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第13話 電車の中でホラー体験

 さて、グリゼアを探しに行ったらデルクロイも見つかった。

 強運過ぎて今後、本気でレイーヌに再び会えるのではないかと思ってしまう。

 でも、本当に可能性あるよね?

 こんなに続けて仲間に会えるなんて怖い気もするが、レイーヌ会えればそんな怖さも吹っ飛ぶさ!


 思わぬ収穫に気分が浮かれ帰宅する。


 もちろんミューイを送ってきてからだ。

 大人が子供を送って行くのは当然だ!としてデルクロイも一緒に着いてきたので、森澤邸に着いた時に出迎ええてくれた達也が驚いていたな…。

 月曜日どうやって説明しようか…。


 デルクロイはそのまま俺を前田邸へ送り届けて帰っていった。

「坊ちゃん、それではまた!」

 と、言って去っていった。


 そんなわけでただいまもどりましたよっと!


 自宅に帰ってからは相変わらず冷たい視線を兄から感じながら夕食を済ませ、兄の後に風呂に入って自室で休息をとっていた。


 今後の予定は、グリゼアとデルクロイに自宅でスレード隊ホイホイ(ミューイが命名)を継続してもらう予定だが、俺はこれからどうしよう。


 ただ何もせず日常生活を送るというわけにもいかない。

 学業はもちろんだが、俺もスレード隊捜索をしなくてはな。

 打てる手は全て打っておきたい。


 レイーヌに会いたい!!!


 だが、どうしたものか。今までの発見だって全て向こうから来てくれたようなものだ。

 俺自身が自力で見つけ出したわけではない。

 またミューイやグリゼア達を発見した時のように偶然を待つか?


 いや、そんな確実性に欠ける事はしたくはないな。もし見つからなかった時絶対に後悔が残る。


 何か方法は無いかな?


 だが、そうやすやすと人探しの方法が見つかるわけではない。


 そうだ!インターネットで人探しの方法を見つけよう!

 そう思ってパソコンの電源を入れる。


 さて、検索検索…。なになに?探偵?

 う~ん。前世の仲間を探していますなんて言ったら怒られるだろうな…。


 占い!

 あれ?この世界って魔術無かったんじゃなかったっけ?


 どうしようかな。探す方法がわからない。インターネットがこれほど役にたたないとは…。あれ?インターネットが役に立ったことってあったっけ?あ、グリゼアの居場所を探した時に役に立ったか…な?

 ってか、これじゃ本当に見つからないんじゃ?


 俺はちょっと焦ったが、少し今の俺には楽観的にな見つかりそうだな。という気持ちもある。

 なぜならば今になってスレード隊のメンバーが4人も集まる事ができた。

 更に全員死亡した時の年齢と同じである。

 何の因果かは知らないが、俺が18歳という年齢の時にスレード隊全員と合流できそうなきがする。根拠は無いがな。


 とにかく今日は歩き回って疲れた。


 夢の中で竜生と相談をしてみるか。

 彼のほうが今世の世界は詳しい。


 共に考えれば何か発見できるかもしれないな…。


 そう考えて俺は眠りについた。





 夢の中…。

 俺の夢の中である。


 再び白い空間に来た。もう何度目かは分からないが、この場所にこれたという事は竜生に相談できるということだ。


 左を向くとやはりそこには竜生が居た。

 座り込んで『犬のレイーヌ』を撫でている。


「やぁ!」


 声をかけてみる。

 この前会った時はだいぶ精神状態が不安定だったようだが、今は大丈夫だろうか?

「心配は無用だよ」

 竜生はこちらを見ないままそう答えた。

 だが、何かおかしい。

 いつもと何か違う気がする。


 …。


 あぁ。わかった。薄いんだ。

 なんか薄い。存在感というわけではなく、存在自体が半透明…までとはいかないが薄くなっているようだ。

「そのようだな…」

 なんだかこのまま消えてしまうような感じだな。


「そうだな。このまま消える可能性はあるよな」


 竜生がそう言った瞬間頭の中が真っ白になった。

 え?

 …は?

 何だと!?冗談で言った…いや、思ったつもりだったが、本当なのか!?

「あぁ…。多分な」

 いったい竜生に何があったんだ?


「俺達は二重人格じゃなくなってきたんだよ…」

「二重人格じゃなくなってきた?どういうことだ?」

「今は二重人格なんだけど、つまり徐々に俺達融合されていっているってことさ。お前主導でな」


 どういうことだ?俺にそんな感覚無いぞ??


「あぁ、そうだろうな。当たり前の光景をそのまま当たり前として認識するんだ。不快感なんて抱かねぇよ」

「そういうものなのか?」

「そういうことじゃねぇのか?」


 うぅむ。なるほど俺は根暗になるのか…。


「ははっ。そうかもな。でも心配しなくてもいいかもしんねーぜ。なんせオーヴェンスは俺の性格っぽくなってきてるからな」


 根暗に?


「うぐっ…。自分で自分を根暗って言った手前あまり強く言い返せないが、俺、元々そんなに根暗じゃなかったんだぜ?どっちかっていうとお調子者かな」

「マジか!?じゃぁ、今どうしてそんな性格に…あ!…」

「そうだよ、泉と朝川が原因だよ…」

 そうだよな…。しかし、俺ってそんなに性格に変化が出てきているのだろうか。

「あぁ、最初に会った頃のオーヴェンスと比べれば一目瞭然だろ?あのクソ堅物な感じの奴が、いつの間にか心で思っていることすら軽い感じになってきているぞ」

 そ、そうなのか?気付かなかった。なんだか知らず知らずの内に自分の性格が変わっていっているなんて怖いな…。

「そろそろ時間か…。あぁ、それと残念だけど仲間を探す方法はインターネットや自分の足で情報を聞いて回るぐらいしかアドバイスはできない。もしくはオーヴェンス自身が何か特大なニュースになるようなことをやってテレビの前で前世の名前を言うこと位かな」

 やはりそのぐらいしかないか…。

「そろそろ時間だな…」

 と、竜生が俺の目覚める時間を教えてくれた。

 毎回思うのだが、なぜこの空間で時間が分かるんだ?

「ん?あぁ、習慣だからな。ほら、お前だって軍隊の頃起床ラッパよりも早く起きてただろ?その原理だ」

 なるほど。そんな感覚なのか…。

「それじゃぁな、これで最後かもしれないからこれだけは言っておく。色々とありがとうな」

 竜生はそうニコリと笑いながら言った。

「あぁ、こっちこそ色々とありがとう」

 俺はそう竜生に礼を言う。

 本当にこれでお別れなのだろうか…。

「いやいや、別れってのは変だろ。一応俺とお前は一心同体なわけだし」

 ん?そういうことになるのか?

「それじゃあな」

 そう言って竜生は笑って手を振る。

「あぁ、さよなら…じゃなくて、これからもよろしく。だな」

 俺はそう言って笑うと、

「その通りだな」

 と、竜生も笑っていた。

…。

……。


―――――。


 そして俺は目が覚めて、新しい一日が始まったのだった。








 そして今日は日曜日である。


 何もする事が無いのだ。


 グリゼアとデルクロイにメールで相談したが、一日ぐらい休んだらどうだ?と、気を使われてしまった。

 最近いろんなことをしたな。確かに忙しすぎたかもしれない。

 まったく異なる常識を持つ世界で、よくもここまで動けたものだと自画自賛してしまう。


 ベッドでゴロゴロ。今日の予定はどうやらこれになりそうだ。


 さて…もう一眠り…。


 2時間半ほど経った頃、朝8時半。俺の携帯が突然鳴り出した。


「…ん?なんだ?」


 手にとって見てみると、着信表示が隆であった。


「ん…おはよう」

「おぅ!おはよう。起きてたか?」

 元気がいいな…隆は。

「いや、今起きたところだ」

「なんだ。起こしちまったのか。そりゃ悪いことしたか?まぁ、いいや。それよりも夏休みの計画立てるために、今から達也の家に集合しねぇか?」

「夏休み…勉強会の予定か?いいぞ」

「勉強会ってお前…ちげーよ。遊びに行く計画だよ!遊びに!」

 なるほど、そういうことか。確か夏休みは今週の金曜日からだったな。

「わかった。俺からの提案は温泉めぐりだが?」

「却下だ!冗談はともかく、今から2時間後、達也の家に集合な!」

 うぅむ。冗談のつもりではなかったんだが…。まぁいい。この国の常識的な遊びを拝見しようではないか。


 何はともあれ今日の予定ができたのだ。

 ここ数日中の疲れを取るために一日寝て過ごそうと考えていた俺にとっては喜ぶべきか悲しむべきか。

 ここは喜んでおこう。せっかく隆が誘ってくれたのだ。


 母が用意してくれていた朝飯を食べ、身支度を済ませて家を出る。


 昨日と同じ道を辿り、森澤邸へと足を進める。




 電車に乗って行った方が早いので、早速電車に乗り、ここから二つ目の駅を目指した。

 今日は休日なので、9時半頃の電車は人が多い。

 満員電車ではないので少しはゆったりできる。


 電車に揺られていると何か人の声が聞こえた。

「ん?」

 見ると、3人ほど先に居る一人がブツブツと何かを言っていた。




「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない…」




 怖ぁああああいぃぃぃぃ!!!???


 なにあれぇぇぇ!!??



 なんだあれは!

 額に包帯を巻いた美少女が「許さない」の一言を連呼していますよぉおお!

 ほら、周りの人も居心地悪そうにチラチラとその少女を見ていますよ!?


 あ、何処かで見たかと思ったら、あなた小岸元議員の娘さんではないですかぁ!

 名前何だっけ?

 えっと…エイリ…エイリアン?じゃなくて…アイリだ!小岸 愛理だ。

 ってか、なんでこんなところに居るんですか?

 許さないって誰をですか?その額の傷を作った人ですか!?


 とにかく見つからないように慎重に行動しないと…。

 ってか、俺次の駅で降りなきゃいけないんだけど、同じ駅で降りたらどうしよう…。


 あぁ!停まる!もう停まる!


 …。

 ……。

 ………。


 停まった!そして動かない!よし、人ごみに乗じて俺も慌てず騒がず自然体に降りる!


 …。

 ……。


 成功!


 そしてすばやくホームを移動し、彼女の降りそうな車両を横目で見る。


 よし、降りてこないな…。


 扉も閉まった…。


 電車はそのまま発車して行った。


 助かった…。

 なぜかよく分からないけどそんな感情が俺の頭を支配した。


 なんか声をかけたら巻き込まれる気がした。

 とにかく今は達也の家に急ごう…。そうすれば一安心。

 改札口をくぐって後は…。


 その時、不意に後ろから俺の方に手が触れた。


 いや、触れたなんて生易しいもんじゃない。掴み掛かってきたんだ。


「ぷんぎぃぃぃぃぃいいいい!?」


 俺は変な声を出して悲鳴を上げた。


「うお!?なんだよ!脅かしてんじゃねぇよ!」

 後ろにいたのは隆だった。お、お前だったか…。

「なんなんだよ…。って竜生、お前顔真っ青だぞ!?何があった?」

「お、おう。聞いてくれ…実はな…」



 元同級生が電車の中でホラーをしていました。



「そりゃこえぇな。そういう人はたまに居るけど、元同級生で因縁があるとすりゃ一段と怖いな…」

 と、苦笑いをしながら隆は俺の話を聞いてくれた。

「なんか竜生に出会ってからそういう恐怖体験を聞くことが多いな…。そっち方面で才能あるんじゃねぇのか?」

「冗談じゃない!」

 前世はそんな才能なかった!今世でそんな恐ろしいことが日常で起こってたまるか!しかも電車内の人物は生きているからね!?



 なんだかんだで森澤邸へ向かう道中、後ろばかり気になってしょうがなかった。

「なにもいねぇって…」

 隆は若干あきれ気味だ。

「あれを実際見ていないからそう言えるんだ」

 俺がムッとして言い返すと、

「ん~。でも意外だな。竜生ならそんなのとであっても軽く倒しちまいそうなんだけどな」

 隆のその一言で目が覚めた。

 そうだよ。別に相手も普通の人間なんだから倒せるな。

「そうだよ隆。いいことを言ったなぁ~。警戒しつつ現れたら威厳を持って対応をすればいい。なんだ…それだけの事だったんだ」

「なんだよ威厳を持った対応って。もうさっきの竜生の姿見たら威厳なんて感じねぇよ…」

 そう言った隆の目は、俺をかわいそうな奴を見る目になっていた。

 その目はやめろ!

 隆は呆れた表情を見せ、俺の前を歩き出した。

 うぅむ…。以前の俺ならこんなことで慌てるようなことは無かったが、これも竜生の意識と溶け込んだ結果なのだろうか…。

 この感覚は今世のこの世界、この国では当たり前の感覚なのだろうか…。

 そう考えれば竜生の意識との混合は喜ぶべきことなのだろう。

 この世界での普通の感覚。欲しいものである。





 そうして俺達二人は森澤邸へと到着した。

 二度目となる達也の部屋でミューイと一緒に居る。

「ん?どうした?」

 俺がミューイの存在を不思議がっていると、達也が気付き声をかけてきた。

「あぁ。この場に春香が居ることが不思議だったのか?こいついつもそうなんだよ。俺達の遊びに付いてくるんだ」

 と、達也が説明をしてくれた。察しがいいな。

「ま、男だけの海なんて嫌だから春香にはいつも春香の女友達を連れてきてもらうからな!うへへ」

 隆が欲望に満ち溢れた表情をしながら言った。あれ?隆、お前はミューイのことが好きだったんじゃないのか?

「『美菜みな』ちゃんと『あや』ちゃんを変な目で見ないで!」

 と、ミューイは文句を言っている。おそらく美菜と彩という女子がミューイの今世の友達なのだろう。

「それじゃ、早速計画を立てますか~!」

 達也がそう促して海に行く計画がスタートした。





「と、いうわけでどうだろう。普段二人共働き詰めなので、これを機に皆で休息を取ってみては?」

 俺は今ミューイと共にグリゼアのアパートに居る。

 森澤邸での計画が大筋立てられた為、本日は解散となった。

 俺はその足でグリゼアのアパートへ行き、ミューイも着いてきたのだ。

「確かに私も今時間に余裕があります。私が務める予定のパート先も三週間後に来てください。という話だったので」

 と、グリゼアは言ったが、

「しかし、誠に申し訳ございませんが、経済的な理由から辞退させて頂こうかと思います」

 グリゼアはそう言って俺に頭を下げた。

「すいません坊ちゃん。俺は普段働いてないんで暇人なんですけどね?実はのところ家族サービスの日と海に行く計画の日被っちゃっているんですわ」

 と、デルクロイが言った。

 しまった。先にデルクロイの予定を聞いておくべきだった。

 仕事はしていないことは知っていたので、いつでも時間はあるだろうと思っていたが、彼には家族がいるんだった!

「う~む、ですが…しかし…グリゼア。行ってきてはくれんか?」

 と、デルクロイはグリゼアにそう言った。

「な、何を申すかデルクロイ!私は今費用の面で厳しいと…」

 驚いた顔でグリゼアはデルクロイを見る。

「あぁ、いやすまぬ。遠征に行かれるのであれば護衛は必須と思ってな。我らスレード家に仕える騎士たる者、どちらか行かねばなるまい?」

「なるほど!確かにその通りだ。だが…」

 なんだか遊びに行く話が俺の護衛の話になっているぞ…。グリゼアが困ってしまっているではないか…。

「費用はワシが出そう」

 と、デルクロイがそう言って胸を叩いた。

「なんと!?そんなことをしては…」

「なぁに金がある者が出せば良い。ワシは金、グリゼアは護衛の仕事。役割分担はこれでよかろう?」

「むむむ…」

 グリゼアは難しい顔をしながら唸っている。こりゃ余計な事を申し出てしまったかな?

「無論お主の息子の費用も出そう。これなら問題あるまい?」

「うぅむ。わかった。オーヴェンス坊ちゃま。微力ながらお供させていただきとう存じます」

 ただの遊びの目的がえらく堅い話になってしまった。見ろ、ミューイなんて苦笑いだぞ!


 ん?デルクロイがウインクをしている。


 あぁ、そうか。グリゼアには最近心のゆとりが無かったからな。デルクロイには家族で遊びに行けるが、グリゼアはこのアパートの中で仕事が始まるまで何もすることがないのだ。せっかく自由の身になれたというのにこれではストレスが溜まる。つまり、デルクロイは気を利かせたのだ。ナイスだデルクロイ。

「しっかし、ふと今思ったんですが、坊ちゃん…」

「ん?どうしたデルクロイ」

「高校三年生って、受験生ですよね…。受験勉強の方は…」

 と、デルクロイは不安そうに聞いてきた。

「なんだそれは?」

 本気でわからん。受験勉強?何かを受ける為の勉強か?何を受けるんだ?

「坊ちゃん!?」

「オーヴェンス坊ちゃま!?」

 二人はかなり驚いている。なんだ?そんなに大事なのか受験勉強。

「あぁ…坊ちゃんは就職の予定で?しかし、そうなると就職活動が…」

 デルクロイが狼狽えている。え?俺遊んでちゃまずかったのか?ってか、そうなると隆と達也もだぞ!?

 そこで助け舟を出してくれたのがミューイであった。

「あぁ、副隊長とデルクロイさん。実は私達の学校。大学までそのまま受験しなくても入れるんですよ」

「「「え!?」」」

「な、なんで隊長まで驚いているんです??」

 知らなかった。受験をしなくても行ける大学があるとは…。と、いうか普通高校三年生は次の年には進学するか就職しなくてはいけないのだな?覚えておこう。

 そもそも大学に行くなんて考えは今の俺には全く無かったな。

 俺はもう少し今世の身の振り方についてまじめに考えた方がいいな…。




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