ハットン邸の冒険-白い少女-
-夜-
ペテル、エゼ、ジェラ、エマはポートシティにあるハットン邸の前にいた。
「もう帰ろうよ……」
怖がりのジェラはすでに顔が青ざめている。
しかしエゼは構わずジェラに声を返す。
「大丈夫だって~。早く入ろうぜ!」
そして子どもたちはハットン邸のドアに手をかけたが、鍵がかかっていた。
「考えれば空き家に鍵がかかっているなんて当たり前よね。帰りましょう。」
とエマが口にした瞬間
-カチリ-
と音がし、勝手に扉が開いた。
「入っていいのかな……」とペテルはつぶやきながら入っていく。
エゼ、エマがそれに続き、ジェラもおずおずと続いた。
ハットン邸の中には、さまざまな絵画が飾られていた。
貴族のような男性の絵、農家の女性の絵、ろくろを回すおじいさんの絵、ロバに乗る子どもの絵など様々だ。
そのとき、シクシク、と少女の泣き声が奥の部屋から聞こえてきた。
ジェラは涙ながらに叫んだ。
「殿下、エゼ、エマ!もう帰ろうよ!」
しかしペテルは
「いや、これは解決しなくちゃ。町の人達に害がおよぶかもしれない」
ペテルが奥の部屋の扉を開けると、そこにはぼやっとした実体がつかめない人の形をした『何か』がいた。
その何かはこちらを向いた。
年の頃はペテルたちと同じくらいであろうか。
白いワンピースを着て、青い瞳からは涙がとめどなく流れ出ているように見える。
その輪郭がはっきりしない少女はペテルたちに話しかける。
「助けて。お父さんとお母さんがお家に帰ってこないの……」