第24話 七つ目の星
ラーディア出発前夜。
街は祝祭のように賑わっていたが、俺は城壁の上に立っていた。
静かな夜風。
澄んだ空。
そして――
黒い星。
ひとつ。
ふたつ。
みっつ。
よっつ。
確実に増えている。
【七核ネットワーク 活動点:4】
【同期率:上昇中】
「やっぱり、見えているのね」
背後から声。
エリシアだった。
「研究局の観測装置でも確認できた。四核が同時活動状態」
「残り三つは?」
「沈黙。でも時間の問題」
彼女は空を見上げる。
「七つの核。世界の地下を結ぶ魔力中枢」
「封印装置、ですか」
「正確には、均衡装置」
横顔は真剣だ。
「古代の大崩壊。七核はそれを防ぐために作られたという説がある」
「でも今は暴走している」
「制御が崩れている」
沈黙。
風が鳴る。
「……灰牙洞とラーディアを止めたことで、均衡が揺れた可能性もある」
「俺のせいですか」
「違う」
即答。
「あなたが止めなければ、もっと早く崩壊していた」
彼女は視線を外さない。
「問題は“利用する者”よ」
「帝国?」
「ヴェルクス帝国。核を兵器化している可能性が高い」
遠く、地平線の向こう。
一瞬だけ、赤黒い光が瞬いた。
【遠方核反応:増大】
「……あれ」
俺が呟く。
エリシアも気づく。
「観測と一致。帝国側の核が出力を上げた」
「意図的に?」
「その可能性が高い」
つまり。
俺たちが止めた核と違い、向こうは“起動させている”。
「制御じゃなく、利用」
「ええ」
夜空に浮かぶ黒い星が、不気味に輝く。
「あなたはどちらを選ぶ?」
突然の問い。
「利用か、制御か」
迷いはない。
「制御」
「なぜ」
「暴走は、誰かの故郷を壊す」
一瞬だけ、村の光景が脳裏をよぎる。
炎。
崩壊。
助けられなかった夜。
「利用する発想は、そこに立たない」
エリシアは小さく息を吐く。
「やっぱりあなたは危険ね」
「危険?」
「国家を揺らす思想よ」
だが、微笑む。
「だからこそ必要」
背後で足音。
リリナが現れる。
「二人で夜デート?」
「違う」
「違います」
即答が重なる。
リリナがじっとエリシアを見る。
「王都行くんでしょ?」
「ええ」
「カイルも?」
視線が向く。
「……行く」
リリナは少しだけ目を伏せる。
「遠くなるね」
「距離は変わらない」
「政治は遠いよ」
その言葉は、軽くない。
エリシアが静かに言う。
「国家を設計するには、感情だけでは足りない」
「でも、感情がないと守れない」
火花。
夜空の黒い星が、さらに濃く見える。
俺は二人を見る。
「両方必要だ」
理論も、感情も。
制御するためには。
【七核ネットワーク 警告】
【王都地下核 出力上昇】
遠く、王都方向の空がわずかに赤く染まる。
「時間がないわね」
エリシアが呟く。
「王都で、もっと大きい設計を」
「うん」
リリナが言う。
「でもさ」
俺の袖を軽く引く。
「隣は、空けといてね」
一瞬、言葉に詰まる。
エリシアは黙って空を見上げる。
黒い星が四つ。
残り三つが灯る日も、遠くない。
ラーディアは救われた。
だが、七つ目の星が灯る時。
本当の戦いが始まる。
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