2.時間
僕は視線だけとなって空を飛んでいた。そう…今、夢を見ているのだ。
でもこの世界は夢の中だけの虚構じゃない…ここは僕自身。
僕が生まれると決まったときにできた世界。
僕が生まれたときにできた命。
神様達はそれが無くなると、滅ぶと言っていた。
――させない。そんなことは僕が、させない。
この夢の中を目的を持って飛び回るのは初めてかもしれない。
ただ、なにか情報が欲しかった。世界を知りたかった。
でも、事が起こるのはこちらでは約50万年後らしく、めぼしい情報は何も手に入らなかった。
ふと引っ張られる感覚。「目覚めてしまう!!」…そう思ったときにはすでに遅く、意識は覚醒し始めた。
『ジリリリリリ!!!!!!』
けたたましい音が鳴り響く。
「ん…うるさい。」
先程まで、夢の中ではあんなに意識が鮮明だったのにこの瞬間はやはり眠気と脳みそが凄まじい攻防を繰り広げている気がする。
それでもなんとかベッドから抜け出ると目覚ましを止めに行った。
「結局原因が何かもわからなかったな…」
大学は…うん。行く気にはなれない。それに…
『この世界での生活を捨て』
かぁ…。二度と戻ってくることはかなわない…そういうことだろう。
でも何をしようか。悔いの残らないように…?下手に誰かに会っても寂しくなりそうだ。
『ブーッ、ブーッ』
そのとき携帯が震えた。僕は家でもマナーモードだ。
あ…浩幸だ。ふむ、メールみたいだね。
『
件名:いよお!
本文:
大学来ないのかぁ~?
いや、サボるなら誘ってくれよ~。
俺今抜けだして近くのファミレスいるから来いよな~!
』
あいつまた勝手なことを…まぁ良いかあいつなら寂しくなることもないしなぁ~。
悠はのんびりと支度を始めた。
~~~
俺の名前は坂井浩幸。今は学校近くのファミレスで暇を潰している。
悠のやつがサボったせいで俺もすっかりでる気を失っちまった。
あぁ、悠ってのは俺の大学からの友人だ。まぁあいつが言うにはな…
いや、事実だぜ??
実際大学で知り合ってどうも馬があうからつるんでるんだしな。
確かにそうなんだが…。あいつが覚えてないだけで俺ら一回会ってるんだよな、高2のときに。
俺は小学生のときから剣道をしてた。だから周りの奴らよりは強い自信はあったし、実力もあったとは思う。
あの高2の全国の個人戦初戦。対戦相手は七矢っつーチビ。まぁわかるだろこいつが悠。
剣道は体格の差がハッキリでるスポーツだからな。俺はラッキーとしか思わなかったよ。
んでよ、審判の始め!の合図のあと即座に打ち込んで来るんだわ。
面だった…ハズだった。それはなめらかに胴に変化する。
まぁコレは普通に良くある手…、むしろ基本なくらいだ。
しかし奴のそれはレベルが違った。俺は手慣れた対応で迎えた。
そのはずなのに間に合わず、やつの竹刀は綺麗に俺の胴を打った。文句ない一本だった。
残りの2本も似たような形でとられた。奴は模範的な手しか取らないのに見切れない。
自信のあった俺の剣道は奴の剣道に負けた。
悔しかったさ。しかし俺は負けた事すら忘れるくらい奴の美しくすらある剣に見とれてたんだ。
そんな奴もそのあとベスト4を決める試合で負けた。やっぱり最後は体格と豪の剣の前に散った。
だけど負けても、それでもやつの剣は美し過ぎた。
あの技を俺も欲しいと思っちまったんだ。
俺はそのあと剣道によりいっそう励んだが、あの剣道は俺には出来ないと悟り俺は剣道をやめた。
そのあいつと俺はこの大学で再会したわけだがあいつは俺のことを覚えちゃいねぇ。
まぁ試合開始直後に瞬殺した相手だしなぁ。
けどあいつが剣道をやめたことだけは納得いかなかった。
…とはいってもまぁ、俺はあいつに剣道押しつけたりはするつもりないけどな。いつかそれとなく聞いてみようかと思う。
それとあいつにはもうひとつ気になる理由がある
それはアイツの夢の世界の話だ。それはまるで…
『からんっ』『いらっしゃいませ―』
ん??あぁ、どうやらあいつが来たみたいだぜ…
~~~
ん~。お、いたいた!
「おい浩幸お前なー。学校行ったならちゃんと授業出なよー」
「いーじゃん、いーじゃん今日は自主休講日なんだぜっ!!」
浩幸は鼻歌を歌いながら答えた。
浩幸…。こいつには言うべきだろうか??いや、あんまり下手なこというと説明がめんどくさいし…
「お~い」
よしっここは黙…
「おいってば悠!」
「うわぁ!?何、デジャヴ!?」
「何言ってんだ??それよりお前…」
な、なに?浩幸がいきなり真面目な顔しだすとキ…
「それ以上は言うな」
ビクッ
いや、そもそも言ってすらないんだけど…
その間も浩幸はじっと悠の顔を睨んでくる。
「お前、なんか隠してんだろ。」
「なっ…!」
こ、こいつ…
「ビンゴだな。ん~?その顔は夢のことか?
ふむふむ…!またビンゴみたいだな(ニヤリ)」
「ちょっと待ってくれ!いくら何でも…」
怖い!いくら何でも怖すぎる!
『おれ人の表情読むの得意なんだよね~』
が浩幸の口癖だけど、もはやこれ超能力じゃね!?
浩幸の目が『話せよ』と物語っている。
なんで今日に限って!いつもは夢の話なんてそんな聞いてこないのに…
「隠されると知りたくなる…それが人の性だぜ?」
……何を今更。この男はこんな性格だった。
なんか来たことを物凄く後悔した。
でもまぁ…浩幸だし…
「はぁ~あぁ、分かった。話すよ…」
~~~
俺はこいつの話を聞いた。昨日の事も全部な。どうやら神様は可愛いらしい(顔に出てた)。
嘘みたいな話だが、こいつほど顔に出やすい奴が嘘なんかつけば即座に気付く。
故に嘘はついてない。
こいつがいなくなる??…俺は焦った。馬鹿やろう…時間がなくなっちまったじゃねえか。
「おい悠。なら俺の最後の頼みだ…聞け」
こんな事を黙ってたこいつに怒り半分、ふざけ半分でドスの聞いた声で言ってやった。
~~~
ここは人があまり来ない空き地だ。僕はちょっとビビりながらもここで浩幸を待っていた。
なかなかどうしてか、怖かった。くそぅ…浩幸にビビるなんて…屈辱だ。
「ったく、おめーはいつも失礼な顔してるよな。」
そこに浩幸がやってきた。背中に何か背負っている。
そして取り出したのは…
「…竹刀?」
そしてもう一本取り出して、渡してきた。
「え…なに…」
「俺と試合しろ」
ちょっと待って、ちょっと待って。…僕、浩幸に剣道経験者って言ったっけ?
それに一応全国行ってるんだよ?防具もなしって…馬鹿!??
「ハンッ…心配には及ばなねぇ。お前の剣は俺には当たらねぇ」
浩幸は吐き捨てるように挑発する。
カチン
「…何だって??」
今の言葉には頭来た。僕を外見で甘く見てるんだろう…。思い知らせてやる。
(へ、頭来てんだろ。顔に出てるぜぇ~俺はもう決してお前を外見では甘くみない。)
互いに竹刀を構える。
そして…先に動いたのは悠だった。2年前とあのときと同じ上段の構え…
10センチ以上の身長差を感じさせない鋭い斬撃。途中でなめらかに変化して胴へと落ちていく。
しかし浩幸は不適にも笑うと最小限の動きでそれを交わした。
そしてすかさず面を打つ。
な…!受け止めもしないで躱された!?しかも反撃まで!!
空を切って体勢を崩した悠だが、なんとかその面をいなす。
そして何かを確信ように浩幸を見た。
「浩幸…君は…2年前に試合したね。」
「…!」
『ガンッ』
2人の竹刀が交差する。お互いに力をこめる。浩幸の方が力は強いみたいで悠は押され始めた。
「ちっ」
悠は浩幸の竹刀をはじくと離れた。
「嬉しいねぇ…何で気づいた??」
「太刀筋がね。あの中ではひときわ綺麗だったから」
「…?一瞬で負けたんだけどな…で、なんだ?そのまだ腑に落ちなさそうな顔は」
悠は黙って連撃で籠手を打ち、最後に胴を打った。
しかし浩幸にいとも簡単に全て弾かれてしまった。
腕自体は変わってない…むしろ衰えた位だ。けど…、見切りのレベルがハンパなく有り得ない!
そして悠の体勢が崩れたとこに胴が放たれた。またギリギリで受け止める。
僕の考えが正しければ…
悠は浅く踏み込んだ。
(…え?)
『ギャンッ』
浩幸はそれを何とかはじいた。
「おいおい、胸突きかよ!?」
体勢を崩した浩幸にさらに悠は追い討ちをかける
悠は浩幸の足本に右足を滑り込ませ…
「え…ちょ…待っ」
なぎ払った。
浩幸は体勢を大きく崩し、その直後に悠の斬撃が浩幸の竹刀を手から弾き飛ばした。
「悠…てめぇ」
「胸突きだってれっきとした剣道の技だよ??
…最後の足払いは…まぁ、ないけどさそれはお互いさまだろ??」
浩幸はまぁ、それもそうかと一息着く。
「俺の負けだ。」




