胎動と新しい日常
あやが夜、ベッドに横たわると、お腹の中で小さなポコポコとした動きを感じた。初めての胎動は、まるで小さな手で「ここにいるよ」と知らせてくれるようだった。
「動いた…!」思わず健太に声をかける。健太は驚きと喜びの入り混じった顔で手をあやのお腹に添える。「返事してくれたみたいだね」
その夜、二人はリビングに置かれた小さなぬいぐるみを見ながら、名前の候補を話し合った。
「あの活発な方は元気な名前が合うかな」
「じゃあ、もう一人は少し落ち着いた名前にしようか」
互いに意見を出し合い、笑いながらもどこか緊張感のある時間。二つの命の個性を想像するだけで、胸がいっぱいになった。
日々の生活も少しずつ変わる。あやは体の変化を感じながら、食事や睡眠に気を遣い、健太は毎晩のように体調を気遣いながらサポートした。スーパーでの買い物も、今までとは違う慎重さが必要になった。
「二人分、考えないとね…」
「ああ、でも楽しみも二倍だ」健太の言葉に、あやは少し安心する。
健太は仕事から帰宅すると、あやの話をじっくり聞きながら、日常の些細な出来事にも目を向けるようになった。
「今日は胎動がよく感じられたよ」
「この前の夜は、片方だけよく動いてたの」
二人は笑いながら、お腹の中の小さな命と会話をするように過ごした。
ある朝、あやは検診のため病院へ。超音波で二つの心臓が再び映し出される。医師は微笑み、「順調です。個性も少しずつ見えてきますね」と説明する。ナースの美咲も励ますように、「お腹の中での小さな成長も楽しみながら過ごしてください」と声をかける。
その言葉にあやと健太は胸が温かくなるのを感じた。支えてくれる存在がいることの安心感が、二人の不安を少し和らげた。
夜、あやはベッドで健太の腕に抱かれながら、お腹に手を当てる。ポコポコと小さな胎動を感じるたび、二人は目を合わせて微笑む。
「二つの命が、こうして生きてるんだね」
「うん、僕たちの家族だ」健太の声は静かだけど力強く、あやの胸に深く響いた。
その日、二人は改めて、未来に向けての覚悟を胸に刻んだ。どんな困難があっても、二つの命を守り育てる覚悟。日常の些細な瞬間にも幸せを見つけ、家族としての絆を少しずつ強くしていく夜だった。




