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落ちこぼれ理論士、戦闘ログで世界のダンジョン構造を解析する 〜倒せない敵は設計で崩す、都市防衛から国家建設へ〜  作者: 空条ライド


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第14話 灰牙洞への出立

 出立の朝。


 学園の正門前に、馬車が三台並んでいた。


 実地研修という名目だが、護衛の数は多い。教官クラスが二名、補助教員が三名。学生は選抜十名。


「意外と少数精鋭だな」


 レオンが周囲を見回す。


「灰牙洞は中規模だ。訓練用としては十分危険」


 ガルド教官が淡々と説明する。


「遊びではない。実戦だ。死ぬな」


 短いが重い言葉。


 リリナが俺の肘をつつく。


「カイル、緊張してる?」


「少し」


「珍しい」


「未知だからな」


 だが、未知でも“読める”。


 結晶がわずかに温かい。


【灰牙洞 距離縮小】


 馬車に乗り込み、街を抜ける。


 石畳が土道に変わり、やがて森へ。


 揺れる車内で、俺はログを開く。


【灰牙洞 構造予測マップ】


 まだ粗い。


 だが、入口付近の魔力の流れは掴めている。


「本当に見えてるの?」


 ミレイが覗き込む。


「断片的だがな」


「理論でダンジョンを俯瞰する……面白い」


「全部見えるわけじゃない」


「それでも十分異常」


 レオンが低く言う。


「異常は力になる」


 リリナが拳を握る。


「早く着かないかなー!」


「はしゃぐな」


「だってワクワクするじゃん!」


 ティナが小さく言う。


「……おやつ、忘れてないよね」


「忘れてない」


 森を抜けると、岩山が見えた。


 灰牙洞。


 巨大な牙のような岩が突き出ている。


 入口は暗く、冷たい風が吹き出している。


【灰牙洞 魔力濃度:中】


【深層部に高濃度反応】


「……いるな」


 俺は呟く。


「何が」


「第八層と似た波形」


 教官が振り返る。


「分かるのか」


「はい」


「どこまでだ」


「少なくとも三層下に断片があります」


 教官の目が鋭くなる。


「まだ誰も報告していない深度だ」


「なら、あります」


 レオンが笑う。


「面白い」


 ◇


 入口。


 湿った空気。


 岩壁に苔が張り付き、足元は滑りやすい。


「隊列を組め」


 教官の指示で進む。


 前衛:レオン、リリナ。


 中衛:ミレイ、他学生。


 後衛:俺、ティナ。


 第一層は比較的穏やかだ。


 灰色の狼型魔物が現れる。


「来た!」


 リリナが踏み込む。


 炎が走る。


 レオンが一刀で仕留める。


 問題ない。


【第一層 脅威度:低】


 第二層。


 数が増える。


 連携が必要。


 未来予測がわずかに働く。


「左から二体!」


 声に反応し、被害ゼロ。


 第三層。


 空気が変わる。


【魔力濃度:上昇】


 結晶が強く反応する。


【断片反応:近接】


「……この下だ」


「本当にあるんだね」


 リリナが呟く。


 第四層へ続く坂道。


 途中で、空間が歪む。


 黒い亀裂。


 そこから、異形が現れる。


 狼でもゴーレムでもない。


 歪んだ四足。


 背中に黒い結晶。


【未知魔物 解析開始】


「第八層の波形……!」


 守護体ほどではないが、似ている。


「全員警戒!」


 教官が叫ぶ。


 異形が吠え、突進する。


 速い。


 だが――


 見える。


「供給は背中!」


 レオンが目を細める。


「本当か!」


「周期は短い、二秒!」


 リリナが笑う。


「じゃあ簡単じゃん!」


「油断するな!」


 異形が跳ぶ。


 背中の結晶が光る。


「今!」


 レオンの剣が背中を斬る。


 リリナが炎を叩き込む。


 結晶に亀裂。


【損傷率:45%】


 異形が暴れる。


 だが供給タイミングは読める。


「次、二秒後!」


 リリナが構える。


 ミレイが凍結で足止め。


「今!」


 同時攻撃。


【損傷率:100%】


 異形が崩れる。


 黒い結晶が砕ける。


 教官が静かに息を吐く。


「……本当に読めるのか」


「断片の劣化個体です」


 守護体ほど強くない。


 だが、本物だ。


 灰牙洞の奥には、間違いなく“核の欠片”がある。


 レオンが俺を見る。


「理論、通じてるな」


「ああ」


 恐怖より、確信が勝つ。


 第八層は偶然じゃなかった。


 外でも通用する。


 努力は、閉じた空間だけの話じゃない。


「行こう」


 俺は前を見る。


 第四層の奥。


 濃い魔力の流れ。


 そこに。


 次の“壁”がある。


 そしてその先に。


 もっと大きな構造が、待っている。


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