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外伝No.2 黒編 訪れた反撃の機会

UNFが開始したスヒア制圧作戦は予想外の戦力であるユニオン所属のアナザーフロンティアに搭載された二機のPAFを最大限有効な戦術に組み込んだため、一時的に防衛部隊側は危機に立たされた。さらに隕石の落下で発生する衝撃にすら耐えうる程の強度を持った市街地上面の天球を突破し、UNF揚陸艦が突入して陸上部隊を展開。内部の制圧も時間の問題かと思われたとき、ニルヴァーラは一人の少年を呼ぶ。

「なにか用ですか?」

玉座を思わせる椅子に座り、文学家のような姿勢で室内の空間に投影された立体地図を眺める彼に寄って行く。

「そうさ、結論から言って君に出撃してもらいたい・・・攻撃は本格化していてね、スヒア外壁の防衛システムも稼働率が落ちている、フェルロ部隊の消耗も芳しくない、既に北側は第十九から二十一区画まで制圧されている、市街地にも陸戦部隊が投入されたよ、どうかな?君の能力を試すときだと、私は思うのだが?」

「わかりました、異論はありません」

少年の反応を見てニルヴァーラは予測通りといった表情を浮かべ、近くにいた女性スタッフを呼び寄せた。

「彼をセィヴィアーまで案内してくれ」

「了解しました・・・ついてきて、貴方に新型を渡すわ」

少年は無言で女性スタッフのあとを追う。彼女は足早に中枢司令室を出るとそのままの速度で歩きながら振り返って少年に声をかけた。

「貴方、日本人よね?」

「えぇ、そうですが?」

「名前は?」

「なかに司る、空のゆきと書いて、ソラノ・ナカツカサ」

無愛想な名前の言い方が彼女に妙な印象を与えたのか、ふっと笑い、目を見て返した。

「ソラノ君ね?一応私も自己紹介しておくわ、神に、代わる・・そのまま光でヒカリ・カミシロよ、よろしくね。ところで年は?」

「十八です」

「あ、同じだ、私も十八よ、それで埼玉出身、せっかく同じ祖国を持つんだから、お互い知り合って損は無いでしょ?」

少し嬉しそうなヒカリに呆れた表情でソラノは意見を主張していく。

「・・・俺はこれから命を落とすかも知れないんですよ?生きて帰ってくる保証は無いのにお互いの情報を交換する意味はありますか?」

「貴方の戦闘能力は知っています。それにこれから使う機体の性能は新国連が使用しているPAFなど話になりません」

自信たっぷりで返されたことでソラノは気が抜け、調子が狂う感覚を覚える。それに先程までは普通に話していた彼女がいきなり敬語になったことにも違和感を持った。


それから無言が続き、短いエレベーターを降りて到達した格納庫には二機のPAFが並んでいた。四肢が頑強そうなフレームによって固定された二機は手前が黒、奥が赤のカラーリングで形は同じだとすぐに知れた。

「貴方が乗るのは、これです」

そう言ってヒカリが指し示したのは手前の黒い機体だった、黒いといっても全身ではなく、装甲の表面が黒いだけで、内蔵骨格は薄い青緑色をしている。だが不思議とその色には目が行かず、照明が当たっても輝きひとつ返さない漆黒の装甲のほうに神秘性を感じ取った。

「・・・機体名は?」

そう問いかけるソラノに対して、ヒカリは黒い機体を見上げていた視線を彼の目に戻して告げる。

「XA-セィヴィアー・・・我々が開発した世界を救う機体です」


「動力炉、出力安定、機体制御OS起動、確認、全入力動作正常に受領、XA-セィヴィアー、ソラノ・ナカツカサはこれよりN18ブロックの奪還任務を開始する」

漆黒の鎧に日本刀をPAFで運用するサイズに模した専用武装の近接格闘兵器を携え、島内の狭い重機搬送用通路を高速で駆け抜けるセィヴィアーに乗ったソラノは自分がなぜ出撃する機会を得たのか、疑問だったが今は任務が最優先だと言い聞かせ、心の靄を払った。

通路を進むと、正面にはフェンス状の金属で作られた網が行く手を阻み、そのすぐ向こう側にはUNFの部隊が展開していることが見て取れた。

減速すれば相手に逃げられるか、見つかって集中砲火を浴びせられる危険性もあった、ここはさらに速度を上げ、フェンスを突破するのが得策である。

ソラノの判断は功を奏した。思わぬ方向から襲撃を受けたUNF部隊の構成はGE-V28が三機とGE-J7が一機の合計四機。抜刀してまずは最寄のGE-V28を狙った。天井も低く、横か斜めにしか振れないので装甲ごと切断するにはかなりの重さと速さが必要になる。だが世界最高の切れ味といわれた日本刀の威力は想像を超えていた。

一瞬の内に一機を切り裂いたかと思えばそのままの勢いで刀を振るい、もう二機のV28も真横に両断される。J7は咄嗟にアサルトライフルを構えセィヴィアーに撃ち込むが、ロックオンが完全に行われるまでの数発は掠りもせずに壁面にめり込んだ。だが次に発射された弾は完全な直撃コース。回避は不可能、そして防御する能力はセィヴィアーには本来搭載されていない。UNF側のパイロットも一撃必殺を予想して二発目以降は撃たなかった。だがソラノは迫る弾丸を刀で両断してみせる。

「何!?」

怯んだ隙で一気に距離を詰められたJ7は肩部からダガー形状の接近戦用武装を取り出すが、直後に左腕部ごと切り飛ばされ、右に持っていたライフルを再度構えるものの、そちらも肩口から斬りおとされてしまった。最後の抵抗に右脚部での攻撃も試みたが読まれていたのか、軸足の左脚部を付け根から切断され成す術無く陥落した。

「・・・」

コクピット内でソラノは自機の脚部に付着した敵機のオイルと思しき液体を見つけると共に、視界に入った足元に転がるJ7の残骸を見下ろすと、それの頭部が動き、こちらをセンサーで捉えているなと直感した瞬間、首の接続部分を刎ねた。

さて、本編のまだまとまっていないにも関わらず、外伝に突入です。物語はリンクするように出来ていますので本編の裏ではこんなことがあったんだなという感じで捉えていただいても、もちろん外伝単体で楽しんでいただいても結構です。

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