表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電人と博士の関係  作者: 鮎太郎
第二章 電人、学校へ行く
PR
21/47

山田祭にむけて

 その日の放課後、三郎田は憔悴しきった体を、メンテナンスカーに備え付けられた鉄のベッドの上に横たえていた。

 自分がメインの出し物なのに、その詳細の決定権は自分にないという、何かの罰ゲームを受けているかのような状態だった。

 ベッドの上で横になっている三郎田に柘榴が話しかけた。


「何だか楽しそうになって来たじゃないの! 山田祭! 私もウェイトレスするから、一緒にやりましょ!」


 柘榴は少し楽しそうな顔をしていた。そして、相変わらず、口にはキャンディーを咥えていた。柘榴のウェイトレス姿、ちょっと見てみたいという欲求が三郎田の中に芽生え始める。そう思うと、電人喫茶というのも悪くないかもしれない。


「まぁ、祭は好きですから、参加はしますけど、どうして、俺がウェイターなんかしなくちゃいけないんですか? 人前に出るのって苦手なんですけど……」


 三郎田は横になったまま、片手で頭を押さえる。頭痛などしないはずなのに、頭痛がしているような錯覚に陥る。


「これを機会に、苦手意識を克服って言うのはどうかしら?」


 また、何か変な事を思いついたようだ。正直、ほっといて欲しい。


「さあ、私を客だと思って接客してみなさいよ」


 ベッドから下ろされた三郎田は渋々、ウェイターの真似事をしてみた。


「い、いらっしゃいませ……」


 その戸惑った言葉に、柘榴は首を振ってため息を吐く。


「駄目駄目、そんなんじゃ。もっと元気よく、お客を敬うように、大きな声で!」


 しばらく、柘榴とウェイターの練習をした。最初は嫌だったが、こうして柘榴と一緒に何かをするというのは、純粋に楽しかった。


「まあ、これぐらい出来れば、上出来でしょ」


 一通り練習がおわり、柘榴からのお墨付きを貰えた。どうでも良いことだったが、ちょっと嬉しい。

 柘榴は突然、表情を曇らせて黙ってしまった。


「君は電人になった事をどう思ってるの? こうして、祭りに担ぎ出されたりして、本当は嫌なんでしょ? 電人にされた事を、恨んでいたりしてない?」


 柘榴がのりのりで山田祭に参加したのは、自分に気を使っての事だと、三郎田は気がついた。きっと、三郎田の気を紛らわすために明るく振舞っているのだろう。

 柘榴はこの事をずっと聞きたかったに違いない。でも、怖くて聞けなかったんじゃないかと、三郎田は思った。


「そんな事はありませんよ。俺、本当は柘榴博士に感謝してるんです。電人を作った人があなたのような人で本当に良かったと思ってるんです」


 柘榴は呆然として、口を開いた。


「……感謝?」


「そうですよ。何だかんだで俺の世話をしてくれるし、テストとか言って、俺の母校に連れてきてくれたし、データ採取だとか言いながら、クラスの副担任にまでなってくれて。いつも、俺のゲームに付き合ってくれた。余計なお世話だとも思う時はあったけど、柘榴

博士じゃなかったら、こんなに毎日が楽しくなったと思うんです」


 三郎田の言葉を聞いても、柘榴は困惑した表情をしていた。


「らしくないですよ。いつもみたいに、笑顔でいてくれればいいんですよ。そんなにうろたえるのは似合いませんよ」


 柘榴は自分が三郎田に慰められているようで、恥ずかしくなり視線を逸らす。口に咥えたキャンディーの棒を激しく動かす。そして、いつものように笑顔を整える。


「ま、まあ、今日みたいな日もたまにはあるわ。それより、山田祭、絶対楽しい祭にするわよ。私も参加するんだから、当然君も協力しなさいよ」


 柘榴の言葉に三郎田は「はいはい」と軽く答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ