ハットン邸の冒険-少女の過去-
ペテルは少女の言葉を繰り返した。
「お父さんとお母さんが帰ってこない?」
エマは続けて聞いてみた。
「ねぇ、あなたのお名前は?」
「私の名前はミレイ。ねぇ、あなたたちは私のお父さんとお母さんどこにいるか知ってる?1人で寂しいの」
「もう1人じゃないわ。私たちがいるわ。」
優しく語りかけるエマと、その顔を覗き込むミレイ。
「そ、そうだね」
と、少しずつ状況に慣れてきたジェラも同意をした。
エマとジェラの言葉に、わずかにミレイの瞳が揺れたような気がした。
しかしその時。
わずかに部屋の温度が冷えた気がした。
それは唐突に『ギイ、ギイ』と床の音を鳴らしながら、
しかし確実に一歩ずつ近づいてきた。
やせ細った体に、ぼろぼろの服をまとった老人男性。
何より、不気味なのは目と口が赤く腫れあがり、何かが垂れ落ちている。
そして、ミレイと同じく輪郭が定かではなかった。
エマはさすがに腰を抜かし、ぺたん、と床に座り込んでしまった。
ジェラは泣き出した。
「や、やだ。。僕、帰りたい。」
とっさにミレイとの間に割り込むペテルとエゼ。
ペテルは老人の霊に向かって叫んだ。
「やめろ!これ以上ミレイに近づくな!」
エゼも、ごくり、とつばを飲み込んで手を大きく広げた。
「ほぉ、守ろうというのか。その呪われた娘を。」
エゼは勇気を出して老人の霊に向かって吠えた。
「ミレイは呪われてなんかいない!」
老人の霊は口から血を滴らせつつ告げた。
「ならば見るがよい!この呪われた真実を!」
その瞬間、館中に突如青いろうそくの炎がともり、ぐにゃりと空間が揺れ、ハットン邸の床が崩れた。
4人と一体の霊は悲鳴を上げる間もなく地下に落ちていった。