第8話 黒幕が明らかになったのに、国民の反応がズレてる件
禁書倉庫で禁史院の男が姿を消したあと。
俺とエリシアは資料を抱えて王城へ戻っていた。
(……やべえ情報つかんじゃったな)
“二百年間、意図的に国を停滞させた組織があった。”
普通なら国中がひっくり返るレベルの大事件だ。
だが——。
城門を抜けた瞬間、異様な騒ぎが耳に飛び込んできた。
「勇者が禁史院に逆らったらしい!!」
「国を混乱させるつもりだ!!」
「大陸Bのスパイと繋がってるらしい!!」
(いや全部デマなんだけど!?)
書類監査眼:
【情報源:王国愛護騎士団SNS】
【信憑性:0%】
【拡散速度:異常】
エリシア
「はぁ……やっぱりね」
俺「なんで禁史院より先に“俺”が悪者になってんの?」
エリシア
「現実ってそういうものよ」
(冷静に言うなよ……)
◆
■ 王国愛護騎士団の“勇者バッシング祭り”
王都の広場に向かうと、
例の“戦わない愛国者”たちが集まっていた。
巨大な布に書かれた横断幕がひらひらしている。
【勇者よ、国の邪魔をするな!】
【改革なんていらない!】
【大陸A様に恥をかかせるな!】
(ちょっと待て、俺何もしてないぞ)
愛護騎士団リーダー
「勇者ユウトーッ!!
お前が“禁史院に逆らった”と聞いたぞ!!」
俺「逆らってねえよ! 向こうが勝手に消えたんだよ!」
愛護騎士団
「言い訳するな!!」
(言い訳じゃなくて事実なんだよ!!!)
書類監査眼:
【彼らの思考:事実より感情】
【怒りの理由:勇者が注目されて羨ましい】
【自己主張欲:肥大】
◆
■ 王国政治家がもっと酷い
そこへ現れたのは——
我らが王国の迷惑議員コンビ。
・強国至上派 ドランゴ議員
・発言修正の魔術師 ロマーノ卿
ロマーノ卿
「勇者殿。あなたの行動は誤解を与える表現でした!」
俺「行動に誤解もクソもないだろ」
ロマーノ卿
「人々が誤解したのだから、あなたが悪いのです!」
(お前らが広めたデマなんだよ!!!)
一方のドランゴ議員は指を突きつけてくる。
「勇者よ!
大陸Bの使者に近づくとは何事か!
彼らは敵!! 敵なのだ!!」
書類監査眼:
【大陸Bとの関係:交易希望】
【敵意:低】
【脅威度:愛護騎士団のほうが高い】
俺
「特使は“王国を助けるために来た”って言ってたじゃん」
ドランゴ議員
「そんなのは“偽りの優しさ”に決まっている!!
やつらは卑怯だからな!!
強い国A様のような紳士的な侵入とは違う!!」
エリシア
「侵入を紳士的と言った政治家は初めて見たわ」
俺
「言ってる意味が一ミリも分からない」
◆
■ 王国の官僚まで“責任転嫁ショー”を始める
さらに、外交部の官僚たちが駆け寄ってきた。
外交官1
「勇者殿、大陸Bとの面会は……その……
“やや軽率だった”可能性があると……」
俺「いや王から許可出てたし」
外交官2
「そ、それは誤解を与える王命だった!」
俺「王命にも誤解とかあるんだ……」
外交官3
「責任の所在は……う、うむ……
“国民の誤解”ということで……」
書類監査眼:
【責任逃れの連鎖】
【王:中】
【議員:大】
【官僚:大】
【勇者:ゼロ】
【国民の誤解:ゼロ】
【現状:全員勇者に押しつけたい】
(あーもう地獄)
◆
■ “虎の威を借る狐”がさらにヤバい方向へ
すると愛護騎士団の誰かが叫んだ。
「大陸A様が!
“王国は勇者を管理すべきだ”とおっしゃっている!!」
(いや絶対そんなこと言ってねぇだろ……)
書類監査眼が光る。
【大陸Aの公式文書:
『王国の混乱には関与したくない』】
【愛護騎士団の意訳:
『王国は勇者を厳しく管理すべき』】
(意訳じゃなくて“願望”なんだよなぁ)
エリシア
「彼らは“強い存在に従うことで自分も強くなった気がする”のよ」
俺
「虎の威を借る狐……いや、狐以下だな」
◆
■ そして、王国公式が“最悪の声明”を出す
そこへ伝令兵が慌てて走ってきた。
「ゆ、勇者殿!
王城より緊急発表です!!」
王国愛護騎士団
「おお!!ついに勇者の懲罰か!!」
(待てや)
伝令兵は巻物を開いた。
「王国は以下の通り声明を出します!」
周囲が静まり返る。
伝令兵
「『魔王軍の進軍は誤報であった』」
(お、やっと認めたか)
伝令兵
「『しかしその誤報は“勇者ユウトの行動が誤解を与えたため”発生した』」
「はああああああああああああ!?!?」
書類監査眼:
【因果関係:0%】
【責任転嫁:100%】
【勇者の関与:0%】
【国の狂度:100%】
俺
「なんで“魔王軍と関係ない誤報”が俺のせいになるんだよ!??」
ロマーノ卿
「誤解を与える存在が悪いのです!!」
ドランゴ議員
「勇者がいなければ誤報も起きなかった!
よって責任は勇者にある!!」
エリシア
「理屈が逆なんだけど……」
■ だが、ついに“味方”が動く
その時、
大陸Bの特使が堂々と広場に現れた。
特使
「勇者殿、監査官殿。
国王より正式な“再面会”の要請が届いております」
俺「再面会……?」
特使
「はい。王国は……ようやく事態の重大さを理解したようです」
エリシア
「つまり……国王が禁史院の存在を“認め始めた”ってことね」
(やっとか……)
特使は深く頭を下げた。
「勇者殿。
あなたを陥れようとする勢力が王国に存在します。
しかし、あなたはこの国を変えうる唯一の存在です」
書類監査眼:
【特使の言葉:真実】
【禁史院の妨害:激化予定】
【王国の政治家:邪魔】
俺
「よし……行くか。
王国の腐った根っこ、全部引っこ抜いてやる」
エリシア
「ええ。勇者の同行監査、続けるわよ」
王国愛護騎士団
「勇者がんばれー!!
我々は安全な場所から応援している!!」
(一生そこにいろ)
——第8話 完。




