第7話 腐敗の根っこを探りに行ったら、国の暗部が想像よりヤバかった件
大陸Bの特使が残した言葉が、
その日の王都をざわつかせていた。
「魔王軍ではない。
二百年間、この国を歪めてきた“第三勢力”がいる」
王国愛護騎士団は
「お、おおう……我らは最初からそう思っていた!!」
と意味不明な後付けを叫んでいたし、
外交部は
「ええと……これは誤解を与える外交情報で……」
とロマーノ卿の真似を始めていた。
(全部ブレブレなんだよなぁ)
そんな混乱の中——
俺とエリシアだけは、奇妙な確信を共有していた。
「ユウト、“歪めてきたもの”って……」
「たぶん、“あれ”だろ?」
■『第0号成長戦略案』
──最大封印・閲覧禁止。
──二百年前、突然“歴史から消された”文書。
(あの文章の途中で切れた一文……)
『この国の停滞の原因は、“魔王”ではなく——』
(その続きを読めば全部つながる気がする)
◆
■ 第三勢力の候補地:“禁書倉庫”
俺とエリシアは王城の奥深くへ向かった。
そこには一般官僚でも近づけない
『禁書倉庫』
がある。
王国愛護騎士団
「勇者よ、お前たちが行け!!
我らは外で応援している!!」
(出たよ……戦わない愛国)
エリシア「……静かにしてほしいわね」
書類監査眼:
【王国愛護騎士団の“応援”:役に立たない】
◆
■ 武装した衛兵に止められる(政治家ムーブ発動)
禁書倉庫の前には重厚な扉と武装した衛兵。
衛兵「立ち入り禁止だ。王命の許可が無い者は——」
ドランゴ議員がどこからともなく現れて
胸を張った。
「無礼者!!
勇者殿は我が“強国至上同盟”の名誉顧問である!
通せ!!」
俺「いやそんな覚えないんだけど」
書類監査眼:
【ドランゴ議員が勝手に顧問扱い:確定】
【権威の私物化:深刻】
衛兵「しかし、規定では——」
ロマーノ卿
「その規定は誤解を与える表現だった!」
衛兵
「いや、規定に誤解は——」
ロマーノ卿
「真意は“勇者は通しても良い”という意味だ!!」
(真意って何だよ)
書類監査眼:
【規定の改ざん:議員の脳内のみ】
◆
■ 扉が開く。そして“異臭”がする
衛兵は最終的に折れた。
——ギギギ……。
扉が開くと、湿った空気と重い紙の匂いが流れ出した。
禁書倉庫。
架蔵されているのは、王国にとって“都合の悪い歴史”ばかり。
古びた魔導ランタンが薄暗く照らす。
エリシア
「ここ、……来たことはあるけど……
こんな空気じゃなかったわ」
俺「空気って変わるの?」
エリシア
「“事実を隠すほど、部屋が濁る”のよ」
書類監査眼が起動。
【空間に異常反応】
【魔術的封印:複数】
【“人の意図による改ざん”を検知】
(あー……これ絶対ろくなことになってない)
◆
■ 歴史書の断片…しかし全部“誰かに修正されている”
棚の奥から、ある文書を引っ張り出した。
『王国史 第七巻(修正版)』
エリシア「……これ、“修正版”ってことは元があるはずよ」
俺はめくってみる。
——ページのほとんどが空白だった。
(嫌な空白だな)
端の脚注だけ残っていた。
『※前王の改革案は危険思想として削除』
(削除!?)
書類監査眼:
【削除:政治的理由】
【危険思想:国の成長計画】
【王国にとって不都合:極大】
俺「これ……“改革案”全部消されてるの?」
エリシア「ええ。予想通りだったけど……
こんな露骨に消された形跡が残ってるなんて」
(消したやつが雑だったのか?)
書類監査眼がさらに光る。
【削除作業の痕跡:新しい】
【『二百年前』ではなく『最近』】
(……待て)
俺「最近……?」
エリシア「つまり、二百年前の封印は“最新の誰か”がいじってる可能性がある」
(おいおい……)
◆
■ 謎の“黒い墨線”
さらに奥へ進むと、
棚の下に埃をかぶった大きな書類箱があった。
『成長戦略・原本(封印)』
俺「これ……」
エリシア「第0号の元データかもしれない」
震える手で開ける。
中には数十枚の古びた羊皮紙。
しかし問題は——
ほとんどの箇所が黒い墨線で塗りつぶされていた。
(黒塗り……情報公開請求かよ)
書類監査眼:
【黒線:魔法的隠蔽】
【隠匿した者:不明】
【動機:政治的/思想的】
【本来の内容:成長阻害の“根本原因”】
エリシアが息を飲む。
「ユウト……これ、“魔王のせいじゃない”って、ここにも……」
黒線の隙間からほんの一部だけ読めた。
『……魔王ではなく、
王国の中枢に……』
(本当に“内部に原因”があるんだ)
その瞬間、
背後で“カツン”と靴音が響いた。
◆
■ 黒幕の一端が姿を見せる
「……勇者殿。監査官エリシア。
あなた方には、少し余計なものを見ていただきましたね」
冷たい声。
扉の前に立っていたのは——
黒いローブの男。
胸には王国紋章ではなく、見慣れない徽章。
エリシアが青ざめる。
「……あなた……“禁史院”の……!」
俺「禁史院?」
エリシア「王国の“歴史管理部門”よ。
二百年前に作られたはずなのに……
記録はほとんど残ってない、幽霊みたいな機関」
男は笑った。
「幽霊? 違いますよ、監査官殿。
我々は“王国の歴史を正しい形に保つ”者たちです」
俺「正しい形って、黒塗りにすることか?」
男
「必要なものだけ残すのです。
余計な成長や余計な改革は混乱を生む……
私たちは二百年間、この国を“安定”させてきた」
書類監査眼:
【“安定”:停滞の婉曲表現】
【黒塗りの実行犯:禁史院】
【国家停滞の核心に関与:濃厚】
(ついに出てきたな……本物の黒幕)
男
「勇者殿。あなたの成長率は危険です。
“前例のない成長”は、国を混乱させる」
俺
「でも成長しない国に未来はないだろ」
男
「未来が必要ですか?」
(うわ……出たよ……)
エリシアが震える声で言った。
「あなたたちは……
本当にこの国を“二百年間止めてた”のね……!」
男は静かに頷いた。
「混乱よりも停滞のほうが安全です。
国民の幸福のために“変革”を排除した。
それが我々の役目です」
(いや地獄じゃねぇかそれ)
男
「勇者殿。撤退しなさい。
あなたが動けば、この国に“前例”が生まれる。
それを我々は許さない」
書類監査眼:
【禁史院:前例絶対阻止主義】
【停滞を“維持”し続ける組織】
【国の成長は意図的に止められていた】
俺
「……は?
二百年間、日本……じゃなくて王国が成長しなかった理由、
お前らのせいかよ?」
男
「はい」
堂々と言いやがった。
(胸張って言うことじゃない!!)
◆
■ 次回への“最大級の布石”
男は背を向けた。
「——あなた方がここで見たもの。
我々は必ず“無かったこと”にします」
エリシア
「逃がさないわよ!」
だが、男の足元の魔法陣が光った。
「ではまたお会いしましょう。
“前例のない勇者”殿」
瞬間移動。
姿が消える。
俺
「うわ、都合悪くなると逃げるタイプ……」
書類監査眼:
【禁史院:情報操作能力・極大】
【今後の妨害:確定】
エリシア
「ユウト……
この国の停滞の根、本当に掴んじゃったわね」
俺
「じゃあ——掘り起こすしかないだろ」
禁史院。
黑塗り。
停滞維持。
前例絶対主義。
二百年止まった国を、俺が動かす。
——第7話 完




