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留学生フィオナ姫

5月中旬のとある月曜日

グランドバレー王立学院小学校4年A組の子どもたちはある話題で持ちきりであった。


「ペテルの許嫁が自分たちのクラスに留学してくるんだって!」


エゼはニヤニヤしながら、いつもより早めに登校したペテルに話しかけた。

「なぁペテル、彼女が来るなんて羨ましいなぁ」

男子小学生らしくからかってくる。

「ち、ちが!彼女とか、そんなんじゃないし……!」

ペテルは顔を慌ててエゼに反論しようとすると、後ろからコホンコホンとわざとらしい咳が聞こえた。


振り向くと伯爵家の次男・ジェラがエゼに「違うよ、エゼ。このクラスに来るフィオナ姫は彼女じゃない。彼女よりもっと上の将来が約束された許嫁だ。殿下の将来の結婚相手だ。」と言い切った。


「ジェラ、事実だけどそんなに詳しく言わなくても……」ペテルの顔は真っ赤になり沸騰寸前だ。


そうすると女子のサトが話に割り込んできた。

「あぁ、素敵ね。将来結ばれることになる王子様とお姫様が私たちと同じクラスだなんて!まるで少女漫画だわ」

もはやペテルはクラス中の話題の中心であり、女子も男子もペテルの話題以外で会話をしているものなど皆無である。


そこにガラッと教室の扉が開き、担任のサビーナ先生が出席簿を持って入ってきた。


「はーい。静かに静かに!みんな席に座って!」


サビーナ先生の掛け声で自分たちの席に着席する子どもたち。

「みんなも新聞とかで知ってると思うけど、私たちのクラスに新しい留学生がやってきました。入ってきて。」

そうすると一人の少女が入ってきた。

「皆さん、始めまして。フィオナ・フォン・ライムです。これからはフィオナとお呼びください」


女子たちから歓声の声が上がった。

「すごいお姫様!」「おしとやかぁ!」「かわいい!」

男子の一部からは「高嶺の花だ……」という声が漏れた。


フィオナは続ける。

「ところで……学級委員のエマさんはどちらにいらっしゃいますか?」

ペテルは3週間前の夕食会を思い出し、青ざめる。

何も知らないエマは手を挙げて、「私ですけど?」と名乗り出た。

「ちょ、ちょっとまって、フィオナ…」とペテルはフィオナに声をかけるがそんなペテルをフィオナは無視し、フィオナはエマの席の前につくなり、ニッコリと微笑んでこのように言った。


「私はペテルの許嫁で、『せいさい』なの。私とペテルは赤い糸で結ばれているの。

将来の結婚が正式に約束されているの。

これは私とペテルの……、

えっと、なんだっけ?『こっか』?ちがうわ。

あ!そう、そう!

『こくみん』への義務なの!

だからね、辛いだろうけどあきらめて他の男子を好きになってね」


エマは突然このように言われ「え、え、ええ?私、別に、ペテルのことクラスメートとしか……」と慌てるが、すでにフィオナは勝ち誇った顔をしている。

フィオナは片目をつぶり笑顔でウィンクしてエマの手を取った。

「エマちゃん、ごめんね!私分かるわ。今の貴女のつらい気持ち。でもこればかりは許されない恋なの!」


(私、よく分からないけど、何かに負けたの?フィオナに?)

エマの頭の中は『?』が駆け巡った。


サビーナ先生はあっけにとられていたが、はっと正気を取り戻して「フィオナさん、あなたの席はマルコスくんの隣です。席について。マルコスくん、案内してあげて」と声をかけた。


フィオナは勝者の足取りで席に向かった。


頭を抱えるペテルの席に、隣の席の子からメモが回ってきた。

差出人はサトだ。

「おもしろくなってきたわね!」とだけ書かれている。

サトの席を見ると、サトは口を手のひらで覆いながら周りの席の女子と笑っていた。


(勘弁してくれよ)

ペテル王子の悩みは深い。

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