第27話 主核の鼓動
王都は、ラーディアとは比べ物にならない規模だった。
巨大な外壁。
幾重にも重なる城郭。
塔が空を貫き、街全体が一つの構造体のように整っている。
「……でかい」
リリナが素直に呟く。
「人口はラーディアの十倍以上よ」
エリシアが淡々と答える。
「王都は七核ネットワークの要所」
門をくぐった瞬間、背筋が震えた。
【王都地下核 反応:強】
【出力:安定中(高)】
……違う。
ラーディアの断片とは、格が違う。
これは“主核”。
都市の心臓ではない。
国家の心臓。
「感じるか」
隣でルドガーが言う。
「はい」
「暴れてはいない。だが常に限界近くで均衡を保っている」
「均衡が崩れたら」
「王都は消える」
淡々と告げる。
冗談ではない。
地下へ案内される。
何重もの封印。
幾層もの魔法陣。
巨大な空洞の中央に、それはあった。
蒼白に輝く巨大結晶。
ラーディアの核の十倍はある。
【主核 出力:高安定】
【供給経路:複雑(多層)】
線が、無数に見える。
七方向だけではない。
枝分かれし、網のように広がっている。
「……これが」
「王都主核」
エリシアが静かに言う。
「七核の中でも中枢に近い」
俺は一歩近づく。
ログが自動展開する。
【核ネットワーク可視化 拡張】
【帝国側反応 検知】
……遠方。
赤黒い波形。
「帝国の核が出力を上げています」
「分かるのか」
ルドガーの視線が鋭くなる。
「周期が速い。人工干渉の痕跡があります」
エリシアが息を呑む。
「意図的に圧を偏らせてる」
「実験都市を作っている可能性が高い」
「実験……?」
リリナが顔をしかめる。
「魔物を発生させて?」
「制御可能な暴走かどうか、試している」
背筋が冷える。
「止めないの?」
「止める」
即答する。
だがルドガーは冷静だ。
「王都を空にするわけにはいかん」
「遠隔干渉で抑えられます」
「可能性は」
【遠隔抑制成功率:39%】
「低いな」
「でも上げられます」
「どうやって」
「主核の位相を一時的にずらす」
地下空間が静まり返る。
「主核を触るのか?」
「触らないと間に合わない」
リリナが小声で言う。
「国家デビュー早すぎない?」
「選択肢がない」
エリシアが真剣な顔で言う。
「主核に干渉すれば、七核全体に波及する」
「分かってます」
「失敗すれば、王都が臨界」
「分かってます」
沈黙。
ルドガーが言う。
「覚悟はあるか」
「都市一つでは足りないと決めました」
主核が、低く脈打つ。
どくん。
【七核同期率:上昇】
遠方の赤黒い波形が強まる。
【帝国側出力:増大】
「時間がない」
エリシアが言う。
「帝国は加速している」
俺は主核を見上げる。
巨大な結晶。
国家の心臓。
「……制御する」
「利用ではなく?」
「制御です」
ルドガーの目が細まる。
「帝国は違う答えを出している」
「だからこそ止める」
遠方の波形が、さらに強くなる。
【実験都市反応:臨界接近】
リリナが拳を握る。
「早くやろう」
エリシアが俺の隣に立つ。
「理論を共有するわ」
主核の前で、二人の設計者が並ぶ。
遠く。
帝国の誰かが、同じように核を見上げているかもしれない。
制御か。
利用か。
七核を巡る思想戦が、ついに始まる。
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