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ZERO-against-  作者: 凪葉音
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ZERO--FILE4

ここは・・・?


レオは、暗闇の中にいた。

何も見えない。

「・・・っ!」

怖くなって、思わず自分で自分を抱きしめた。

「白い・・・服」


確か、ここに来たときは、違う服を着ていたはずなのに・・・。


「これは・・・夢?」

レオは恐る恐る周りを見渡してみた。

暗闇。

暗闇。

「あ・・・」

その中で一箇所だけ、淡く光る場所を見つけた。

レオはその光に導かれるようにゆっくりと歩を進める。

「何・・・」

バシュッ!

「う、わ・・・!」

レオが光に触れた途端、水柱のように光が噴出した。

そこで彼が見たものは・・・。

「・・・・・ぼ、く・・・?」


過去の自分の姿であった。


一週間、ずっと習い事ばかりだった自分。

大金持ち達が集まるパーティーに招待されたときの自分。

厳しい祖父母、両親、優秀な兄の中で、いつも劣等感を引きずりながら生きていた自分。


「・・・」

レオは光の柱から思わず目を背けた。

「っ!!」

過去の自分から逃れようと、走り出してすぐに、何かにぶつかった。

「あ・・・!」

鏡もないのに、『レオ』がいる。

ただ、その『レオ』が纏う服は辺りの暗闇と同じ色。

『・・・・・・』

『レオ』は、今にも泣き出しそうな表情で、自分を見つめてくる。

ジャラ・・・。

レオが一歩後ずさりしたとき、鎖がぶつかり合う音が聞こえた。

「・・・あ、あ・・・」

よく見れば、『レオ』の両足首に、鎖がつながれている。

そしてその鎖の先には、鉄球。

「う、わあぁあ!!」

レオは、思わず暗闇の中を走り出した。


何も言わなかった、『レオ』。

一切の感情が抜け落ちたかのようなあの表情。


全てが、その全てが、過去の自分とリンクする。

「やめて!!」

暗闇の中、レオの悲鳴だけが木霊する。

「助けて!!知らない!!知らない!!!」

ジャラ・・・。

「っ!」

振り向けば、鎖に繋がれた自分。



「やめて――――――――――!!!!!!」



レオはついに泣き叫んだ。



「うわ!」

カプセルの中からの悲鳴に、ユイは思わずクロスワードを中断した。

「うおぅ!?」

隣では、悲鳴に驚いたトキワが床に落ちている。

「ちょっと、何?クロスワード、もうちょっとで完成だったのに・・・」

床に転がっているパートナーを無視して、ユイは休憩スペースの机をひらりと飛び越え、カプセルの所まで文句を言いながら歩み寄った。

「痛ぇなぁコンチクショー・・・」

トキワもカプセルまで歩み寄ってきた。

「一体何でこんな目に・・・、と。マスター、どーしたの?つーか何でココに居んの?」

「随分失礼な挨拶をどうも、トキワ」

ユイは、と言えば、クロスワード中断の原因となったカプセルの中のレオに向かって何やらブツブツ文句を言っている。

「ユイ、そのクロスワードの答えは、セントラル、だよ」

「は!?・・・・・・・・・サンキュー、マスター」

夢中になっていたクロスワードの答えを言われ、一気に興味を失ったユイは、不機嫌丸出しの顔で、雑誌をダストボックスに投げ入れた。

見事シュート。

「あんたたちがサウスから情報を一切持ってきてないって言うから、マスター呼んだのよ」

ミズキは、やれやれ、とデスクチェアに腰掛けた。

「「オッス、マスター、久しぶり」」

声をそろえてやる気ゼロの挨拶をした二人に、アサヒは「はいはい」と適当に答えを返した。

アサヒとしては、レオの容態のほうが気になるのだ。

「別におかしな点は見られないけど・・・震えてるね」

カプセルの中のレオは、何かに怯えるようにして震えている。

「「寒いんじゃない?」」

二人の発言は、ミズキもアサヒも綺麗にスルーした。

「・・・!分かったわ、マスター。夢よ」

デスクチェアから立ち上がり、カプセルを覗き込んだミズキは、レオの様子からして、一つの原因を探り出した。

パソコンのキーをいくつか連続に押して、レオの16年間を割り出す。

「ふーむ・・・なかなか辛い過去の持ち主みたいだねぇ」

アサヒも納得したように頷き、大量のチップの中から「メモリー・チップ」を取り出し、先ほどと同じようにレオの腕に装着する。

ヴン、と大型ディスプレイに、レオの記憶が次々表示されていく。

「うわー・・・スライドショーみてぇ」

「でもあんまり面白くないよね・・・」


この二人はどこまで不真面目なんだ。


アサヒとミズキは揃って同じことを考えた。

だが、アサヒは思考の切り替えが早い。

「さて・・・まずはこの子を目覚めさせることが必要かもね」

レオの16年間を表示しているパソコンの隣のパソコンを起動させ、チップを操作し始めた。

「何だ?この緑の液体・・・」

「うっわ・・・シャインの奴らってこんなの飲んで生きてるわけ?信じられないね」

大型ディスプレイに夢中の二人を無視して、アサヒはテキパキ作業を進める。

もちろんミズキはそのサポートだ。

・・・ピーーー・・・!

『作業、終了しました』

数時間後、カプセルの音声システムが、レオに関する全ての情報を外に出したことを告げた。

「あっ!おい!消すなよ!!」

大型ディスプレイに映されたレオの記憶を見ていたトキワは、映像が中断されたことに抗議の声をあげ、ユイに至っては床に転がって寝ている。


部屋に戻れ。


アサヒとミズキはまたもや同じことを思った。

しかしそこは熟練の統括者。

動じることは無い。

「・・・さて、あとはこの子が目を覚ますまで待とうか」

「分かったわ、マスター」

二人はデスクチェアに腰掛けた。

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