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第五話 異なる新天地

汎用機動戦艦 《アナザーフロンティア》ユニオンが誇る最高の戦力は、これから行われるスヒア制圧戦で遺憾なく発揮される予定だった。

最新型フロートユニットは大気圏内の自由な航行能力に加え水中潜航も可能で、地球で確認されている水深は全て適応可能。内部は快適な生活が出来るよう作られており、居住空間とPAFを7機まで搭載可能な格納スペース、艦橋の3層構造となっている。

戦闘前、とは到底思えないその艦橋以外の場所なら立派な戦闘艦なのだが・・・


「みんな、よく聞け!これより我が艦はUNF攻撃部隊が突入するための支援を行う、だが敵は・・・おわぁあぁ」

艦長席から立ち上がったエストルニアは後ろにいた青年、ユイに襟の後ろを持たれ、席に再び座らされた。

「いちいち立つな」

ユイの手を掴み、引き寄せて抗議。

「何で立っちゃいけないのさ!?」

「お前のその、席から立ち上がると異様にテンションが上がる病気が治ったら、起立する許可を出してやるよ、わかったら戦闘が始まるまでは座ってろ、メル、一応作戦の確認を」

エストルニア艦長席の右前に座るオペレーターの、ファレナ・メルティカの方を向いてユイが頼んだ。

「はぁい、わかりましたぁ」

つかみ所の無い性格を持ち、大らかでマイペース、平和主義で清らかな心と、どこかのお嬢様なのではと疑われる程浮いた存在の彼女の返事。

「トウカはPAFの状態と艦のコンディションを最終確認」

「了解」

左前の第二オペレーター、トウカ・ランキューレ。かなり無機質な雰囲気を持ち、アナザーフロンティアの全データを処理することができる権限を有する、不思議な少女。自分からは話しかけず、誰かからの問いにも一言で返す。

「じゃあ、僕はそろそろ出撃準備をしましょうかね」

そう言って眼鏡を持ち上げ、艦橋後方の扉から出て行ったのがユニオンの誇る最強のスナイパー、エドワード・レイグラン。AF-08エグザクト・アイゼンの専属パイロットで、任務達成率ランキング一位をキープし続け《トップアティーヴメント》の称号が与えられていると同時に単体戦ランキング戦で八位を勝ち取ってランカーアーク08の立場を併せ持つ凄腕パイロット。

「非戦闘員全五名の居住ブロックへの収容を確認」

艦橋の中央下に座る副長兼作戦参謀のローディ・バイザン。

その右に操舵主のルエラ・ノートゥング、ハットを深く被る金髪美青年、左に砲撃主のガイエン・ヴァディッシュマン、サングラスの似合うスキンヘッドの厳つい黒人ナイスガイ。

ユイは端末を取り出し、PAF格納庫で待機中だった二人のパイロットに話しかける。

「ルージ、レビア、お前達は戦闘が始まったら艦の護衛だけに専念しろ」

『あぁ、今回はユイに任せるよ』

『オレたちも、こんなところでは死にたくないからな』

ユニオン所属のエリートランカー、ルージ・カリアドル、普段からクールにキメているがところどころ抜けている残念系イケメン、その相棒レビア・ゼイダンツ、お調子者だが義理人情に厚い、よく艦長とともに乗組員を弄繰り回しているとか。そしてユイ・ファルティアージ。ユニオンが主催する選抜シングルコンバットで常時一位を取り続ける単体戦最強のPAFパイロット。ランカーアーク01の称号を持つ。つまりこの艦にはいかなる任務も成し遂げるスナイパーと一対一なら負け知らずのインファイターが揃っているということだ。

そして我らが艦長。いつもふざけてはユイに止められているが、いざというときは勘と運を頼りに艦を操る19歳。

たったこれだけ、これに非戦闘員五名を足したメンバーだけでこの艦は大空を航行している。

『はーい、では皆さん、聞いてくださぁーい!』

艦内放送でアイドルが歌いだすのではなかろうかという溌剌とした、だがどこか抜けた声でファレナは話し始めた。

『現在アナザーフロンティアは、スヒアと呼ばれる人工島をこっそり違法改造し、そこに立て篭もっているニルヴァーラ・クルストインさん達を確保するべく隣のUNFの人たちと協力して制圧作戦を行いまーす。この巨大な島スヒアですが、まだ完全な稼動状態ではなく実は建造途中でーす、なので人は住んでいないと思われていました、で・す・が、ニルヴァーラさんが連れ込んだ技術者さんや、我々ユニオンから脱退したランカー数名も確認されていまーす。はじめに離陸されては手が出せなくなるので、エドさんの狙撃で下部メインフロートユニットを破壊、離陸不能に追い込んでください。その後接近して陸戦部隊を投入。内部も制圧します、なおスヒアへの被害は極力抑えてくださいね!』

「ところで、そのニルヴァーラという人物について、いろいろと知っておきたいのですが?」

PAF格納庫で放送を聴いていたエドワードが艦橋に通信を送ってくる。それに対してガイエンが反応した。

「世界中の天才と呼ばれる類の連中を集めて、国家でも作ろうってんだろ?」

いかにも気に食わないという表情を浮かべスピーカーに話しかけるガイエンにルエラは、

「いやいやぁ、天才集めてんならさ、オレ呼ばれなかったんだけど?」

といつものニヤついた笑顔で返した。

「経済学、医学、PAF工学と多方面に才能を発揮。物理学者、政治家、進化生物研究者としても多くの功績を挙げている、時期は不明だが、各界で実力を発揮する著名人を中心に声をかけ、スヒア内に勧誘、これを察知した新国連側は数度の立退き勧告を行うが全て拒否、現在に至る」

トウカがデータベースを読み上げると、エストルニアが、天才はあいつじゃん!、と付け加えた。ローディも思うところがあるらしく、作業していた手を止める。

「まぁ、天才の考えることは凡人には理解できんからな、考えるだけ無駄だろう・・・まぁ、奴が何を企んでいようが、スヒアの制圧はさせてもらうがな」

ローディの言葉に後押しされ、両脇のガイエンとルエラもニヤつき、行くぜ!と力強く発する、やる気に満ちたその台詞で皆臨戦態勢に移行し、ユイは無言で艦橋を後にした。

いかがでしたでしょうか、徐々に役者は揃い時間も流れてきました。

今後ともじっくり話を進めてまいりますので是非是非御覧下さい。

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