家であればポンポン適当に付けるんですが、物語の中で重要な国家の名前は悩んでしまいます。

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