ペテルの赤面
ドグを捕縛した翌日夕方、小学校から帰ってきたペテルは母からその旨を聞いた。
「母上!僕も戦えたのに!」
不満顔を隠さないペテルに対して、フレイヤは毅然と、だが優しく諭す。
「もうあの時10時を回っていたわ。子どもは寝る時間。
それに、お母さんの実力知ってるでしょ?」
その言葉にペテルはそれ以上の反論ができず、押し黙った。
そこに、高等魔法官が現れた。
「女王陛下、マーブル教授のご指導によりドグが使っていた『夢見の杖』に仕込まれていた魔法鍵の解析が終わり、鍵を入れ替えました。ペテル殿下が破壊されたステッキ部分も部品を入れ替え修復が完了しています。」
フレイヤは夢見の杖を受け取った。
「母上、それはドグが使っていた夢見の杖!!」
「そうよ。国としてドグから没収したの。
ドグはこれを使って、あなたのお友達たちの夢を奪っていた。でも本当の使い方は、もっと他にあるみたい。
ペテル、今度からはあなたが使いなさい」
フレイヤは高等魔法官に指示し、夢見の杖をペテルのみが扱えるように、夢見の杖の魔法鍵とペテルの魔法陣を組み合わせた。
これにより、夢見の杖はペテルが所有者となった。
ペテルは夢見の杖を眺めた。
気を夢見の杖に流し込み、『夢見の杖と対話』をした。
「母上、これの本当の使い方は、『夢の真実を明かす』ことにあるみたい。
それに、マジックウェポンとしてもクプラウンダーより強力だよ」
フレイヤ思わず立ち上がり、愛息であるペテルを力いっぱい抱きしめた。
「すごいわ!さすが私とアイスの子どもね!」
「痛いよ、母上」
痛いと言いつつ抱きしめられたペテルはまんざらでもない顔をした。
そうしていると、後ろから「コホン」と、咳をする音が聞こえた。
ジロンだ。
ペテルは大叔父の突然の登場に、気まずそうににフレイヤから離れた。
「フレイヤ、ドグが所属していた山賊団の件だが、今良いかね?」
「お願いします。叔父上。」
ジロンは昨夜行われた山賊団討伐の顛末をフレイヤに伝えた。
グランドバレー王国軍の精鋭部隊は山賊団のアジトである山荘を急襲し、半分ほどをグランドバレー王国内で捕縛。
しかし、当初懸念されていた通り山賊団の首領を含む残りの半分は山沿いにある国境を越えてライム王国側の関所を強引に突破しようとした。
しかし、あらかじめグランドバレーから情報連携されていたライム側は国軍である国境警備兵の数を普段の3倍にしていた結果、あっさりと山賊団を全員捕縛したとのことであった。
「ライム側に借りを作ってしまいましたね」とフレイヤはジロンに言ったが、ジロンは
「向こう側でも山賊団は指名手配されていたくらいだから、気にすることもないだろう。それよりも……」と言い、ジロンは彼の秘書である女性にちらりと目線を合した。
目を合わせられた40代くらいの女性秘書は鞄から一通の手紙を取り出した。
「先ほど、ライムのカタリーナ女王の名義でフレイヤ宛に親書が届いた」
フレイヤは親書を秘書から受け取った。
手紙にはライム王家の封蝋が施されていた。
フレイヤは封筒を開け、手紙を読んだ。
「まぁ、要するに、ペテルを連れてライムに来い、と書いているわね。理由は大したことじゃないわ。たまにはフィオナにペテルの顔を見せたいそうよ。許嫁として。」
ペテルは「フィオナ」という言葉を聞いて顔を真っ赤にした。
「あら、将来のお嫁さんのフィオナのことを思ってるのね。顔が真っ赤よ」とニヤつきながらペテルを少しからかうフレイヤ。
大叔父のジロンも「青春だなぁ」とペテルに対して追い打ちをかける。
ペテルは「学校の宿題しないと!」との言葉を残し、急いで私室へ駆け込んだ。
「逃げたわね」「逃げたな」
フレイヤとジロンは笑いながら、ペテルの心の成長を実感した。




