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雷撃姫

アルコールとタバコの匂いが漂ってくる気がする歓楽街に到着したジュリアは、愛馬ステルスインパクトを、ソラが連絡してきたクラブの近くにつなぎとめた。


魔法報のマップ機能によれば、このレンガ造りの平屋建ての建物が『クラブ・マリア』だ。


けたたましい音楽が漏れ聞こえる木製の扉の前でジュリアはひと息、深呼吸をした。

―ソラを助ける―

その一身で扉を開けた。


その瞬間ジュリアを出迎えたのは、重低音の耳をつんざくような音楽と色とりどりの光線であった。

一瞬呆気にとられたジュリアであったが、ソラを探そうと足を進めた瞬間、大男に声をかけられた。

「お嬢ちゃん、見たところ中学生?それとも高校生?だよね?ここはお子様が来ていい場所じゃないんだ。帰んな」

「あんた誰よ?」

「俺?俺はこの店のボーイだよ。さ、帰った帰った」

ジュリアは左手人差し指をボーイに向けた。

その人差し指からは、バリバリと青白い静電気が弾けている。

「私の友達の女子中学生を連れこんだ21歳のルカーという男がいるはずよ。どこにいるの?言わないと、軽く感電するわよ?」

左手人さし指の静電気は丸く収縮していき、5cmほどの球体になった。


―雷撃砲―

ジュリアは魔法が得意ではない代わりに、物心がついたときから静電気を巧みに操る他人にはできない特殊能力を持っていた。

それは左手人さし指に静電気を『チャージ』することにより対象を攻撃する雷撃砲である。


周りの客がざわつき始めた。

若い女性客が「あの子、『雷撃姫』じゃない?」と言うと隣の男性客が「本当だ!ジュリア姫だ」と話す。

ボーイは思わず、「お、お姫様?」とうろたえた。

身分がバレたジュリアだが、そんなことは構わず左手人差し指を近くの酒瓶に向け、青白い球体を放った。

瓶は大きな音を立て粉々に砕け散った。


ジュリアは人差し指に再び静電気をチャージした。

「どこ?案内しなさい。次は当てるわよ?」

「お、奥のVIPルームです」

周りの大人達の視線を一身に浴びる中、ボーイとジュリアは店の奥の部屋へ移動する。

ボーイは「失礼します」といい、白いペンキで塗られた木製のドアを開けた。


そこには、そこら中に酒瓶、割れた鏡、窓が散らばっていた。

ソファーには若い男が座っており、床にソラが泣きながら座っていた。


「ソラ!」ジュリアはVIPルームに駆け込み、ソラを抱き起こした。

よく見ると、ソラの左頬が赤く腫れ上がっている。

ソラの息も少しアルコールの匂いがした。


ルカーは泥酔した状態で「だーれだぁ?お前。俺のソラの何なんだぁ?俺たちは愛し合っているんだぁ。へへへ……」と下卑た顔で声をかけてきた。

「『俺のソラ』?『愛し合っている』?

その言葉、今すぐ取り消せぇぇ!」

ジュリアは静電気を左手人差し指に思いきりチャージした。

バリバリと凄まじい火花が人差し指で弾け、球体に収縮されていく。

雷撃砲をルカーへ放とうとした瞬間、ソラが

「殺しちゃだめぇ!」

とジュリアの左腕を掴み上げ、天井に向けさせた。


ドゴン!


雷撃砲はすさまじい音を立てながら天井を突き破り屋根を破壊し、建物自体を震わせながら、夜空へ飛んでいった。


「この……侯爵家の長男であるルカー様に歯向かうかぁ!」と男は酒瓶を握り振り下ろしてきた。


(雷撃砲のチャージが間に合わない!)


思わずジュリアは目を閉じようとしたその瞬間、ある女性がルカーの腕をつかみ、そのまま廊下に向け放り投げた。


「キャシー!」

ジュリアは王宮特別警察官であるキャシーの名を叫んだ。

「間一髪でした」

とキャシーはジュリアに一言声をかけた。

そしてルカーに向けキャシーは言い放った。

「未成年立ち入り禁止の違法な場所へ連れ出した誘拐疑惑、未成年への暴行疑惑、未成年への飲酒強要疑惑、王族への暴行未遂および不敬罪、この5つの罪に対し21時17分、現行犯逮捕する。」


ルカーは一気に酔いが覚めた。

「お、王族!?こ、このガキが??

知らなかったんです!だから不敬罪なんてあり得ない!」

キャシーは軽蔑の眼差しをルカーに向けた。

「『知らなかった』?

『ガキ』?

『あり得ない』?

は!笑わせてくれるわね。

侯爵家の長男坊のくせに何かと不勉強にもほどがあるわ。

言い訳は署でじっくりと聞くから後にしなさい」


ルカーは必死に弁明をしようとするが、余計に立場を悪化させるのみである。

その様子をソラは黙って見ていた。


***

ジュリアとソラは複数の警察官に囲まれるように店を出た。

店の外でつながれていたステルスインパクトは心配そうに鼻先をジュリアの体に押しつけた。

店から出てきたキャシーはジュリアに告げた。

「ソラさんは児童保護施設で一晩預かることになりました。

ジュリア様は馬車にお乗りになり、城へお帰りください。

女王陛下はお怒りです。」

ソラは警察官に導かれるまま、ジュリア「ごめんね」と声をかけ、別の馬車に乗り込んだ。


ジュリアはソラが乗った馬車が離れていくのを見届け、城へ戻った。

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