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第七話 戦闘開始!!

全長330mを誇るUNFの旗艦バリシンスハイト、その左右を固める大型空母四隻、巡洋艦八隻、駆逐艦三隻、揚陸艦四隻。既に展開しているPAFだけでもGE-P31三十八機、GE-J7空戦ユニット装備型二十五機、GE-K5飛行ユニット装備型三十二機、高速戦闘用のGE-J7s十六機、砲撃装備のGE-J7d十二機、白兵戦闘特化のGE-J7y十機、特殊任務や偵察、輸送、補給などに使用するGE-J7eが四機、艦内には未だ島内制圧用の陸戦部隊、GE-V28が二十八機搭載されており、先頭にはアリアン・ウェンツェル搭乗のGE-α1が並ぶ壮観な眺めであるこの大部隊が向かうのはスヒアだった。

その横に並ぶ貧相な援軍、アナザーフロンティアは《AF-08エグザクト・アイゼン・スナイパーユニット装備型・エドワード専用カスタム》が中央甲板で新型ライフルの狙撃体勢に移行して待機、左はレビア・ゼイダンツ《AF-12ネィクス・アイゼン・ピアス》、右がルージ・プレナ・カリアドルの《AF-12ネィクス・アイゼン・ホイル》と合計三機だ。

ダムロアはオペレーターから作戦開始時刻です。と報告を受け全軍に通信を繋げる。そこで一言放った。

「攻撃開始!!」

その言葉が陣営を響き渡った瞬間、一筋の閃光がスヒアの下部メインフロートユニットとアナザーフロンティア甲板を結んだ。そして閃光はスヒアの中枢を熔解させると大気中に消える。

「何だ!!?」

驚いたのも束の間、スヒアの反撃が開始される、無数のミサイルが発射され対空用機関砲もスタンバイした。ダムロアはオペレータに指示を出す。

「怯むな!艦方射撃を開始、誘導兵器の迎撃を急がせろ、PAF部隊は接近しつつスヒア表面上の防衛システムを破壊し、揚陸艦の突入ルートを確保しろ!!」

一斉にPAF部隊は攻勢に転じる。部隊の中で最速のGE-P31がスヒアを射程に収めた時だった、島の下部コンテナが開き、軍のデータベースに存在しないPAFが次々と出撃してくる。空中に浮かんではいるが、羽のようなものは確認できない。つまり推進力に関係なく空中を移動できる敵機が出現したのだ。前線は混乱する中、アナザーフロンティアではお祭騒ぎが始まっていた。

「わーい!!当たった当たった!!エド!!どんどん撃てー!!」

艦長は席から立ち上がり四肢という四肢を全力で振り回している。正に狂乱の境地に達したと言っていい。それをちらと確認したルエラは意地悪そうな笑みを含んで艦を急発進させた。

「行くぜ!!捕まってな!!」

我らが艦長はバランスを崩し、席に尻餅をつく。

「痛っ!!」

この急加速にもローディ、ファレナ、トウカ、ガイエンは真顔で何事も無かったかのように各自の持ち場に就いていた。

「ふん、面白くなってきやがった!!」

ガイエンもまた悪ふざけをしようというのか、迫り来るスヒアからのミサイルを艦首荷電粒子砲

で撃ち落とす。大気中での使用は強い衝撃が伴うため、座席の前に何のコンソールも無い艦長のみが前方に飛ばされた。

「うおぉお!?」

慣性でつんのめりそうになるその19歳とは思えない小さな体をトウカは左手でパネルを操作しつつ右手で受け止め、席に押し戻す。

「うわぁあ!?」

ローディはしっかり座れとだけ忠告し、シートの固定機能をオンにした。

甲板ではエグザクト・アイゼンの携えた新型武装、光学兵器を応用した大出力レーザーのスナイパーライフルが火を噴き、向かってくる誘導兵器を次々と撃ち落とす、暇ができればスヒアから発進して来る敵PAF部隊と外壁表面の防衛システム群を狙撃していた。

前線は硬直し、あまり大胆に手を出せないUNF部隊と、全力で迎撃してくるスヒアの防衛部隊とで徐々に戦力差は開きつつある兆候が見られる。アリアンの駆るGE-α1が奮戦し、五機目の敵PAFを破壊した時だった、UNF全軍にアナザーフロンティアから通信が入る。その声の主はエストルニア・ロア・シュッテだった。

「全軍後退せよ!!繰り返す、全軍後退せよ~!!そして行け!!ユイ~!!」


アナザーフロンティアの艦首PAF出撃用・第二リニアレールが起動する。シャフト状の構造物の射出口先端には赤く点灯するインジケータがブリッジにレールコンディションを伝え、グリーンを待つのみとなった。

それと同時にシャフトの奥では前面のシャッターが開き、半透明ケージのパネルが展開する。内部から現れたのは純白の外観に真紅のラインが入ったAF-07機体のコードを持つユイ専用の最新鋭PAF。

「AF-07アウェイクアイゼン、OS起動中・・・」

ユイはコクピット内で起動シークエンスと発進シークエンスを同時に開始する。所狭しと敷き詰められたコンソール群の中央に一際目立つタッチアイコンがあり、それこそがこの機体を目覚めさせる鍵穴になる。

《AF-07アウェイクアイゼン・ソードユニット装備型・ユイ専用カスタム》ユニオンの最高傑作機体。ブリッジでも起動と平行して発進準備が行われていく。

「艦長、起動許可を」

はじめてユイがエストルニアのことを艦長と呼んだことでブリッジは騒然。

「おお!!あのユイが!?あのユイがエストのことを艦長って呼んだぞ!!?」

それに対し、本人は気づいたのか、果ては気づかぬふりをしているのか、平安貴族のような話し方で答える。

「許そう、AF-07アウェイクアイゼンの動力炉最終安全装置解除を認める」

「了解」

コクピット内が緩やかに振動し始める。艦に着弾したわけではない、勿論艦の動力炉の微振動でもない、揺れの正体はアイゼンのコアそのものに搭載された「核還成炉」が動き出したことによるもので、今までのPAFが動力にしてきた『電池』が生みだすエネルギーとは質そのものが違う、桁違いの出力を持つ動力の震えを体に感じた。

「余剰エネルギーをネィクスにチャージ」

ユイが動力系コンソールを操作しながらブリッジのファレナに指示を出す。

「了解、チャージを開始しましたー。続けてウェポンパックを実装しまーす!」

リニアレール左右にあったコンテナ状の部分が開き、その奥に隠されていた隔壁がさらに開く。

上側天井面から降りてきたアームは左右に別れ、その先端に取り付けられたPAF専用武装がアイゼンの手元まで運ばれていく。

「使用武装の確認を行いまーす、右腕メインウェポン、超高周波近接格闘剣FGH-0009-ft弐式、左腕にFGH-0009-lrTypeⅡ、背部ウェポンパックKIFG7TRN-11-VVVRFソード、五本。装備の換装完了、システムオールグリーンです!トウカ、あとはよろしく!」

「はい、AF-07AASP、出撃用リニアレールに固定、フィールド、出力上昇、安定軌道確保、発進のタイミングをユイ・ファルティアージ所有下、メインコンソールと同期、さあどうぞ」

射出口先端のインジケータが赤から緑に変わる。

「了解、アウェイクアイゼン、出撃する!」

ユイは正面の管制パネルから手を離し両脇のグリップを握り締めると、足元に複雑に設置されたペダル類の中央の一枚を強く踏み込む。直後にアウェイクアイゼンの四肢を固定したモジュールとアームは解除され、重力フィールドに引っ張られて加速した機体は空を切り裂いて飛んだ。

艦から離陸した直後左右に大型の翼を開き、さらに速度を上げる。無数のミサイルがそれを追うがアウェイクアイゼンは空中で急旋回し、近づいたものから斬り落としていく。両手に携えた剣はあらゆる接触物を瓦解させ、迎撃に向かってくるスヒアのPAFも一刀で切り伏せて行った。

誘導兵器の雨を掻い潜り、景色を覆う実弾を紙一重で避け続け、瞬く間にスヒア外壁に取り付いたユイは、外壁面の砲台と格納されたミサイル発射管を次々と破壊していく。正に獅子奮迅の活躍。

GE-α1のアリアンも負けてはいられないと思ったのか、敵勢に猛攻を開始した。

真下にいた敵PAFに急降下し脚部での蹴りを加え、携行のアサルトライフルをゼロ距離で浴びる、その残骸の後ろに回り込み接近するミサイルを防いだかと思えば、既にその姿は無く、他のPAFを襲撃していた。アウェイクアイゼンとGE-α1に危険性を感じたのか、攻撃が集中し始める。UNF本隊の士気も向上し、スヒア側のPAFは短時間で数を減らされていった。単機で戦局を覆す者、それがランカーアーク01の名を冠した彼の実力である。

「お前にまた会うとはな」

アリアンがユイに近づき、アナザーフロンティアの回線で通信を開くと嫌そうな声を送った。

「よく生きてたな、死んだと思ってたぜ」

ユイも嫌そうに答える。そんな会話をしながらでも迫り来る周辺のPAFを切刻めば、アリアンは壁面の防衛システム一帯を壊滅させる。

アナザーフロンティア内の艦橋でも二人の会話が聞こえていたらしく、どういう関係なのかいろいろと考察していた。

艦長曰く「うーん・・・昔任務で殺りあった仲とか?」

ファレナ曰く「きっと昔からの大親友さんですよぉ、ほら、あんなに息も合っていることですし」

トウカの報告「データベース照合、アリアンウェンツェル大尉、一年と二ヶ月前、中東国プレート建設時に発生した紛争で一般兵士用PAFを駆り、単独でテロリストの拠点を壊滅させた功績を持つ」

ようやくまともな情報が得られたことでローディが反応した。

「それだろうな、ユイには一年程前、中東付近のとある旅団から警護任務の依頼が来ていた、だがその団体の小隊はテロ組織だったという訳だ」

「なるほどねぇ!ってことはユイは守ってた団体を壊滅させられちゃったんだ!うわぁ~ユイならやりそ~」

盛り上がっていた時、後方に構えるUNF旗艦バリシンスハイトのダムロアから通信があった。

「依頼変更、いや、依頼追加だ。君達はこの真下にあるオクスゾン第四島に向かってくれたまえ、そこに展開していると思われるテロ組織の殲滅を任せる」

急な出来事に人は反応が遅れてしまう。ダムロアの追加依頼内容をアナザーフロンティア部隊の全員が理解するまでには僅かながら時間を要した、だが我らが艦長エストルニアはその間に今後の算段が立て終わっているようにも・・・見えなくもなかった。


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