子どもたちの結束
王立学院小学校からわずか徒歩15分の場所にある裏山。
標高もおよそ80メートルほどしか無く、低学年の児童達の遠足は伝統的に裏山である。
もちろん、ペテルたちも2年生の頃裏山で遠足をした。
裏山は400年前までは小さな城があり、今も門跡などの面影を残しながら、公園としても整備されており住民の憩いの場でもある。
ペテル達はその裏山の入口に到着した。
パタパタパタ……
どこからかコウモリの羽音が聞こえる。
だが、ペテルとフィオナにはただの羽音でないことがすぐに分かった。
「ペテル。この羽音はただの動物じゃないと思う。羽音にちょっと魔力がこもってるもの。」
そうしてフィオナは小悪魔のようにペテルの腕をつかまえて「だから、こわーい♡ペテル、私を守ってー!」と、わざとらしく言うものだから、ペテルは顔が真っ赤になった。
エゼは小声で「爆発しろ」と愚痴った。
そんなエゼの声をスルーして、ペテルはたじろぎながら返事をした。
「ま、まぁ、これは間違いなく魔獣だね。ねぇ、みんな、ミニョバ見たことある?実のところ、僕は見たことないんだ。」
エゼは「コウモリなら俺の国にもいるけど、ミニョバって魔獣はいないからなぁ」と首をふる。
エマは「私もないわ。そもそもコウモリに興味ないもの」と首をふる。
フィオナは「ライムにはコウモリ自体いないわ」とコウモリそのものを見たことがない様子だ。
そこにジェラは自信満々で「ありますよー!」と答えた。
「そもそも殿下。どうしてミニョバはミニョバって呼ばれてるか知ってます?」
さらにジェラは口を手でふさぎつつ続ける。
「ぷぷぷ〜!
知らないですよね!知りたいですかぁ?どうしようかなぁ〜?やっぱり知りたいですよね〜?」
エマは内心『ジェラは普段無口なのに、何でこんなムカつく喋り方ができるのかしら?』と不思議に思った。
ペテルは特に気にする様子もなく「知りたい」と答えた。
「いやぁ。昔の言葉でミニョはかわいいって意味なんですよ。それにコウモリを意味するバットのバをくっつけたんですね!だから『可愛いコウモリ』という意味になります!」
「へぇ~。どれくらいかわいいの?」
「それはもう」とジェラが言いかけたところに……
ピピピッ!ピピピッ!
動物の鳴き声とともに、黒い物体が視界に入る。
ミニョバが10匹くらい襲ってきた。
「ね!小さな体に、あのつぶらな大きな瞳!かわいいでしょ!殿下!」
「本当だ!かわいい!!ってそれどころじゃない!みんな伏せろ!」
間一髪、ミニョバたちの強襲をかわした面々だが、旋回してペテル達の動きを監視しているようだ。
ミニョバ達は小さくも鋭い羽を羽ばたき、ピー!ピー!とけたたましく鳴く。
「みんなケガはないか!?」と叫ぶペテルにエマは「ちょっと膝を擦りむいた……」と答える。
そうしているうちに、ミニョバたちは再びペテルたちめがけて飛んできた。
そこで、ペテルは右手をミニョバたちに向け、初級氷系魔法ブリーナを発動した。
ミニョバたちに向け放たれる小さな氷塊。
それに驚いたミニョバたちはまた旋回をしてパタパタと飛んでいった。
「エマ、じっとしてて」
フィオナはエマに対して初級回復魔法スフルをかけた。
ひざの怪我がたちまちふさがっていき、まるで何もなかったかのようにひざがきれいに戻った。
「ありがとう、フィオナ姫」とエマは感謝を述べた。
「エマったら。ふふ、フィオナでいいよ。もう私たちライバルじゃなくて友達じゃない」と答えた。
エマは内心『最初からペテルのことはちょっと気になるクラスメートでしかなかったんだけど』と思いはしたが、「わかったわ。フィオナ。」とほほ笑んで返した。
その一方で、エゼは腕を組んで「なぁ、同じ初級呪文なら爆裂系のエクラの方が倒せただろ?」とペテルに聞いた。
その言葉にエマはため息をつきつつ、「あんた、山火事を起こすつもり?」とあきれた顔でエゼを見つめた。
ペテルは2人に向けこう説明した。
「山火事もそうなんだけど、あんなかわいいコウモリにエクラは可哀想だよ。
それにミニョバたちからも、そんな殺意はないように感じたんだ。」
フィオナは「まぁ、なんて私のペテルは優しいのかしら!」と手を組んで微笑む。
「そ、そうか。とりあえずミニョバ達は廃寺院に飛んでったな!行こう!」とエゼは歩き始める。
ジェラは「エゼがリーダー気取りなのは変な気がする……」とボヤく。
「べ、別にいいだろ!さぁ行こうぜ」
ペテルはジェラをまぁまぁとなだめ、一行は山頂付近にある廃寺院を目指した。




