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電人と博士の関係  作者: 鮎太郎
第四章 電人 VS 電人
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蘇る電人

 そこに小さな風が吹いた。その風に揺らされた電線が、三郎田の左腕に触れる。その瞬間、三郎田の全身に力がみなぎってくる。

 今まで体を動かせなかった三郎田は、飛び上がるように起き上がる。バッテリーより強い電力を得たことで、全身が活性化している。左腕から伸びるコードが、勢いを増し、その変に転がっている実験機材に突き刺さる。

 そして、必要なパーツを持ってきて、一瞬で左手が元通りになる。銃弾を受けた体からもコードが伸びて、必要なパーツをどこからか調達してくる。そのおかげで、一瞬で傷が治ってしまった。


「ば、馬鹿なっ! くたばれ、ゴキブリがぁ!」


 真里菜の声がはっきりと聞こえる。機能は完全に修復されたようだった。

 真里菜のガトリングガンが三郎田を狙う。三郎田はガトリングガンの照準が定まる前に、その場から逃げ出す。三郎田が先程までいた場所に無数の弾丸の雨が降り注ぐ。あの場所にいたら、蜂の巣にされていただろう。

 電線を取り込んだことで、以前より速い行動ができるようになった三郎田は常に位置を変えながら、銃弾をかわしていく。


 それでも、さすがに真里菜に近づく事は不可能だった。

 そこで、三郎田は閃いた。向こうが飛び道具を使うのなら、こちらも飛び道具を使えばいい。確か、電磁力を使って鉛球をぶっ放す武器があったような気がする。

 確か、レールガンと言っただろうか。詳しい原理は知らないが、とにかく、電磁力で鉛球を加速させて相手にぶつければいい。そして、バッテリーを打ち抜けば、相手を無力化できるはずだ。

 自分の経験から導き出した答えから、三郎田は左手をレールガンにする事にした。そう決めた時には、左手から無数のコードが四方八方に延びて、材料をどこからか集めてくる。


「な、何をするつもりだ! キミに勝ち目など無いというのに!」


 さすがに腕を修復したような速度では無理だったが、凄いスピードで、左手をレールガンへと作り変えていく。原理は知らないが、修復も、改造も思いのまま。

 そして、レールガンが完成する。左手が妙に大きな装置に変わっていたが、この重量感が今は頼もしい。

 左手のレールガンの照準を電人二号の体に定める。バッテリーがどの部分にあるかは分からないが、体にあることは間違いないだろう。

 レールガンを発射すると、パシュッという軽い音がした。構えていた反動も殆どなく、鉛の弾丸が発射される。発射された弾丸は真里菜の体を大きく逸れ、頭部をかするぐらいの位置を通り過ぎて、背後の壁に穴を開けた。


 危ないところだった。こんなにも照準が狂っているとは思わなかった。もう少しずれていたら、真里菜の頭部を破壊して、真里菜を殺してしまうところだった。


「な、何だと……、レールガンを製造したというのか! そんな事が出来るわけが……」


 真里菜のあせる声が聞こえる。真里菜は否定しているが、こうしてレールガンを製造した。後は真里菜のバッテリーを貫くだけだ。


「もう、抵抗するのは止めろ! 次は当てるぞ!」


 三郎田は左手のレールガンからコードを伸ばし、照準器を取り付ける。視覚用のカメラと連動し、照準器を覗かなくても、狙いを付けられるように改造する。

 今度こそ、真里菜の体を狙って弾丸を発射する。パシュッという音がするときには既に目標に命中している。


 当たったのは体ではなく、左腕のガトリングガンだった。体を守るために、ガトリングガンを盾にしたようだ。体が大きく、ガトリングガンという大きな銃器を持っているため、素早い動きが出来ないようだ。

 弾丸を受けたガトリングガンは一撃でバラバラになってしまう。これだけでは駄目だ。確実にバッテリーを破壊しなければ、無力化できない。その矢先、真里菜の左腕からまたコードが伸びたと思ったら、一瞬でガトリングガンを修復する。


「次の攻撃の前に! キミを殺す!」


 真里菜は自身を改造する事はないが、その修復スピードはとんでもなく速い。

 修復されたガトリングガンの銃口が三郎田を狙う。三郎田は移動しながら、銃弾の雨をかわしていく。レールガンも強力な武器なのだが、さすがに連射能力が違う。三郎田が不利だという状況は依然として変わらない。


 弾丸をかわしながら、レールガンの照準を真里菜の体に合わせる。そして、レールガンを発射する。今度は真里菜の体に命中させることに成功する。

 相手の銃撃が止まる。恐らく、バッテリーに命中したのだろう。


「う、嘘よ……。あたしが、こんな奴に、負ける……?」


 三郎田は勝負が決したと確信し、レールガンの照準を真里菜から外す。

 どんどん、動きが鈍くなっていく真里菜を遠くから眺めていた。


「いやよ、いやよ、いやだ! 絶対に、絶対に負けたくない! あたしが一番強いのよ! ゲームでは負け知らずの、最強の月姫なのよぉ!」


 真里菜の叫びに同調するように、全身からコードが延びていく。そして、そこら中に落ちている瓦礫や、実験機材を無作為に取り込んでいく。

 見る見るうちに、真里菜の体が巨大になっていく。バッテリーを破壊しても真里菜を無力化することは出来なかった。残された手段は、真里菜の頭部を破壊する。しかし、それは真里菜の死を意味する。


 三郎田は左腕のレールガンを構えると、真里菜の頭部に照準を合わせる。今なら、確実に当てる事が出来る。弾丸を発射すれば、この戦いは終わる。

 頭の中で理解していても、どうしても弾丸を発射する事ができない。最後の引き金を引くことが、どうしても出来なかった。

 どんどん膨らんでいく真里菜を見つめているしかできなかった。

 その時、構えたレールガンから紫電が迸っているのに気が付いた。次の瞬間、レールガンは頭部の近くで爆発して、激しい衝撃を三郎田に与える。その衝撃のせいか、三郎田は一時的に意識を失ってしまう。


 意識を失った三郎田をも真里菜のコードは取り込んでいく。そして、三郎田も完全に真里菜の一部になってしまった。

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