第10話 禁史院に向かう前に、国民の思考が予想以上にヤバかった件
王の命令——
「禁史院を暴け」
が俺たちに下った翌朝。
城を出た瞬間、
俺は信じられない光景を目撃した。
広場が騒がしい。
いや、騒がしいのはいつもだが——
今日は方向性がねじれていた。
看板や貼り紙がそこら中に溢れ、
人々が好き勝手に叫んでいる。
「勇者が“禁史院”とかいう組織を捏造してるらしいぞ!」
「あいつ大陸Bの工作員なんだって!」
「国王は洗脳されたらしい!!」
(いや全部逆なんだが!?)
書類監査眼:
【デマ拡散経路:愛護騎士団→政治家→市井の噂】
【真実:0%】
【怒りの方向:完全にズレている】
エリシア
「……やっぱり。
この国は事実より“気持ちいい物語”を信じたがるのよ」
俺
「気持ちいい物語って……何だよそれ」
エリシア
「“自分が正しい”と思える物語。
“外敵が悪い”という物語。
“自分は戦わずに他人が守ってくれる”という物語」
(あっ……現代と同じ……)
■ “国民の声”が酷すぎた件
ある露店前で、住民たちが立ち話していた。
住民A
「禁史院なんて、あるわけないじゃん。
二百年停滞? それは国民が怠けてるからだよ」
(は???)
住民B
「そうそう!昔からそうだった!
だから国を変える必要なんてないんだ!」
書類監査眼:
【住民の自己責任思想:強】
【王国停滞の原因:外部責任ではなく内部構造】
【誤った自責:促進済】
住民C
「そもそも大陸A様が言ってるんだぞ?
勇者は危険人物らしい!
大陸A様は何でも正しいんだ!」
(いやだから何でもじゃねぇよ!!)
エリシア
「この国の人々は、強い存在の“真似”をするのが好きなのよ」
俺
「主体性が……ない?」
エリシア
「無いわね。
二百年間、禁史院が主体性を奪ってきたから」
(あぁ……歴史を消して、思考を萎縮させ続けてきた結果か……)
■ 愛護騎士団の街頭演説が最悪すぎる
広場の中央に人だかり。
あの“愛護騎士団”が演説をしていた。
愛護騎士団団長
「聞け国民よ!!
勇者ユウトは危険だ!!
あいつは禁史院という“存在しない闇組織”を捏造し、
国を混乱させようとしている!!」
(逆だって言ってんだろ!!)
愛護騎士団副団長
「魔王軍が来るかもしれないのに!
勇者は国のために戦おうとしていない!!」
(いやお前らが“応援しかしない”だけだろ!!)
書類監査眼:
【愛護騎士団の論理:完全に自分基準】
【勇者への嫉妬:濃厚】
【責任回避:100%】
【勇者犠牲願望:強】
団長
「我々は勇者を監視し続ける!!
我々こそが真の愛国者だ!!
勇者は魔王と戦え!!
我々は安全圏で祈っている!!」
俺
「今すぐ黙れ」
団長
「貴様ァ!!!
国のために戦えというと、なぜ怒る!!」
俺
「“戦うのはお前じゃないから”だよ馬鹿が」
エリシア
「よく言ったわね」
■ 国王の声明に対して、国民の反応が斜め上すぎる
その時、町の掲示板に最新の王国発表が貼られた。
王国声明
『禁史院という組織の調査を開始する』
『勇者ユウトと監査官エリシアに権限を与える』
『王国停滞の原因を究明する』
普通なら国民は驚くところだが……
住民A
「ほら見ろ!
勇者が王様に嘘を吹き込んだんだ!!」
住民B
「王様が勇者にだまされたんだよ!」
住民C
「禁史院なんて、陰謀論に決まってる!!」
(お前ら陰謀論と真実逆にしてるんだよ!!)
書類監査眼:
【国民の思考:
“今まで自分たちが信じてきた世界が嘘だった”
→理解不能&拒否反応】
エリシア
「人って、自分が間違ってた事実を認めるのが一番苦手なのよ」
俺
「この国の“停滞”の正体って……
もしかして禁史院だけじゃない?」
エリシア
「ええ。
“人々自身の思考停止”も、二百年間育てられてきたものよ」
(あぁ、これ……物語が一気に深くなるやつだ)
■ 禁史院の反撃が早くも来た
その時、
王城方向から黒い鳥型の魔導メッセンジャーが飛んできた。
カツンッ、と足元に紙を落とす。
拾い上げて開くと——
『勇者ユウトへ。
あなたは“国の前例”を乱そうとしている。
警告する。
——引き返せ。
禁史院』
(出た……)
書類監査眼:
【禁史院:勇者を“排除対象”に認定】
【危険度:急上昇】
エリシア
「……ユウト。
この警告、普通なら無視してもいいけど……
禁史院は“本気で消してくる”わ」
俺
「うん、2行目で察した」
特使(どこからともなく登場)
「勇者殿、監査官殿。
禁史院本部への潜入準備が整いました」
俺
「潜入ってことは……バトルか?」
特使
「確実に。
彼らは記録を守るためなら、
歴史そのものを焼き払う連中です」
(そんな組織ある!?)
書類監査眼:
【禁史院:記録改竄・歴史抹消・思想弾圧】
【外交的に言えば:最悪の隠蔽組織】
【主人公の成長率:対禁史院戦に有効】
エリシア
「さぁユウト、行くわよ」
俺
「……やってやろう。
停滞の根を、一つ残らず叩き潰す」
大陸B特使
「勇者殿——
本部の場所は“歴史の空白地帯”です」
俺
「名前からして嫌な予感しかしねぇ!」
エリシア
「そこに“二百年間消され続けた真実”がある」
(ついに黒幕の巣に突入か……!)
——第10話 完。




