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1.世界

太陽は沈み初め、日は陰っていた。そんな夕暮れの街を歩く小柄な少年がひとり。七矢 悠である。


彼は今朝の奇妙な夢の事を思い起こしながら「天見山の祠」に向かって歩いていた。

あの男は言った『伝えねばならぬ事がある』

…怪しいことこの上ないが、悠は自然と無視する気にはなれなかった。


(今の僕、普通じゃ…ないかも。いつもなら、流石にこんなバカなことまではしていない…)


そう頭では思っていても、実際にとっている行動は全く逆である。

彼はなんとなく分かっていたのだ。男のするであろう話は、おそらくあの夢と少なからず関わりのあることだと。

そして心の底では、「あの夢」がただの夢じゃないことを願っていたのかもしれない。

そうして思考を巡らせてるうちに悠は天見山の麓にたどり着いた。そして、山を見上げ彼は呟やいた。


「祠…?」


それもそのはず、街の外れにあるこの山の名前はかろうじて知っていたものの、訪れたのは初めてで、祠など知るわけもない。


「…もしかしてこの山全部捜索しなきゃいけない系?」


悠は顔をひきつらせてボヤいた。


『はっはっはっ。そんなことはない。君なら来れば分かる』


途方にくれてる悠に、『世界そのもの』だと名乗ったあの男の声が聞こえた。


「え!?…ちょっ…あ、あの!!」


『待っているからね。』


「え、ちょっと待っ………」

……はぁ……。


それっきり声は何も応えてくれなかった。

しかしここにあの男がいるのは確かみたいだ。先へ進むしかないと悠は決心し山に入ることにした。


~山道~


山に入りしばらく山道を歩くと、そこには闇があった。日も陰り、町の灯りも届かない。悠はその闇に足を踏み入れた。


(真っ暗。ていうか何も見えないし…。っと、うわっ)


転びそうになり、とっさに側にあった木にしがみつく。


(う…危ない危ない…あぁもう。祠ってどこだよぉ~

っていうか祠って神様を祀るためのものだよね。やっぱあの人は……


『シュバッ』


…え?)


木にしがみついて心の中で愚痴てた悠は周りが突然明るくなったことに気づき顔を上げた。

そこには淡く発光している人魂のような光球が浮かんでいた。


その人魂はその場でクルッと、小さく円を描くとふよふよとゆっくり進み始めた。

そして、少し離れたところで止まると待つようにこちらを伺っている(ような気がする)。


「え~っと、もしかして着いて来いって事?」


人魂は頷くように上下に揺れた。悠はまた真っ暗になるのも嫌だし、

あの男の迎えが来たと思った方が自然だと思い、ついて行くことにした。


10分ほど歩いた頃、ひらけた場所にでた。そしてその奥にはおそらく目的の祠だろう、小さなやしろが見て取れた。人魂はその祠に吸い込まれるようにして消えていった。


するとその祠は白く輝き始め、溢れ出た白は視界を覆いつくすと瞬く間に夢のときのような白い空間を形成した。


「ここは…」


『ユウ君。良く来たな。』


「あっ。」


声のした方を振り向くとそこには『世界そのもの』と名乗ったあの男ともう一人、着物を来た黒髪長髪の小さな少女がたっていた。

外見的に10歳くらいだろうか。凛としたきつめの目が特徴的だ。


悠がその少女を認めると、その少女は口を開いた。


『ふむ。おぬしが七矢悠か。待っておったぞ。それにしてもちっこいのぅ…、ホントに19なのかぇ??』


「ちっこい…」(い、いきなりなんなのさ!!なにこの、ちょっとアレな口調の失礼極まりない小学せ…)


『ピクッ』


悠はコンプレックスでもある身長のことを指され憤慨していた。

そのため少女の無表情の上に上書きされた感情の変化に気づかなかった。


『だぁれがババァ口調のクソガキじゃぁぁぁ!!!!』


(え、ええぇぇぇえ!!???そんなん言ってな…)


ぐわぁし「んぶっ」


少女は悠に飛びつくと胸ぐらを掴みそのまま綺麗な弧を描きながら振り回した…と思いきや即座に手を離し放り投げた。


見かけは小学生程度の少女が、小柄とはいえ男子大学生を投げ飛ばしたのだ。

その光景は異常そのものだった。


「んああああぁ!!!??」


そのまま悠は訳も分からずふっとんだ。まっとうな訳などがあるものなら教えてもらいたいくらいだ。


ドサァァァ!!!


「いつつ…いったい何…」


地面に叩きつけられた体を庇いながら顔をあげると

そこには自分を投げ飛ばした少女がそびえ立つように佇みこちらを見おろしていた。


『うるさい。黙れ。妾は一度たりとも喋っても良いなどと許した覚えはないぞよ??』


理不尽だ。泣きたくなってきた。初対面じゃん…この子誰なんだよぅ…


挫けそうになっている悠を庇うように男が彼女を止めに入った


『あの…すみません、あまりユウ君を苛めないで下さい。

話が進まないじゃないですか。』


(な、ナイスです…!)


それまでは始終笑顔で傍観を決め込んでいた男だが今の悠には救世主のようだ。


『せっかくからかいがいのある小僧がきたのにのぅ~

まぁ仕方がないのぅ。ならば続きは話のあとに取っておくとしようか♪』


(うっ…)


男が"世界そのもの"ならば彼女は"理不尽そのもの"に違いない。


そんな事を思っていると、少女は今までの無表情からは想像の着かないほど"最高の笑顔"をこちらに向けていた。

「ひっ…」


『ゆ、ユウ君…本題に入ってもよろしいかな』


その様子を見ていた彼は苦笑いを浮かべながらも悠に問いかけた。


「は、ハイっ」


こ、怖くて忘れかけてたけど…、そうだ僕はこの人の話を聞きに来たんだった。


ユウが聞く体制に完全に切り替わったことを認めると男はゆっくりと語り始めた。


『まず最初にこちらにおられる御方は君の言うところの…神様だ。』


「は…?」


すると少女は満足げな表情で高らかに言い放つ


『妾はここらの世界を管理する神じゃ。 崇め讃えるがよいぞ。』


ちょ…、こんな小さな子が神様なの??だってこんな理不じ…いや、何でもないです!

小さな神様がこちらを睨んでいた。いや、でもまさか神様だったなんて…。


『そして私は前話したように、この世界そのもの。つまりこの"地球"と同一の存在なのだ。私は永い間この世界を見守ってきた。そしてこれからも見守っていくのだ。


さて…、ユウ君。』


『君は私と同様に"世界"という存在なのだよ。』


「…?」


ちょっと待って、ちょっと待って~只今整理中…只今整理中…只今整理中…

ええと…つまり?


「ん…僕も"地球"ってことですか??」


男は首を横に振る。


『そうではない。ここではない別の次元に存在する"異世界"。

君も本当は心当たりがあるだろう?』


ドクンッ。


体が熱くなった。夢の世界。

だけど僕にとってひとつの真実だったあの世界。

僕は命の進化をみた。もちろん、あの命達を疑ったことは一度もない。でも、

あの世界は嘘じゃなかった。その事実にやっぱり体が熱くなる。


『その様子をみると心当たりがあったようじゃな。』


神である少女が悠の様子を見て微笑みながら、そう言った。


―――笑うと可愛いのに。悠は彼女のその微笑みに素直にそう思った。

『……///』


あ、照れた。やっぱ神様は心が読めるみたいだ。


真っ赤になった神様は熱を取り払うかのように顔をピシャッと軽くたたくと早口でしゃべり始めた。


『と、とにかく説明をするから良く聞いておるのだぞ!?…///


ふぅ…


おぬしとおぬしの世界の繋がりについてじゃ』


世界との…繋がり?


『まず、おぬし…七矢悠がこの世に生をうけるという運命が決まったそのときに、

その世界の土台である星が形成されたのじゃ。


そしておぬしがこちらの世界で実際に生をうけたその瞬間、

あちらの世界では最初の生命が誕生したのじゃ。


「…僕と一緒に命が。(まぁ、確かに最初の夢は微生物みたいだったもんなぁ…)」


『そして世界はおぬしと共に成長してきたのじゃ。

それはおぬしの方がわかっておるじゃろう。


そしてその進化は文明をつくりまでにいたり


生態系に関してはほとんどこの世界に近い形に落ちついたわけじゃ。』


悠は考え込むかのように腕を組むと、ひとつ疑問を口にした。


「でも、なら何で僕はこちらの世界に生まれたんですか??」


…だって、これじゃ自分の家があるのに、他人の家住んでるみたいじゃないですか。


すると"地球"である彼が答えた。


『世界も他の世界から学ぶのだよ。

進化も何の道しるべもなく闇雲に進化するのではなく、


学んだ世界の生態系をモデルに行われる。


世界は自分自身である君を通して"地球"を覗いていたのだ。


実際生物の進化の過程は地球の生物の進化過程と類似していたはずだ。


まぁ、君自身の影響を最も強く受けるため若干ファンタジーチックな世界にもなってしまったみたいだが…』


(ドラゴンとかエルフとか僕の趣味のせいだったのか)


「ん…だったらこの世界は…」


『もちろん私が生まれ育った世界から学び形成された世界だ。世界から世界に様々なものが受け継がれた。

だからここは私自身であり私の故郷の子のようなものでもあるのだよ。


彼は遠い昔を思い出しいるかのようだった。


ちょっと今の話は意外だった、この世界には元になったモデルの世界があり、

この男はそこで人間として生きていたと言うことらしい。


『私たちは世界だ。

私たちのような存在は別の世界で生を受け、自分の世界に情報を送り成長させ

一生を全うした後、魂だけが世界に還り精神体となり、

世界を見守る存在となる。』


「…精神体??」


『そうじゃ。妾は神じゃから成り行きはおぬしらとは違うが、妾も生前は生きるひとりの人間じゃった。

しかし死後、魂は輪廻の輪には戻らず神としての精神体に変化したのじゃ。』


そ、そうだったのか。でも今知りたいこととはちょっと違う。


『せ、精神体の話じゃったな!』


あっ。心読まれた。


『オホンっ。

せ、精神体とはのぅ。

生命のあり方の一つでの、精神のみで実際の体を持たない状態をいうのじゃ。


剥き出しの魂とは違って形を持った精神エネルギー体じゃからの。

この形をとれるのは神族や精霊族などの高位な存在のみじゃ。悪魔などの例外はおるがの。』


『つまるところ私と神様は体がないのだよ。だからユウ君をここに招きいれたのだ。

一部の祠などの神工物ならその周辺に精神体を実体化させる"白結界"を作り出せるのでな。』


じ、神工物って…そんなものがこんな身近に…。てか白結界って。


「あの夢の時の白い空間も白結界ですか??」


『そのとおりだよ。ただ、君の世界の夢は君が自分の力を使い見ていたものだが、

あれは私が無理やり君の夢の中に力を行使して作ったものだったんだ、まぁそんなわけで君が自分の力で見た夢ではないから

普通の夢みたいに処理されて、起きたとき忘れていたらどうしようかと思ったよ』


「あぁ、だから『覚えていられたら』だったんですね。

(普通に忘れてたけど。)」


『お主忘れておったじゃろ』


ギクッ まったく…この神様は(汗)


「と、とにかく僕も寿命まで生きて人生まっとうしたら精神体になって、あの世界にいくことになる!そういうことですよね!」


誤魔化すために一気にまくし立てたが、それを聞き2人が…いや、その場が固まり一気に気まずい雰囲気になってしまった。


「え…??」


『『………』』


まさか、ここまで振っおいて、向こうの世界に行けないとかないよね…??だとしたらかなりがっかりですよ。


『ここからが本題なのじゃが…』


とうとう神様が口を開き始めた。


『妾はここらの世界の管理をしておる。その妾の任には各世界の未来予知をして問題があれば各世界本人に伝えるというものがあるのじゃが、…』


あぁつまり、何かしら問題が僕自身に起きるご予定で、前もって僕に教えてくれると。

僕だって子供の頃から世界の成長とそこに生きるものを見守ってきたのだ。あの世界に問題が起きる…それは聞き捨てならない。


そして小さき神は残酷な運命を悠に告げるのだ。


『このままでは君の世界が滅ぶ。』


悠はめのまえがまっくらになった。これが冗談じゃないことくらいは神の辛辣な表情からわかる。彼女は根は優しいのだろう。それにしても…


え…ほろ…ぶ??


『…今までの話からわかるとは思うのじゃが、世界が死滅すれば同様に世界であるおぬしも本当の死を迎えることになる。』


『そして…それは2日後なのじゃ』


「2日後!?ちょっと待ってください!!そんな…そんなんじゃ予知の意味なんてないじゃないか!!!!」

悠は思わず怒鳴っていた。

自分が死ぬといわれたことよりあの世界がなくなる…それが許せない。

…同じ意味なんだっけ??いや、そんなことはどうでもいい。


しばらく虚ろな目をしていた悠は気づいたように口をひらいた


「…、ごめんなさい。僕…」


『いや、よい。妾も配慮が足りなかったかもしれぬ。』


『すまぬの。この世界と君の世界では次元が違うからの。時のながれが違うのじゃ。

こちらの1日はあちらの26万年。ことが起こるのは52万年ほど先の話じゃ。』


そうなのか…。そんな先のことを予知してくれたのに…怒鳴っちゃってごめん…

神様は首を横に振って笑ってくれた。


そして隣にいた男が口を開いた


『君には明後日の21時34分20秒。その時刻にこの世界での生活を捨て、君の世界へ渡ってもらう。』


「…?」


『私はこの世界を司るものなので、ユウ君の世界に直接干渉は出来ない。

神様もひとつだけの世界にある一定以上の力は行使できない、

だから君の世界を救うことはその世界そのものである君にしかできないんだ。』


世界を救え…る…?

僕の手であの世界を守れるの??


『もちろんじゃ、妾もその一定のギリギリのラインまでの神力はおぬしに授けるし、協力は惜しまぬからの』


神様はそういいながらニカっと笑い、Vマークを作り言った。


『そう暗くなるな。まだ世界は救うことができる。ユウ君はそのためにも明後日は遅れずに来るのだよ』


地球の人も微笑むと優しくそう言ってくれた。


「帰って気持ちを整理してきます…」


『うむ。その方が良かろう』




~~~


そして僕は2人にお礼を言うと帰路に着いた。どう帰ったかは覚えてない、


僕は家に着いたとたんわき目も振らずにベッドに潜り込んだ。

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