ミニョバが集う森
王立学院小学校の周りの住人は最近、魔獣ミニョバが最近よく飛び回るようになったと話し合うようになった。
ミニョバとは『可愛らしいコウモリ』という意味であり、体長は大きくても15cmほど。普通のコウモリとたいしてみわけもつかず、住民は気にもしていなかった。
だが最近、通常のミニョバの2倍、つまり体長およそ30cmはあろうかという個体が群れのボスになったらしい。
それ以降、農作物が荒らされる被害が続出していた。
周囲の住民たちはミニョバのボス個体を『ミニョリオン』と呼び警戒をしていた。
―4年A組帰りの会にて―
サビーナ先生は帰りの会で子どもたちに、このように警告してお開きとなった。
「最近ミニョバが暴れていると聞きます。巣がある裏山には入らないでくださいね」
だが、その言葉がとある少年の冒険心に火をつけてしまった。
サビーナ先生が教室を出ていくのを見届けた瞬間、エゼはペテルとジェラに話しかけた。
「ペテル!ジェラ!今すぐ裏山行こうぜ!」
ペテルとジェラは「は?」と思わず呆気にとられた。
そして次の瞬間、
スパン!
という音ともにエゼの頭が揺れた。
「いってーな!」とともに後ろを振り向いた。
エゼの頭をはたいたのはエマであった。
「あんたバカ?先生がさっき行っちゃだめって言ったばかりでしょう?」
「でもようペテル、裏山近辺の人たち、せっかく育てたトマトとか喰われて迷惑してんだぜ。王子様としたら黙ってられないよなぁ?」
ペテルは苦々しく「お前、痛いとこつくなぁ」とつぶやく。
その時、フィオナがカバンを背負ってやって来た。
「ペテル!帰るわよ!」
フィオナはグランドバレー城近くのライム王国領事館に住んでおり、留学してからというもの、毎日半ば強制的に共に帰っていた。
フィオナ曰く、許嫁同士の義務らしい。
「すまん。フィオナ。ペテルは今から俺たちとミニョバ退治に行くんだ。」と、エゼがフィオナに説明する。
するとフィオナはムッとした顔で怒ってきた。
「何よそれ!『私の』ペテルを危険にさらすつもり!?」というと、エマも一部の言葉が引っかかりつつも、おおむね同意する。
「そうそう、危ないからだめ……」
「なら私ついていかないとね!」
エマとペテルはフィオナの発言に耳を疑った。
「私、ライムでなんて言われているか知ってる?お姉様の『雷撃姫』に対して、私は『治癒姫』と言われててぇ、ヒール呪文が得意なの!」
フィオナはペテルの腕をつかみ「冒険する未来の夫を監視……いや、ヒールするのは許嫁としての務め!さぁ、行くわよ!」
ペテルは「わ、分かったよ!警護の人を振り切りつつ行こう」
エマは「あんたたちのことが心配だから私もついていくわ」と頭を抱えると、ジェラも「同じく……」と同行することにした。
かくして、グランドバレーの王子警護とライムの姫警護のSPの目を盗んで、5人は学校から歩いて15分ほどの裏山の入り口に到着した。
パタパタパタ……
辺り一面にミニョバの羽音がけたたましく占拠していた。
まるでこれ以上山に入るな、と言わんばかりに。




