第6話 干渉率百に届かずとも
暴走寸前の唸りが、第七層を震わせていた。
胸部炉は半壊。
背部炉は異常発光。
床に亀裂が走り、天井から砂が落ちる。
【暴走確率:74%】
猶予はない。
「位置固定!」
俺の声が反響する。
リリナは歯を食いしばり、剣を構える。
ミレイは氷の魔法陣を展開。
ティナは震える手で魔力を練る。
レオンは後方で待機し、いつでも斬れる体勢。
「二段階干渉、最終試行!」
ログを最大表示に切り替える。
【共鳴理論 仮説B】
【成功率:24%】
低い。
だが、ここまで積み上げた。
「背部から揺らす!」
ティナの魔力が、波となって広がる。
背部炉が揺れる。
【位相ずれ:0.09】
「ミレイ、冷却!」
氷霧が包む。
出力が一瞬だけ落ちる。
【位相ずれ:0.14】
「リリナ、胸部三割!」
「了解!」
炎が炸裂。
胸部炉が発光。
背部炉が引きずられる。
【干渉率:48%】
まだ足りない。
ゴーレムが吠える。
衝撃波。
氷壁が砕ける。
ティナが膝をつく。
「……もう、少し」
限界が近い。
俺は走る。
正面へ。
「カイル! 前に出るなって!」
リリナの叫び。
だが、今は必要だ。
背部装甲の隙間がわずかに開く。
俺は手をかざす。
直接干渉はできない。
だが、波形を読むことはできる。
ログが視界を覆う。
【胸部炉:4.7】
【背部炉:5.08】
ずれは0.38。
まだ遠い。
だが。
波が重なりかけている。
「レオン!」
「なんだ!」
「一撃、胸部に最大出力。ただし一点集中!」
レオンが眉を上げる。
「理論に俺を組み込むのか」
「力は否定しない。制御する」
一瞬の静寂。
次の瞬間、レオンが踏み込んだ。
剣が閃く。
胸部炉に直撃。
轟音。
魔力が爆ぜる。
【位相ずれ:0.22】
「今だ! ティナ、全力!」
「……うん!」
光が溢れる。
背部炉が大きく揺れる。
【位相ずれ:0.31】
「リリナ!」
「任せて!」
炎剣が胸部に叩き込まれる。
二つの波が激しくぶつかる。
【干渉率:79%】
「足りない……!」
ゴーレムの体が裂ける。
背部装甲が完全に開く。
内部の第二炉が露出する。
「カイル!」
リリナの声。
俺は叫ぶ。
「レオン、背部を斬れ!」
「了解!」
剣が走る。
第二炉に深く食い込む。
同時に、ティナの魔力が波を作る。
【干渉率:94%】
あと少し。
ほんのわずか。
「ミレイ、凍らせろ!」
氷が内部に侵入する。
魔力の流れが一瞬だけ固定される。
その瞬間。
二つの炉の波が、完全に重なった。
【干渉率:100%】
甲高い音が響く。
光が爆ぜる。
だが、爆発ではない。
内部から、崩れる。
ゴーレムの動きが止まる。
胸部も背部も、同時に沈黙。
【暴走確率:0%】
静寂。
粉塵が舞う中、巨体がゆっくりと崩れ落ちた。
完全停止。
誰も動けない。
数秒後。
リリナが大きく息を吐いた。
「……やった?」
ミレイが炉を確認する。
「反応なし。停止確認」
ティナがその場に座り込む。
「……おやつ、十倍」
「やりすぎだ」
レオンが剣を収める。
俺を見る。
「理論は、完成したか」
「……いや」
ログを確認する。
【共鳴理論 成功】
【成功率:24% → 実測成功】
【理論精度:上昇】
成功率は低いままだ。
だが、実証した。
「まだ不安定だ。でも、止められる」
レオンは小さく笑った。
「面白いな、お前は」
「褒め言葉か」
「ああ」
その時。
ゴーレムの残骸の奥。
床が音を立てて開いた。
階段。
暗い、下へ続く道。
誰も知らないはずの構造。
【未登録階層 検知】
「……第八層」
ミレイが呟く。
冷たい風が吹き上がる。
奥から、何かの気配。
ぞくりと背筋が震える。
レオンが目を細める。
「模擬ではないな」
「違う」
俺のログが、勝手に反応する。
【未知対象 観測開始】
【解析不能】
胸が高鳴る。
恐怖と、興奮。
倒せない敵を、倒せる形にする。
それが俺のやり方だ。
だが。
この先は。
今までの延長ではない。
第七層は終わった。
だが本当の試練は、ここからだ。
階段の奥で、何かが蠢いた。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




