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ネズミ捕り

午後9時・グランドバレー城


ラスク大通りと城の間には水壕が張り巡らせており、大通りから城へ渡るには橋を渡るしかない。

もちろん警備上の理由から、夜間は警備兵が立ち、たとえ城の職員であっても事前の申し出がない限りは決して入城はできない。

しかし、なぜか今夜に限っては警備兵がいない。

――罠を仕掛けたネズミ捕りのように――


ペテルは城の異変を感じていた。

城の防御魔法がわずかに『攻略が容易になっている』ことに気がついたのだ。

高等魔法官に聞いてみたが、「殿下、考えすぎです」と一蹴された。

ペテルはフレイヤに向けても同様の疑問を聞いてみたが、そう?とまたまた一蹴された。

しまいには

「もう9時を回ったわ。宿題終わってるの?今朝は侍女が用意してくれたハンカチを置いたまま小学校に行ったそうね。明日の準備は万全なの?それができてるなら、早く歯を磨いて寝なさい。

それと、お休みのキスは?」

と逆にフレイヤから問い詰められてしまった。


ペテルは言葉を濁しながら

「うう。宿題は終わったし、歯はもう磨いたし、ハンカチも……忘れないよ!……たぶん」とフレイヤの頰にキスをし、逃げるように母の部屋から自分の部屋へ駆け込んだ。


ペテルはベッドに潜り込み、「まぁ、いいか」と昼間のドグとの戦いも忘れてすぐに眠った。


1時間後――


城に一匹の小柄なオークの姿が現れた。ドグである。

革製の鎧にユバの盾という呪文を跳ね返す盾を装備していた。

ドグはちらりと城の魔法結界を観察した。

グランドバレー城という、大国の女王が住む城にしては魔法結界は大したことはないな、と考えた。

いわば、目が粗い網のような防御結界で、大妖怪は通さないが、ドグのようなあまり強くない妖怪であれば入れる……そのように感じた。

「強者の余裕かのぅ。気に入らんわい」と言い、罠とも考えず軽々と侵入した。


「……ネズミが引っかかりました」

グランドバレー城の軍議室にて、高等魔法官はフレイヤとジロンへ報告した。


ジロンは作戦どおり、夢見の杖を保管した蔵へ誘導するよう指示を出した。

フレイヤは白銀の鎧を身にまとう。

「ジロン叔父上、ライム王国への連携は大丈夫でしょうか?」

「うむ。すでに軍の精鋭部隊がレセルの谷に向かっておる。」

ジロンによると、ライム王国国内でも山賊連中を指名手配しているという。

さらに、逃走に備え、ライム側の関所にライム国軍が配備されたとのことだった。


フレイヤはブロンドの髪の毛をヘアゴムで束ねた。

「では叔父上、行きましょう。ドグとの19年越しの第2ラウンドです」

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