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華苑女子大学警備室へようこそ!  作者: Jem
第1章 警備室へようこそ!
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第6話 日が暮れて

 警備室に戻ると、急にどっと疲れが押し寄せた。

 私はソファに崩れ落ちて、頭を抱える。


「うぅ〜〜〜…ホントにあれで良かったのかな〜〜…」


 守屋さんは何も言わず、いつもの落ち着いた手つきで急須を傾けた。

 湯呑みに注がれた緑茶が、ほわっと湯気を立てる。


「はい。お疲れさま」


「うぅ…ありがと…」


 私は湯呑みを両手で持って、ちびちび啜った。

 お茶って、なんでこんなに落ち着くんだろう。


 でも――落ち着けば落ち着くほど、今度は不安が湧いてくる。


「春日さん、納得してた…よね?小野さんだって…あのままクビって言われたら、もっと悲惨だったし…」


 私の声は、だんだん小さくなった。


「でもさぁ…私、偉そうに裁いたみたいで…」


 守屋さんは、少しだけ目を細めた。


「偉そうに、ね」


「だって!私まだ新人だし!ただのバイトだし!」


 そう、「花園さやか」は、ただのバイト警備員。


「なのに、“こうしたらいいです”って…あれ、出しゃばりだった?」


 守屋さんは湯呑みを置いて、静かに言った。


「さやかさん」


「な、なに?」


「教えて、守屋さ〜ん。……ですか?」


「えっ」


 私は固まった。

 なんで分かるの。心読んでるの?


 守屋さんは、ほんの少しだけ口元を緩める。


「……言ってごらんなさい」


「ケチ!」


「ええ」


「“ええ”!?否定しないの!?」


 守屋さんってば!!


「必要なことしか与えません。あなたのためです」


「む〜〜〜!!」


 私は頬を膨らませた。

 でも、守屋さんってこうなんだ。

 甘やかすのに、甘やかさない。


 守屋さんは、ふっと視線を落として、湯呑みの湯気を眺めた。


「…今日の判断は、正しかったと思いますよ」


「え、ほんと?」


「はい」


 わからない。私の頭はぐるぐるだ。


「じゃあ何で、そんな意地悪なの!」


 守屋さんは、困ったように笑った。


「意地悪じゃない。――あなたが、ちゃんと考えたからです」


「……」


「誰かに言われた正解じゃなくて、自分の言葉で、相手の人生を考えて、責任を取る」


 守屋さんがお茶を啜る。なんだか満足そうに見えた。


「それが出来る人は、少ない」


 私は湯呑みを握りしめた。

 胸の奥が、じんわり熱い。


「…じゃあさ。次も、私に考えさせるつもり?」


「ええ」


 まただ……!!


「鬼!」


「鬼で結構です」


 守屋さんは、いつもの優しい声で、でも逃げない目で言った。


「――守られるだけのお姫様で終わらないために」


 私は、慌ててお茶を含む。


「……何ですか、それ。“お姫様”って誰のこと?」


 危ない、危ない。私はここでは「花園さやか」。普通の女の子なのだから。

 守屋さんは、一瞬黙って、すぐにふっと微笑んだ。


「そういうことにしておきましょうか」


 その笑顔が、なんだかずるい。

 私はまた、湯呑みのお茶を啜って誤魔化した。


 ――明日もきっと、私はここに来る。

 この学園の番人として。


 ―おわり―


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