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黄狂竜の襲撃と王都防衛戦

巨大ドラゴン来襲によるウー、ウー、と耳をつんざくような警報が王城中、いや、王都全域にこだまする。


この警報は15年前から5 年ほど続いた『大妖怪カウカの厄災』以来である。


この間に、ペテルとフィオナは城の私室から飛び出し、中庭近くの元牛舎にて飼育している古幼竜シルベリーを城の地下室に避難させるべくシルベリーのもとへ走る。


そこには、警報が発せられるまでシルベリーを観察していた王立学院大学の学生たちはおらず、ただ一人マルティン教授だけがシルベリーのそばで空を見あげていた。


ペテルたちの姿を視認したマルティンは慌てて声を掛ける。

「な、なにをしておるのじゃ!早く地下室に避難なされ!」

しかしフィオナも言い返す。

「それは教授もです!」

「ワシも避難できるものなら学生たちといっしょに避難してるわい!

シルベリーのような貴重な学術サンプルとなる個体を放って逃げるわけにもいかん!」

ペテルはシルベリーの顔を両手で掴み「逃げるぞ!シルベリー」と声を掛けるが、生まれてまだ一月も経っていないシルベリーは「クルル〜」と頭を擦り付けて甘えるばかりだ。

「今はそれどころじゃないんだって!」

ペテルはシルベリーの臀部を両手で押し地下室へ動かそうとするが、逆にシルベリーは四本足に力を入れ抵抗する。

まるでシルベリーは遊んでいると思っているかのようだ。

「遊びじゃないんだって!シルベリー!」とペテルは叫ぶ。


一方その頃、警報を10年ぶりに耳にした王都市民達は、10年ぶりに地下壕へと避難をしていく。

現場はまさに大混乱。

警備兵は「落ち着いて!まずは子供とその保護者が優先だ!」と叫ぶが、カウカの恐怖を骨の髄まで味わった大人たちは我先に地下壕に入ろうとする。

そこに、ひとつの巨大な影が空を覆った。

翼を含めると30メートル以上はあるだろうか?

巨大な黄色いドラゴンがけたたましい鳴き声を市民たちに発した。


「ギャーウオォ!ギャーウオォ!」


このドラゴンは全身が黄色い鱗のような皮膚に覆われ、キリンのような細長い首を持つ。

しかしキリンと異なるのは、口から禍々しい牙が飛び出ており、頭には鋭利な角が生えている。

また、ドラゴンの鋭い眼光は人間に対する明確な殺意を持っているかのようであった。


その姿たちに市民たちは恐怖のどん底に陥る。

「なんだ!?あのドラゴンは?見たことがない!」

「早く地下壕に入るんだ!」

「子供が先だと言っているだろう!」


―ドラゴンの口から雷のような光がほとばしり、その光線を王都に向け放とうとしたその瞬間―


王都の一番高い建物の高さ(すなわち王城の屋根)と空中で羽ばたくドラゴンのちょうど中間の間に、緑色の巨大な魔法陣が展開され、王都の空を余すことなくドーム状に包みこんだ。


光線は緑色の魔法陣にぶつかり、ドゴォン!と巨大な音を発する。その次に地面が震えた。

しかし、光線が魔法陣を貫通することはなかった。


グランドバレー城高等魔法官室では、15人の高等魔法官がそれぞれに与えられた水晶に向けて防御魔法を詠唱している。

すなわち、彼ら15人で王都の防御を担っているのだ。

しかしこの15人のうち過半数は若手であり、彼らは「カウカの厄災」は子ども時代に経験こそすれど、当然魔法つかいとしてはカウカと戦ってはいない。


ベテランの高等魔法官が若手に向かって叫ぶ。

「この防御魔法陣はカウカですら破ることができなかった我が国伝統の防衛術だ!ドラゴン一匹相手に破られることはない!例えそのドラゴンがどんなに強力な破壊力を持っていたとしても、だ!」


一方その頃、中庭。

マルティン教授は空中に展開された魔法陣を見上げた。

「王子、姫。あれはカウカがグランドバレー城に攻め込まれる直前に完成された我が国最強の防衛障壁魔法陣ですじゃ。この防壁がある限り、巨大なドラゴンは襲いかかれますまい。

しかし気になっていることは、シルベリーが幼竜とは思えぬほどの魔力を持っておること。

もし巨竜の目的が捕食であれば……?」

その言葉にペテルとフィオナは叫んだ。

「シルベリーを食べようとしているということ!?」

「否定はできませんな」と、マルティンは白い髭をつかみながら空を見上げた。


そしてその頃、巨竜は街を破壊できないと見るや、クルリと方向転換をし、光線を魔法防御壁に吐き出しながら人間では到底追いつけないスピードで空を羽ばたきながら、王城をまっすぐ目指す。


そして、ペテル、フィオナ、マルティン、シルベリーの上空に黄色の巨竜が現れた。

マルティンは思わず叫ぶ。

「あれは『テラメナイト・メア・ドラゴン』!

俗称は黄狂竜とよばれる古代生物学のドラゴン属で最も魔力量が多かったとされる古代ドラゴン!あれは絶滅種と思われておりましたが、実際は絶滅していなかったとは……!!」


黄狂竜は、魔法防御壁の外からぎろりと、その恐ろしい瞳をシルベリーに向けた。

ペテルは震える手でマジックウェポン「夢見の杖」を握りしめ黄狂竜を睨み返す。

一匹の古幼竜をめぐり、古竜最強種とわずか9歳の王子との戦いの火ぶたが切って落とされた。

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