第12話 学園の真実と外の世界
第八層の光が完全に消えた頃。
重い足音が階段を下りてきた。
「……やはり、入ったか」
低い声。
ガルド教官だ。
その背後には、見慣れないローブ姿の男もいる。
学園の理事か、それ以上か。
教官の視線が、崩れた守護体の残骸と割れた球体へ向けられる。
「完全停止だな」
「はい」
俺は答える。
「供給周期を乱し、内部空洞化の瞬間を集中攻撃しました」
「理論通りか」
「……はい」
教官は一瞬だけ目を細め、次に俺の手にある結晶を見る。
「それを触ったのか」
「触りました」
「何を見た」
迷う。
だが、隠しても意味はない。
「構造です」
「構造?」
「ダンジョンの流れ。層の連なり。ここだけじゃない。似た波形が外にもあります」
ローブの男がぴくりと反応した。
「……やはり共鳴したか」
教官が低く唸る。
「第八層は、封印層だ」
「封印?」
「模擬ではない。本物の断片だ」
空気が変わる。
「学園の地下には、古代ダンジョンの核の一部が埋まっている」
リリナが目を丸くする。
「え!? そんなの聞いてない!」
「公表していない」
当然だ。
こんなもの、学生に知らせるはずがない。
「第七層のゴーレムは“蓋”だ。本来は触れさせないための」
「でも壊しました」
レオンが静かに言う。
「そうだ」
教官は俺を見る。
「エルド。お前の理論が、封印を解いた」
責める口調ではない。
だが、重い。
「……すみません」
「謝るな」
教官は首を振る。
「いずれ誰かが辿り着いた。違いは、お前が理論で到達したことだ」
ローブの男が前に出る。
「外の世界にも、同じ核が存在する」
「……やっぱり」
俺は結晶を見る。
「構造が繋がっていました」
「見えたのか」
「少しだけ」
男は深く息を吐く。
「君は、選ばれたのかもしれない」
「やめてください」
即座に否定する。
「選ばれたわけじゃない。積み重ねただけです」
教官が小さく笑う。
「らしいな」
沈黙の後、教官は告げた。
「この件は封印する」
「え?」
「公式記録では、第七層暴走を鎮圧とする。第八層は存在しない」
当然だ。
外部に知られれば、学園は混乱する。
「だが」
教官の視線が鋭くなる。
「エルド。お前には外を見せる」
「外?」
「実地研修だ」
レオンが反応する。
「本物のダンジョンか」
「そうだ」
リリナが目を輝かせる。
「やった!」
ミレイは静かに言う。
「理論の実証範囲が広がる」
ティナがぽつりと呟く。
「……おやつ、遠征用?」
場の空気が少し緩む。
だが、教官の目は真剣だ。
「外のダンジョンは模擬ではない。死ぬ」
静かな言葉。
「第八層の守護体は断片だ。本体は、比ではない」
俺は結晶を握る。
ログが静かに脈打つ。
【構造解析 起動可能】
怖くないわけじゃない。
だが。
第八層は崩せた。
理論は通じた。
「行きます」
迷いはない。
教官が頷く。
「三日後、出立だ」
◇
地上へ戻る。
夕日が学園を染める。
リリナが両手を広げる。
「外だってさ! 冒険者っぽくなってきた!」
「もともと冒険者志望だろ」
「そうだけど!」
ミレイが俺を見る。
「構造解析、どこまで見えるの?」
「まだ断片」
だが、確実に進化している。
未来予測。
供給周期解析。
そして構造解析。
チートではない。
だが。
努力が、能力を押し上げている。
「カイル」
レオンが隣に立つ。
「外でも理論を使うのか」
「当然だ」
「なら、俺も使う」
「力をか」
「力も理論も、両方だ」
少しだけ笑う。
「悪くない」
第八層は終わった。
学園編は、一つの区切りだ。
だが。
外には、もっと巨大なダンジョンがある。
国を滅ぼす規模。
街を飲み込む構造。
理不尽な敵。
それを。
倒せないなら、倒せる形にする。
ログが静かに更新される。
【次章:外部実地研修】
努力型の物語は、ここから本番だ。
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