2人の心音
朝の光がゆっくりと病室のカーテン越しに差し込む。あやはベッドの端に腰掛け、そっとお腹に手を当てる。まだ小さな命に触れる感覚に、心臓が高鳴る。「二人…本当にいるのかな…」小さな声でつぶやく。健太は隣で手を握り、あやの肩にそっと触れながら、画面の超音波をじっと見つめる。
モニターに映る二つの小さな心臓が、リズムよくピコピコと光を刻む。あやの目に涙があふれた。「動いてる…二人とも…!」
健太もそっと手を重ね、声にならない感動を共有した。「二人も、もうここにいるんだね…」
ナースの美咲が微笑みながら声をかける。「順調ですよ。本当に元気に育っています。二人分、大変かもしれませんけど、その分幸せも二倍ですよ」
あやは涙をぬぐいながらも、自然に笑顔を取り戻す。健太も頷きながら、二人の未来を想像して胸を膨らませる。「どんな顔をして、どんな声で泣くんだろう…」「性格はどっちが活発で、どっちがおとなしいんだろう…」
外の風がカーテンを揺らすたび、二つの命が確かに存在することを二人は体全体で感じた。
その日、あやは病室を出る前に、再びお腹に手を当ててつぶやいた。「大切に育てるね…二人とも」
健太はそっと手を重ね、優しくうなずく。「うん、二人のために、僕たち家族で頑張ろう」
帰り道、二人は街の景色をぼんやりと眺めながら歩いた。遠くで子どもたちの笑い声が響くたびに、未来の自分たちの生活が少しずつ見えてくるようだった。
スーパーの小さなぬいぐるみや、ベビー服のコーナーに立ち寄り、二人であれこれ選ぶ時間は、緊張と喜び、戸惑いと期待が入り混じる幸せな時間だった。
夜、あやはベッドに横たわり、健太はそっとそばに座る。手をお腹に添え、静かに二人の胎動を感じる。ポコポコと小さな動きが伝わるたび、二人の存在の尊さに胸がいっぱいになる。
「ああ、もうすぐ会えるんだね…」あやの声は震えていた。健太はそっと唇を重ねて、「うん、二つの命、僕たちの家族だ」と答えた。
その夜、窓の外に広がる静かな街の光の中で、二つの命とひとつの家族の未来が静かに芽吹き始めた。希望と覚悟が胸に満ちる瞬間だった。




