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3.決意

「俺の負けだ。」


浩幸がそう宣言し、僕は竹刀を下ろした。


「それで…思い出せたかよ??」


浩幸がこっちに視線をキッと向け聞いて来る


「ん??…あぁ、前に一度会ったこと??」


なに、忘れてたことそんな根に持っていたの…?


「あ―、まぁそれもだけどよぉ…」


「…??」


違うのか。いや、でも他に何を思い出せって??

僕は心当たりを探ってみたがわからない…


「剣道だよ」


「は??」


「…感覚は思い出せたかって聞いてんだよ。しばらくぶりだろ??」


「うん…まぁ、勘は今ので戻ってきたかな…??」


え―つまり、何が言いたいのか良くわからない。


浩幸は地面にごろんと大の字に寝っ転がった。


「お前。このままこっちにいると死んじまうんだろ??


でも向こうの世界に渡っても滅ぶ原因をどうにかできなきゃやっぱ死んじまうじゃねーか。


なにせファンタジーな世界だ。剣道だって役に立つかも…しんねーじゃん。


まぁ、あれだ。死なきゃ良いんだ。」


え、何。つまり心配してるってことかあーそうか…


嬉しいけど、何というか…浩幸らしくない。


「…なんだよ、らしくない心配なんてしないでよ。

それに、僕の剣は見ただろ??だから大丈夫だって。」


「…さっき反則したじゃないか」


「それはお前が超能力紛いなもの使うからじゃないか…」


浩幸は、あのとき僕の表情で動きを先読みしつつ

自分の経験と照らし合わせ躱していた。


言葉で言うのは簡単だけどその読みが全てあたり、その全て守りきったのだから凄まじい威力だった。


普通にやっても何も通用しない。そう僕は判断をし、

だからそこで僕は胸突きを放った。胸突き…というか"突き"全般は中高では禁止されていて、


恐らくあまり受けた経験がないだろうと思ったからだ。


思った通り彼はそれを読んでは来たけど、読んだにも関わらず"突き"に対しての対応に戸惑い、反応が遅れた訳だ。


「俺のは超能力じゃなけりゃ、反則でもねぇよ」


くつくつと浩幸は笑っていた。笑うだけ笑ったかと思うとおもむろに浩幸は立ち上がり言った。


「どうせ暇なんだろ?なら少しでも稽古しようぜ」


「え…ここで?」


浩幸は竹刀を構えニッと笑い言う。


「いーじゃねーか。向こうにいったとき少しでも役に立つようになっ!」


「…じゃぁせっかくだし頼むことにする。

(浩幸にこんなお人好しな面もあったなんて…意外かも)


「(…まったく。毎度毎度失礼な奴め)…行くぞ!」


悠はそれに頷いくことで応える。


「「はぁぁぁああ!!!」」


『ガキィッ』『ガン』『ガがッ』


それからしばらくは竹刀がぶつかり合う音が空き地中に響いていた。


~~~


「はぁ~疲れたぁ」

結局僕らはあのあと夜まで稽古していた。そして今はもうすでに自室に帰ってきて入浴中だ。


「いってぇ~あざになってんじゃんか…」


あざをさすりながら先ほどのやり取りについて考える…『剣道が役に立つかも』か…。


実際僕は向こうの世界に行って何をすれば良いんだろう。

…剣が役に立つっていうのは闘うっていう…そういう可能性もあるっていうことだ。


その場合はやっぱ命がけってことになるよね…やっぱり。


…世界は守りたい。でもそのためには命をかける必要がある。

僕が死なずとも、世界の救済に失敗すれば…世界は滅び、結局僕も死ぬ。


世界を救うために命をかける、

でもそのために命を落としてしまったら、やっぱり世界が滅ぶんだ。


なんだよそれ。なんなんだよ…。


悠はふらふらとベッドまでたどり着くと倒れ込む。


…このまま世界も渡らないで、ここで絶命したほうが楽なんじゃないか。


そんな風なことを思って悠はハッとなった。ほっぺたをパチンと両手で叩く。


こんなんじゃダメだ。


「あ"ー!!!これ以上考えていても仕方がない…もう寝よう」


~~~


そして悠は夢の中で目を覚ました。そこは白い空間だった。

―白結界…その名称を思い出しながら周りを見渡した。


「神様…?それとも地球の人…?」

それとなく2人に呼びかけてみるが、返事がない。


白結界を作れる人物なんて、あの2人しか思い浮かばないのだけど…。


『違うよ。もうひとりいる。』


背後から突然声がした。


「誰…!?」


『あなた』


「…?」


『あなたがこの白結界を作ったの。』


いや、僕は君が誰かって言う意味で言ったのだけど。


まぁ、さっきのやり取りじゃそうともとれるか。


悠は目の前に立つ人物を見た。

肩ぐらいまで綺麗な金色の髪がすとんとおりている。前髪から覗く大きな碧い眼はくりっとしていてなんとも愛らしい。

純白の白いワンピースに身を包む可憐な少女は


悠の目にはさながら天使のようにしか見えなかった。


あれ…?でも顔に何か、見覚えがあるような?どこだったかな…わかんない。


「…って僕が作ったのこれ!?

って、なんのために?」


『無意識だと思うけど…私に会うために。』


そうなの?いや、だって誰だかわからないんだけど…


『わからないの?』


あ…えと、やっぱわからないデス。


すると少女は悲しそうな、残念そうな顔を見せると寂しそうに笑った。う…ごめんなさい。


『いい。私は情報を貰ってばっかりだったから…』


『あなたは私そのものって言われるのよね。私は世界。』


え!?えぇぇぇ!!?


ちょっと待って、世界って人の姿してるの!?


『それは違うわ。世界には漠然としたものだけどその世界の意志があるの。

世界だって大きな生き物みたいなものだから。世界には姿はないのだけど、白結界は"形のないものを具現化"する空間だから、

そういった漠然とした意志も具現化出来ちゃうわけ。』


つまり無理やり形にしたらその姿になったと??


『そう。この自我だって仮のものよ。白結界が解かれればまた"漠然"とした意志に戻るもの』


そうなのか、なんというか…。


僕の都合で自我が生まれたと途端、消えちゃうなんて…申し訳なさすぎる…


『大丈夫。仮とはいえ一度生まれたこの自我は

この世界で白結界が形成されるたびに生まれるから、

次にあなたが会いに来てくれるまで眠るようなものよ。』


その言葉を聞いて安心した。ほっと息をついてると、少女が


『やさしいんだね。悠は。』


と微笑みながら褒めてくれた。


「そう?でも、それって君もやさしい子だって事だよね♪」


僕らは、形は別々だけど同一な存在らしいから。


すると彼女は「そうかな?、そうだったら良いな♪」と言って笑っていた。うん、素直で良い子だ。


「…君には名前はないの?」

『あるよ。私と君の世界は"フィリアル"って言うの。だからその意志の集合体の私はフィリアル。』


フィリアル…それがこの世界の名前。何故か懐かしくて胸が暖かくなる。

そんな様子に彼女―フィリアルは微笑むと


『悠は、世界との対話を求めた。だから私という自我が生まれたの。と言うわけだから、さぁ…何でも聞いちゃって!』


と、とめどない笑顔でそう言った。


…。僕は彼女のまぶしい笑顔を見て考えていた。


僕は彼女のまぶしい笑顔を見て考えていた。


さっきは恐怖と不安のあまり、諦めて楽な方に逃げようとしていた。…。


それがどういうことなのか、充分理解していたはずなのに…なんか罪悪感でバツがわるくなってしまう。


その悠の様子を見て思うところがあったのか、フィリアルが


『怖くたっていいんだよ?ううん、…私も怖い。』


と、神妙な面もちで言った。悠は顔を上げフィリアルの顔をじっと見る。


『ただ逃げたくはない。まぁ私は世界だから逃げるとかはないけどさ、

ここにいるみんな、ずーっと一緒に生きてきた命だもの。逃げたくないよ。』


「それは僕も同じ…。そうだよ、ずっと見てきたんだ…。」


『うん。あなたは運命に立ち向かう。でもそれはひとりでじゃない。私やあなたが見守ってきたみんなと力をあわせるの。



なんだか胸が暖かい。そうか…今まで僕はひとりでやらなきゃって、勘違いしてたけど…ひとりじゃないんだ。


「みんながいるなら怖くない。頑張れそう…な気がしてきた。」


それを聞いたフィリアルはニコっと笑った。


それからは、決意を固めたこともあって落ち着いた僕はひとつひとつ疑問を質問していった。


世界の名はフィリアル。

文明は僕が育った世界の中世ぐらいのレベルらしい。


そこには3つの種族がくらしている。人間とエルフ、そして魔族である。


人間と呼ばれるその種族はこちらで言う人間そのもの。その外見は地球に住んでる人々と変わらない。ただこの世界には魔法があって、彼らも体内に魔力を持っている。


そしてエルフ。彼らは自然を重んじ、自然の中で所謂原始的ともいえる生活をしている。彼らは体内に持っている魔力が非常に高い。ちなみにエルフとは言うが、寿命はそこまで長いわけではないらしい。


魔族は、魔力を司る者で魔導に特化している。魔力はエルフ族ほどではないが、その扱いに長けていて魔法を加工して道具にしたり、複雑な魔法式も扱うことが出来るらしい。


そう言えば夢で初めて人が出てきたときも見た気がする。


エルフはファンタジーものに出てくるイメージそのままだった。


それとあのダークエルフみたいのが魔族かぁ。魔族…もうちょっと別の呼び名はないものか…


…19歳になったばっかで、こんなこと言うのはおかしいかもしれないけど、


僕からしてみたら、この世界に生きる命はみんな自分の子供みたいに思える。それはフィリアルにとっても同じみたいだ。


フィリアルが言うには、

人間と魔族の間には数百年も前からずっと深い溝があり、対立しているらしい。


そして近い未来、世界を巻き込む大戦を引き起こし、魔族軍側が戦争の終盤に開発、導入した魔導兵器により世界が滅ぶことになるのだという。


戦争を止める…。そんなことが可能なのだろうか。でもやらねばならない。

とりあえず、目的も『世界を救う』っていうものよりもう少し具体的になって『戦争の勃発を防ぐ』と、

ほんのちょっと明確なものになった。

いや…、まだ途方もない話だけどね…。


『ま、こんなところね。またいつでも聞きにに来てよ。』


「うん、フィリアル。ありがとう」お礼を言われ、フィリアルは嬉しそうにしていた。


…励まされたよ。ありがとう―。


『グググッ!』


ここでいつものように体が引っ張られるような感覚に襲われた。…もうすぐか。


「もう、時間みたい…また会いに来るよ、フィリアル。」


『うん…。』



強く光が瞬いたかと思うと、


その場から悠はいなくなっていた。

『悠…またね。』


そしてフィリアルは目をつぶると白い空間とともに光になって消えた。


~~~


ん…。悠はむくりと起き上がり、周りを見渡した


「今何時だろう…」


その目は目覚まし時計を捉えた。むぅ…もう1時か、最後の学校サボっちゃったな。


―まぁ、起きてても行かないであろう事は置いといて


夢での少女との話を思い出す。


「フィリアル…」


僕の夢の世界の名前がわかった。うん、なんか僕の趣味丸出しすぎじゃない…?


あまりにもネーミングがファンタジックでちょっと恥ずかしいような、でも楽しみに思ってたり…変な感覚だ。


今日の9時…、あれ!何分だったんだっけ…?まぁいいや、9時までには行こう。

ともすると、あと8時間か。何をしよう。特にしたいことはないしなぁ…


う~ん。


『グーっ』


………


まぁ、とりあえず昼どきだし、ご飯を作る事にしよう。


これでも自炊はしてきたから料理は得意だし、好きなんだ。

毎日マ〇クの浩幸なんかとは違うんだからな。


食事を済ませるとそのあとは夕方まで適当にゴロゴロしながら過ごしていた。


テレビの下らない番組を見ながら、ふと悠は思った。


中世くらいの文明って言ってたっけ?いや、その世界観自体はものすごく良いんだけど


きっと携帯もパソコンもテレビも向こうの世界ではないんだろうなぁ~ってつい思ってしまう。


そこがなんかちょっと、残念…というか不便な気がする。

あっ、でも魔法があるってのは魅力的だな。


そうか……。もう


なんにしたって、こっちの世界とはお別れなんだよね…。


悠は時計に目を運ぶ。


鑑賞に浸ってる場合じゃない。そろそろ準備しなきゃ…。


悠は暗くなりかけた窓の外を見ていた。

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