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電人と博士の関係  作者: 鮎太郎
第一章 誕生! 電人サブロウタ
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柘榴からのプレゼント

 身体能力測定というのは、学校でやった体力測定のような事をさせられた。

 反復横飛び、垂直ジャンプ、握力測定、体前屈、上体そらし、砲丸投げ、走り幅跳び、一〇〇メートル走、一〇〇〇メートル走、視力測定、聴力測定、色彩判定、等様々なデータを取ることになった。

 データ測定の結果はほぼ成人男性の平均値程度だったらしい。


「お疲れ様、どうだった?」


 データ測定が終わり、研究室に戻された三郎田の前に現れたのは、白衣を羽織った柘榴だった。相変わらず同じ服装だが、着替えたりしていないのだろうか。


「機械の体だから、疲れるなんて事はなかったですけど?」


 三郎田はふてぶてしく、そう言う。


「そう。それなら良いけど、電人になった事による精神的疲労があるんじゃないかと思ってねぇ。本人が疲れてなと言うなら問題ないわ、疲れたらいつでも言いなさい」


 彼女の言う事は正しかった。機械の体は疲れなくても、心は人間である三郎田は疲れを感じている。なれない環境に大勢の人に観察されながら、自分のデータが取られていく様は心に大きな負担を与えていた。


「そんな事より、何か用ですか?」


 三郎田の言葉を聞いて柘榴は笑っていた。


「何かあったかって? 実に最高、良い仕事をしたわ。こちらの想定したデータどおりの測定値が出てるからねぇ。嬉しくて小躍りしたいぐらいだわ」


 放っておくと本当に小躍りしそうな勢いだった。


「今までは違ったということですか?」


「そうね。まともなソフトウェアが出来てなかったからねぇ、歩く事すらままならない状態だったわぁ。それに比べたら、このデータを上に提出すれば間違いなく追加予算がもらえる。あなたは追加予算が出たら欲しい物はある?」


 柘榴は上機嫌で三郎田に訊ねる。

 三郎田が欲しい物を考えると、真っ先に上がる物はゲームだった。そこまで、ゲームに依存していたことに、三郎田は少し驚く。


「TVゲームとか、貰えるんですか? できればプレイスタリオン360《さんびゃくろくじゅう》(通称・PS360)の本体と、対戦できるゲームソフトが欲しいですけど……」


 柘榴は少し考えると、口を開いた。


「その名前、どこかで聞いたことがあるわねぇ。もしかしたら、すぐに手に入るかも知れないわ。ちょっと待っていなさい!」


 柘榴がそう言って、研究室から姿を消して、三十分後。他の白衣を着た研究員らしき人達と一緒に柘榴が戻ってきた。テレビを運ぶ人や、ゲーム機本体を運ぶが人がいる。まさか、もう用意してくれたというのだろうか。


「お待たせ。娯楽室にあったから、持ってきてもらったわ。これで、十分楽しむことが出来るわ」


 他の研究員は設置を終えると、電人が珍しいのか、ずっと三郎田を眺めている。


「あ、ありがとう……」


「ふふん。他に欲しい物があれば何でも言いなさい。出来る限り、私が用意してあげるわ」


 柘榴は大きな胸を強調するかのように、胸を張る。


「で、でも、どうして?」


「あなたは大切な、電人プロジェクトの仲間よ。そして、一番の功労者でもあるの。だから、多少の無茶は聞いてあげるわ」


 予想外の答えに、三郎田は声も出なかった。それに功労者と言っても、ただ体を動かしていただけである。


「さ、折角ゲーム持ってきたんだし、みんなでプレイしよっか」


 柘榴は三郎田の手にゲームのコントローラーを渡す。金属製の手になったというのに、コントローラーは不思議なほど三郎田の手に馴染んだ。


「ええ。どんな相手でも手加減しませんよ」


 三郎田はコントローラーを握り締める。


「じゃあ、先ずは私が対戦するわね」


 もう一つのコントローラーを柘榴が握る。

 他の研究員達は食い入るように、TVの画面を見つめる。

 二人の戦いはあっけなく、勝負がついた。三郎田の完勝であった。


「うおっ、すげぇ!」


「マジかよ。あんなコンボ見たことないぜ!」


「電人ってすげぇ!」


 研究員達は凄い興奮しながら、試合結果を賞賛する。三郎田はあまりの恥ずかしさに、顔を掻くが、金属のこすれる音がするだけだった。


「ありえないわ。瞬殺じゃないの! イカサマよ! イカサマ!」


 柘榴は今の対戦結果に満足していないのか、文句を口にする。


「次は俺にやらせてくれよ!」


「柘榴チーフばかりずるいですよ!」


「俺、勝てる気しないわ……」


 研究員達とゲームで盛り上がったが、結局三郎田の一人勝ちだった。そして、研究員達は口をそろえて、「あり得ない」と言う羽目になる。

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