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誘拐犯を捕まえよ!

土曜日の午前、ペテル、フィオナ、エゼ、エマ、ジェラ、サトの6人はラスク大通りの噴水前で集合した。


エゼは腕をブンブンと回りながら既に犯人を捕まえた気分だ。

「さ、先週の日曜にエマを誘拐しようとした誘拐犯を捕まえに行こうぜ。

エマ、犯人の特徴とかあるか?」

「え?特徴……?そうね。赤いスーツを着てたわ。」

しかし周りを見渡しても赤いスーツを着た大人などいない。

「どこにもいないね。じゃあ、もうおわりにしよ……」

と、ペテルが言いかけたところで、大通りの脇道から一人の赤いスーツを着た男が出てきた。

「みっけ!追いかけようぜ!」とエゼが言えば、

「そうだね!行こう行こう!」とサトも乗り気である。


しかしエマは乗り気ではない。

「わたし……少し怖いかも」

その時、エゼはジェラを小突いて耳元で囁いた。

「お前、チャンスだぞ。男気を見せてやれ」

ジェラは顔を真っ赤にしながら、それでも勇気を振り絞ってエマに宣言した。

「だ、だだだ、だいじょーぶ、だよ。僕が守るよ。」

エマはひとこと「ありがとう」とつぶやいた。


☆☆☆

―場所は変わって同時刻―

ラスク結婚相談所ではサビーナがおめかしをしてシーザーを待っていた。

今日は仮交際の初デートである。

27歳という年齢にふさわしく、肌を露出しすぎずかといって地味すぎず。

青を基調としたワンピースにベージュのカーディガンを羽織っている。

担当の女性カウンセラーはサビーナに気合を注入しようとする。

「さすが私の姉が経営するショップで買っただけあって、サビーナさん、輝いていますよ!

もう今日のデートでシーザーさんとの結婚を決めてしまいましょう!

いいですか!?私の言葉に続いて叫んで下さい!

気合いだ!気合いだ!!成婚料だ!!!

………最後のは忘れてください。」

次の瞬間、カランコロンという音とともにシーザーが入ってきた。

白いシャツに紺色のジャケット、焦げ茶のスラックスに革靴と、シーザーも29歳という年齢に応じた落ち着いた服装をしていた。

思わず見惚れるサビーナ。

カウンセラーはサビーナの背を押し、「さぁ、いってらっしゃい!」と相談所から追い出した。


☆☆☆

ペテルたちは物陰に隠れながら徐々に赤いスーツの男に近づいている。

男はふらふらしながら歩いているため、すぐに追いついた。

サトはエマに「誘拐犯は、あの人なの?」と聞くが、「後ろ姿だけじゃわかんないよ……」と答える。

ペテルはエゼに囁く。

「なぁ、もし本当に誘拐犯だったら危ないって。今のうちに退かないか?」

「大丈夫だって!王子には爆裂魔法エクラがあるんだから!」

「お前な……」

ペテルは苦笑いをしたが、実際には念には念を入れてマジックウェポン『夢見の杖』をカバンに入れて持ってきている。

不意に、赤いスーツの男は石につまずいてコケた。

ペテルたちは急いで物陰に隠れ、赤いスーツの男を見る。

すると、エマはフィオナとサトに告げた。

「あの人!私を誘拐しようとしたの!まちがいない!」

エゼはニタニタと笑いながら「決まりだな。俺たちで捕まえるんだ」と指をポキポキ鳴らした。


☆☆☆

「ここでお茶をしましょう」

シーザーがサビーナ先生をエスコートした喫茶店はラスク大通りの少し裏路地に入った小洒落た店であった。


2人はオープンテラスの席に腰を掛け、紅茶とケーキを注文する。


「シーザーさん、素敵なお店をご存知ですね」

「ははは。実は今日のために同僚たちに聞きまくったんですよ。お恥ずかしい。」


―この人は私のために色々努力をしてくれた―

サビーナは教師になってからずっと仕事に追われる毎日で消耗した毎日を送っていたが、ようやくその日々が報われるときが着たような気がした。


だが。

オープンテラスの席から見たことがある赤いスーツの男がいた。

あれは、先週エマを誘拐しようとしたランゲッジ!


☆☆☆

エマとサトはもう赤いスーツの男を捕まえたい衝動が収まらなくなった。

エゼは思わず叫んだ。

「ペテル!ジェラ!あの男に体当りだ!行くぞ!」

サトも叫んだ。

「私も行く!」

エゼとサトは「うぉぉぉぉ!」と言いながら赤いスーツの男に向かって走っていく!

仕方なくついていくペテルとジェラ。

フィオナとエマはポツンと残された。


☆☆☆

遠くから、「うぉぉぉぉ!」という声が聞こえてきた。

あの声はよく知っている。

サビーナは頭が真っ白になり、ガシャン!とティーカップを落として割ってしまった。

「4年A組の問題児」こと、エゼと「4年A組のやんちゃ娘」こと、サトがランゲッジに向かって走っている。

よく見るとその後ろからペテルとジェラも走ってついてきている。

「あ、あ、あ……」

サビーナ先生はデートの場には似つかわしくない声を漏らした。

シーザーは何事かと後ろを振り向く。

するとグランドバレー城の近衛兵であるシーザーはすぐにペテルの姿に気がついた。

「王子!!?」


サビーナ先生は子どもたちに向かって怒鳴り声を上げた。

「あなたたち!こっちに来なさい!」

☆☆☆

サトはエゼに叫んだ「え!?先生!?何でここに??どうしよう?やめる?」

しかしエゼは「もうあの男を捕まえる以外どうしようもない!」

もはや子どもたちは担任教師の言うことを聞かずランゲッジに向かって走る。

ランゲッジもこの異変に気づいたのか、走り出した。

するとまずジェラが走れなくなった。

「もうぼく限界……」

そんなジェラを見捨ててエゼ、サト、ペテルは走っていく。

そんなジェラは背後にただならぬ殺気を感じた。

振り向くとそこには担任教師がいた。


☆☆☆

「王子!止まってください!」

後ろからペテルが普段からよく知っている声が聞こえた。

振り向くと、城の近衛兵であるシーザーが追ってきているではないか!

(シーザー!?何でここに?)

そう考えているうちに、ランゲッジはレンガの段差に躓いてコケた。

周りには野次馬がたかり始めた。

エゼは両手を突き出し、漫画で読んだ『トリケラトプス拳』のポーズを取り、ゼェゼェと息をしながら「御用だ!誘拐犯!」と叫ぶ。

サトは「やっちゃえやっちゃえ!」と煽り立てる。

ペテルは2人に追いついたが、その直後、ペテルの肩にシーザーの手が置かれた。

シーザーはなるべく穏やかに「ご学友と何をなさっておいでですか?」と声をかけた。


ランゲッジは即座に自分の置かれた立場を察知した。

どうやらこの子どもたちは、先週身代金目当てで誘拐しようとした子どもの知り合いに違いない。

この場でラスク大通りの警備兵などに捕まれば、まず誘拐未遂で捕まる。

さらに取り調べと身辺調査を受ける過程で投資詐欺もばれるに違いない。

ランゲッジは「うおおお!」と叫んでエゼとサトに向けて走り出した−−

が、すぐにランゲッジの体は宙を舞った。

シーザーがランゲッジを投げ飛ばしたのであった。


「王子、それにご学友のみなさん、お怪我はありませんか?」

シーザーはペテル、エゼとサトに声を掛ける。

ペテルは「うん。だいじょ………」と言いかけたところで殺気を感じた。


振り向くとそこには、青いワンピースにベージュのカーディガンをまとった鬼がいた。


ーその夜ー

バー「リッチ」


サビーナは同僚のナタリーと酒を飲んでいた。

飲んでいたというより、ナタリーは一方的に付き合わされていた。

「終わりました……ナタリー先生。あれは絶対フラれます」

カウンターにおでこをつけて泣きながらウィスキーのグラスを掴む。


あの事件の顛末はこうだ。

シーザーがランゲッジを投げ拘束をした後、サビーナは子どもたちに向け、大説教を開始したが、10分も経たないうちに警備兵たちがやってきた。

シーザーは事情聴取のためその場を離れることに。

ただ一言「立派な先生ですね」との言葉を残して。

サビーナは子どもたちを家に帰してラスク結婚相談室に向かった。

「デート相手の前で子どもに向けて説教だなんて、前代未聞ですよ!」

カウンセラーからはそう怒られた。


ナタリーはサビーナの背中をポンポンと叩きながら、「わかったわかった。今日はとことん付き合う!飲め!」


次の日

二日酔いでフラフラの頭を抱えてサビーナは日曜日の朝を迎えた。

今日はなにもする気にならない。

ボサボサの髪のまま一服をしようとしたところ、魔導報が鳴った。ラスク結婚相談所からだった。


2時間後


サビーナがラスク結婚相談所のドアを開けると、カウンセラーが駆け寄ってきた。

「サビーナさん!おめでとうございます!シーザーさん側の相談所から正式に結婚の申し出が来ました!」

サビーナは嬉しさよりもまず驚きの感情が先に来た。

「え?え?なんで?シーザーさんの前であんなに怒ったのに……」

「逆にそれが良かったみたいです!サビーナさんが受け持つ子どもたちへの熱心な指導を間近で見て、結婚後の暮らしをリアルに感じ取れたようです」

思わず泣き崩れるサビーナ。

そんなサビーナの肩に手を置きカウンセラーは尋ねた。

「サビーナさん、この結婚の申し出、受けますか?」 

「ぐすん。はい……シーザーさんと結婚します。」

「かしこまりました。シーザーさん方の相談所には快諾で連絡しますね。それと、重要な書類があります……」

カウンセラーは泣き止んだサビーナに一枚の書類を見せた。

そこにはこう書かれていた。

『成婚退会料 350,000ルカ』


こうして、サビーナは月給一月分の痛い出費を払いながらも、ついに結婚が決まったのであった。

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