強行の卒業式
卒業シーズンという事で書いた物をポン。
「卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます―」
その言葉を始めに校長が学生生活の思い出を語り始める。俺もまたその話を聞きながら様々な事を思い出す。周囲の卒業生も俺と同じ様に思い出し、旅立ちを惜しんですすり泣いたりするだろう。
あくまで俺以外に卒業式に出席している卒業生がいればの話だが。
そう、俺以外の卒業生は皆欠席している。
「校長先生……」
俺は恐る恐る手を挙げて校長を呼んだ。
「何かね?」
「あの、今日は卒業式延期にしません?」
「いやあ、延期にするって言ったってねえ……」
むしろ何で延期にしなかったんだと聞きたかったが怖くて止めた。
校長はそう言いながら来賓席を見る。来賓席の方も席がちらほらと空いているし来ている人ですらマスクをしてゴホゴホと咳をしている人が多く感じる。本当、何で今日卒業式延期にしなかったんだ。
「折角無理なさって来てくださってる訳だし延期には出来ないねえ……」
「いや寧ろ無理して来てくださってる人の為にも延期にすべきだと思うんですが」
今にも倒れそうだぞ、来賓の方々。
「君は無駄に来てしまったと思わせる気かね! 一体どんな鬼畜だ!」
「これから二時間一人の為に付き合わせる校長先生の方が鬼畜でしょうが!」
思わず声を荒らげて俺は言ってしまった。校長もわなわなと肩を震えさせながら顔を真っ赤にしている。ああ、やってしまったなと俺は思った。
「君は御家族の方々に晴れ姿を見せようとは思わないのか!」
校長もまた声を荒らげて俺の後方にある保護者席を指した。保護者席もまた席がほとんど空いている。俺は落ち着いて校長に向かって言った。
「俺の家族今インフルエンザで療養中です」
ひとまず祖母が看病していると補足しておこう。さて、校長の反応はと言うと。
「君の御家族もか!? ここにいない生徒も参列者の方々もインフルエンザだぞ! パンデミックでも起きているというのか!?」
「ていうかパンデミック起きてますよね!?」
「ゾンビになって襲ってくるというのかね!?」
「パンデミック=ゾンビの発想止めません!?」
もう駄目だ、何言っても校長はらしくない発言して混乱しまくってる。ゾンビが何だと大騒ぎだ。
それも長くは続かなかった。校長は段々とその声に力が無くなっていき、遂にその場に倒れた。顔が真っ赤になってたのは熱くなって話してるんじゃなくて単に熱があったからか。
そんな事を思っていたら式に参加していた教師の一人が校長の元まで駆け寄った。
「イ、インフルエンザです!」
「医者でもないのに断定しないでください!」
まあでも、これでさすがに今日の卒業式は延期するだろう。
「校長先生が倒れてしまいましたが、引き続き卒業証書授与式を執り行います。」
「何で止めないんだよ!」
その後、学校は教育委員会にこっぴどく叱られて卒業式は延期になった。
コメディーはコメディーですごく書いてて楽しいのでいつの日かコメディー一色で連載してみたいものです。
あ、私の連載中小説はもう少し、お待ち頂けるとありがたいです。
ついったー
@GS70_freedom